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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
305/331

305 刻と時間



関ケ原合戦の初戦となる福島正則と柴田勝家との衝突が始まる中、洋一と玲子に論争という戦いの火蓋が開かれていた、那須烏山城の散策から帰宅した二人、夕食時に何気ない会話から二人は鳥肌を立てて緊張した面持ちで興奮気味に話し込んでいた。


その話の内容は烏山城でランチを広げ休む中、広場で草刈りを終えた年老いた男性が美味そうに煙草を吸っていた様子を眺めていた玲子が、美味そうに煙草を吸う男性の口元にある煙草に玲子の目が止まりじっと煙草が灰に変化して行く様子に見入っていた事の感想とも言うべきある独り言を呟き洋一に確認を求めた事で興奮した話へと発展していたのである。



「えっ!! 玲子さん本当にそんな事を・・考えたの?」



「考えたと言うよりその煙草の煙というか火が徐々に移動して煙草が短くなる所を見てて直感で感じた事を今初めて洋一さんにどう思うかって聞いたのよ! だからその直感が正しい訳でもないけどどうしても気になったの?」



「もう少し説明して、どうしてその煙草の火が移動して短くなった事でそう思ったのか?」



「前から言っている様に私達の世界と那須資晴達の世界とは460年の開きがあるよね!!! この事は今更説明はいらないよね?」



「そんな事は僕が玲子さんに会う最初の明和町の町役場で会った最初の日にお父さんのお店で説明した時からだから最初のもう20年以上も前の原点の話だし今更だよね!!」



「そうその今更よ!! その今更と言う原点の捉え方に問題があったのではないかと煙草の火を見て直感したのよ!!」



「だからその直感を説明して欲しいの、何がどう直感してどう思ったのかを聞きたい訳! 460年の開きとその直感は関係あるのか? を詳しく聞きたいの、ゆっくりでいいから説明して?」



「直感で感じた事だから説明は難しいんだけど、私達の感覚はどうしても460年という長ーい年月があるって錯覚しているのかなって? 一口に460年も間があるって考えれば凄く長い年月が洋一さんと那須資晴の間にはあるという認識が前提になるでしょ!! でもそれは私達の常識で年月を、いや時間を計っているからそう見えるだけなのかもって考えたの、煙草一本を吸い尽くす時間は数分だよね、その数分で消える煙草を見ていてひょっとしたらあれが460年という長さだったら、460年も数分程度の感覚で捉えてもいいのかもって!」



「・・・・うん、それで?」



「それと少しというか私の考え方に無理があったかも知れないと、どうしてもこれまでは両者が繋がった理由を考えて、どうして今成洋一と那須資晴なのか、他の人では駄目だったのか等々考えていたの、そんな時に今成家の先祖が北条家に仕えていたと言う証拠が見つかったよね!! 今回の煙草で直感で感じた事は460年と言う時は一瞬の開きでしかない事、それと460年前の那須資晴の世界と現代の世界、そしてそれ以外にも私達の知る史実の世界という三つの世界があるという事を洞察しないと繋がった理由の解明が出来ないという直感なのよ!!」



「460年という長さが実はあっという間の時間で、三つの世界を考えて繋がった理由を検討しないと解明出来ないって事?」



「そんな感じだよ、今までは私達の感覚で460年という時の長さが間にはあって、その大きな時間と言う壁が邪魔をしていたのかなっていう感じ、那須資晴と今成洋一が繋がったと言う事は私達の歴史では460年という間の年月があるけど、繋がっている両者には460年という時間の距離は存在していない、簡単に説明するとこの十円玉の表と裏みたいな関係で十円玉厚みの部分が460年って感じ!」



「えっ、そんなに厚みが無い時間なの? ていうか同時に進行している時間?」



「うん、きっと同時に平行しているんだよ、私達には那須資晴の住んでいる世界が見えないだけ、資晴も私達の世界を見えないけど、以前一度だけ資晴が暗殺で殺されそうになった時に洋一さんと入れ替わった時があったよね、460年の長い時間を飛び越えて入れ替わったと思っていたけど、やはりそれだと無理があるかなって、那須資晴の現在と今成洋一の現在が同時に動いていれば460年と言う概念も必要ないし深層意識で両者は繋がっている訳だからあの入れ替わりもありえる事だったのではと、そう考えれば理解出来るでしょう!! 違うかな!!」



「460年という隔たりを無視すれば急に身近になるね、でもちょっと怖いな、でも知っている歴史はまだ変化していないよね? それはどうなって行くんだろう?」



「それがここ十年余りで不思議な事が、ひょっとしたら関係あるかもって事が時々ニュースになっているの!! 聞き流せば何でもない事なんだけど、各都道府県の人口調査ってあるよね、所がその人口調査と実際の人口数が合致していない事があるようなの、子供が生まれたにも関わらず出生届出をしていないケ―スが予想より多いとか、さらに家を飛び出してから住所変更せずに数十年も経ている為に住民登録していない人が多数見つかっている事と似た様な状態でホームレスとなって彷徨っている人達が行政側で把握している数より多いであろうって、他にも家に引きこもっている自宅警備員って呼ばれている人達が60代に達しており家の事情を近隣世間に知られたく無くて家には居ないという不在者扱いになっている人も多数いるようなの!!」



「それって公表されている人口より数が多いって事?」



「そういう事だよ、色々と学者によって数字はバラバラだけど数十万人単位で実際の方が多いであろうと、正確な数字は社会問題化されていないから行政側も動いていないみたいだけど、その人口増しているであろう事と那須資晴の出現によって無用な戦が減った事と関係していても不思議では無い感じがしているんだよね!!」



「それとちょっと話は戻るけど、460年という年単位の考え方なんだけどその昔の中国では一日が100刻という単位の時があったんだよ、戦国時代の日本は一日が12刻という大きい単位で1刻が2時間、現代では一日24時間で一時間を60分、さらに1分を60秒という単位で時間を計っているけどこれも国によって現代でもこの時間を採用していない国があるという事で時間という考え方も色々なんだよ、どうしても洋一さんも私も現代の時間で物事を見てしまうけど、この時間という物差しを一旦忘れた方が460年と繋がった事を理解する上で必要かも知れないの!!」



「そうなると・・・仏教の教えに近い話がありますね、時間を超越した悟りの世界と似ているかも知れませんね、む・・・・やはりかなり似ているかもしれません」



「私もその話は知っているけど、あの煙草を美味しそうに吸っていた人を見て初めて似ているかもって実に不思議な話だよね!」



釈迦は29才で王子の身分を捨て出家を行い、6年間苦行の果てに35才で悟りを得たとされる、その後45年間に渡り悟りの教えを広める為に諸国を布教活動するが晩年不思議な説法を高弟達に真実の話として説法を行う、法華経と言う法門を説法する中で釈迦は無量義経説法品第 2の文で『四十余年未顕真実 (しじゅうよねんみけんしんじつ)、四十余年には未だ真実を顕さず』と説法を始める、これまで40年あまり教えていた法華経以前の教えは、方便・仮の教えであり、本当の真実を高弟達に教えていなかった、この法華経を教える為に40年あまりの時間を掛けて方便を用いて仮の教えを説法して来たと言う事で高弟達は衝撃を受ける。


そして現世では釈迦は29才で出家し35才で悟りを得た事を皆も知っているが、輪廻転生という生命は永遠でありその時々の行いという因果によって現在の結果が現れるという因果の理法と生命は久遠であるという説法を行い、釈迦自身が悟りを得る事が出来た原因は遥か昔より自分が修行して来た事を明かにし、遠い過去と未来は繋がっているという話を高弟達に教えている。


要は6年間の苦行で悟りを得たのでは無くて遥か遠い過去より何世代にも渡り修行をして来た結果悟りを得たと言う説法を行う。



「そうですね、仏教の説く輪廻転生と言う教えは根幹の部分でもありますからね、ただ現代の日本ではほぼ死語だと思いますが、日本以外の仏教の国では輪廻と言う教えは常識として広まっているようですね」



「日本の仏教は戦国時代でも解るように狂っている時代だし酒池肉林の見本みたいな存在が仏教界だから徐々に廃れていったと、これも因果だよね、話は戻るけどその久遠という時間の流れを取り入れて考えた場合、洋一さんと那須資晴の世界は同時に流れていて460年と言う間の空間は無いと考えた方がすっきりするは、後は何故両者は繋がったのか、どんな理由で洋一さんと那須資晴は違う世界の人間が繋がったのかと言う最大のテーマが残っているのよね!」



「じゃー玲子さんは460年と言う年月の開きは無かったという結論なんですか?」



「一言で言えばそうだけど、前にもSF映画の時に話した時空を超えて他の星に行く映画を見た時の話覚えてる? あの時は重力と言う力がワープ航法に関係していて時間を停める力を持っているという話をしたと思うけど、時空って物理学の用語なんだよね、時間と空間という概念、時空は物質の存在によって歪み、この歪みが重力の正体であることが説明されたと、現代物理学ではそう標準として受け入れられているんだよね、だからまだ概念の世界かも知れないけど時空は存在するの、そして物理学では光を超える速度もあるというしっかりした概念があるの、光の速度、電気の速度、重力が伝わる速度、この三つは同じ速度であると言われているの、但し何かが加わる又は関係する事でその速度は速くなるという概念の定説が存在するの!」



「物理の世界は法則の証明と実験と実証が求められるけど最初に理論が成立して概念が定まって次の段階に移行する世界だけど時空と言う概念が既にある以上、洋一さんと資晴が繋がった事は不思議な話では無いかも知れないの!!」



「・・・今成家の生い立ちと自分が弓道を中学生の時から行っている事も関係あるのかな?」



「私の中では460年と言う時間軸がすっきりした事で、今成家、那須家、他に見落としている者の存在があるようで、なんかもう少しで解明出来そうなんだよね!!」



「自分の中では那須家が滅亡しない事が最大の目標なんですが、玲子さんの中ではさらに先の謎解きに入っているんですね、自分の中では二人が繋がった理由は解らなくても大丈夫なんですけど!」



「何言っているの? 私も那須家に、いや洋一さんに関わった事で家庭まで築いてしまったのよ、最後まですっきり出来る様に責任取ってよ!! やり直せないんだから、洋一さんがあの時役場に来なければ違った人生があったかも知れないのに、あれからずっーと、ずーっと那須家に関わっているのよ、責任取ってよ!! 、解決出来ないでは済まされない話なんだよ!!!」



「・・・・解決と言われても・・・」



この夜は深夜まで永遠と続く迷路の世界に!



関ケ原合戦の章から少し変化のある章に、何処かで説明する必要だと思ったので。

次章「関ケ原・・・5」になります。

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