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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
278/331

278 参内




小田原成敗での最中に帝に仕える鞍馬より呼ばれた那須に仕える鞍馬と京での会談が行われ那須資晴の考えが伝えられた、その内容は今後の日ノ本の行く末と朝廷の未来図まで含まれており容易ならざぬ一大事との事で暫し帰還を止め置かれ予定より遅くに資晴のもとに戻る事に。




── 参内 ──




「如何致しますか御屋形様?」



「戻りが遅いのでもしやと思うていたが、戦の最中に儂に来て欲しいとは困った事であるな!」



「その事は某からもお伝え致しましたが堺の油屋まで来て欲しいと、その後は朝廷より使者をもって迎えに行くとの事でありました!」



「それでは益々捕縛されに行くようなものでは無いか、これだから朝廷は世に疎いのじゃ、油屋までは良いとしてもその先が危うい・・・確か山科殿の息子であった言経殿が五摂家の次に位のある正二位、権中納言になっておったな、お亡くなりになられた山科言継とは何かと深い縁があった、儂は猶子でもある、線香をたむける事が出来ておらぬ、天狗殿よ参内するにはちと工夫が必要である儂だと露見すれば戦での人質となってしまう、言経殿に一役演じて頂こう!」



那須の鞍馬より語られた内容が今後の日ノ本と朝廷に取って由々しき事態であると判断した正親町上皇は直接那須資晴の知る未来の歴史を孫である後陽成天皇にも聞かせねばならぬと判断した、戦での和議仲裁の匙加減にも影響する事になり舵取りを間違えれば取り返しがつかぬとの判断であった、正親町上皇は戦国期での最長な期間天皇として在任し困窮に喘ぎながら世の安寧と戦の数々をこれまでに仲裁してきた経験豊富な上皇であった、孫の後陽成天皇は天皇に即位してより2年であり父親の急死により17才という若さで急遽天皇に即位したばかりであった、祖父として後見人として温かく包まねば成らぬ天皇である。




「これはご苦労様であります、山科様これ程の荷駄隊を率いてどちらに向かわれます?」



「帝の命により堺に買い付けじゃ! 関白殿に送る慰労の品々を某に手配する様にとの手配りじゃ! 関白殿も幸せ者である流石は天下人であるな!!」



「なんとそのような帝からの慰労の品を求めに参られますか、ささお通り下され」



「うむ帰りは帝に届ける品も通るゆえ荷改めなど不敬は断じて成らぬぞ、関白殿に知れたらそちの首が飛ぶことになる、各関所には通達するよう頼みましたよ!!」



「はっはー、某より至急通達致します、山科様良しなに願います」



那須資晴を安全に宮中に向かい入れるには敢えて堂々と入れる策の方が安全と考え公家の山科言経が一役買う事になった、空の荷駄隊を引き連れて堺で酒などを仕入れ戦の慰労として関白に届ける一方で一部の品を宮中に届けその荷駄隊の中に那須資晴を紛れさせ安全に参内させる方法を取った、帝に仕える鞍馬と京周辺に諜報役として忍び込んでいる和田衆に道々を安全を確認させ万全の体制で向かい入れた。



「どうやら無事に事が運びました、此度は戦の最中よくぞお越し下さいました、某は何かと父より那須様の事は伝え聞いておりますが帝もさぞ驚かれましょう、帰りの道中も某がお供致します」



「言経殿何かと世話になる言継様とは猶子の関係であります、いわば父と子であります、言経殿とは義兄弟であります、二人がこの様に駒を並べている姿をご覧になりましたらきっと言継様も喜ばれておりましょう、これより参内して帝に安寧なる日ノ本の姿について伝えねばなりませぬがその事で帝も苦しませてしまう事になります、それが残念であります!!」



「父上も朝廷を支える日々であったとそれはそれは苦しく孤独であったと申しておりました、その中で一輪の見事なる大輪と咲く那須という華と出会ったと、それが那須様であります、帝も那須様と出会う事で希望を抱く事が出来ましょう、義兄上であればいつものように薫風をそよがせるでありましょう」



「そのように言経殿から言われてしまいますと愚痴はこぼせなくなりました、にこやかに帝とお会い致しましょう!!」



那須資晴が語る内容が事が事だけに上皇と帝それに帝に仕える鞍馬と那須家と深い関係にある山科言経も参加しての日ノ本の未来像が語られる事になった、資晴の伴として言葉上手な明智十兵衛が控えていた。


内裏に通された那須資晴は上皇の居宅となっている館に通された、宮中での参内と言う仰々しい形式を取れば記録に残され資晴が来た事が露見する恐れがあった、宮中と言えども間者を警戒しての措置であった。



「ここは上皇様の私邸になります、安心して話せます、間もなく上皇様と帝が参ります」



資晴が控える部屋で暫く待っていると静かに二人が現れた一人は面識のある上皇と年若い帝と思われる青年が、上皇は唇に手をあて静かに静かにという示唆で入室した、拝礼して迎えていると上皇より忍びでの談合じゃ、那須殿礼儀は略して良いと告げられる。



「良くぞ難しい最中に来て頂いた、横にいるのが儂の孫であり今天皇になる後陽成である何かとよろしく面倒を見てあげて頂きたい」



「はっはー上皇様、帝様! 那須資晴であります、よろしく願い奉ります」



暫し小田原成敗の模様について歓談の後に上皇より本題について話さる事に。



「那須殿よ! 我らの鞍馬より聞き懸念しておる、この先に訪れる日ノ本の未来について是非に詳しく知りたい、帝には那須殿が未来の時の者と繋がっている事を伝えておる帝を支えておる関白の事は気にせずに話して欲しい、帝も覚悟を決めてこの場に参じておる!」



「判り申した、では某と繋がっている者より知り得た歴史についてお伝えいたします、先ずその者は460年先の未来の日ノ本に住む今成洋一なる人物であります、又その洋一殿には正室の玲子殿というお方様がおります、そのお方様であります玲子殿が軍略家であり今日の那須家及び北条家、小田家の三家に戦で負けぬ軍略を与えて下さり今成ご夫婦殿のお陰で三家は今日の繁栄を迎えております!」



「先ずこの戦でありますが北条家は今後優位に立ちます、関白軍は劣勢となり危機的な状況を迎える事になりましょう、これも軍師玲子殿より知恵を授かり軍略を描き行っております、その危機的な状況となりました時に帝より和議仲介の使者を遣わすのがよろしいかと思われます、関白は危機的な状況ゆえ和議せざるしかありませぬ!」



「那須殿は関白を降伏させぬのであるか? 関白が危機的な状況となれば戦に勝つ事が出来るのでは?」



「勝つ事は出来ます、勝てばその先には又も戦の世に戻ってしまう為に今は関白とは和議致します、我ら三家はあくまでも東国に留まり時が訪れるのを待ちます」



「その時とは何でありましょうか?」



「秀吉は関白の地位を利用し日ノ本から外の国に牙を向けまする、一つは琉球王国を属国と致し、次に朝鮮へ侵略を開始致します、我らはその動きを封じます! 封じらねばこの日ノ本に1000年に渡る呪縛の如く恨みを買う事になります!!」



「鞍馬より少し聞いていたが本当にそのような愚かな戦を行うと言うのか? 何故そのような愚かな戦を関白は致すのであるか?」



「今成洋一殿から伝え聞いた話では関白は小田原での戦の後に朝廷の力及ばずの権力者となります、逆らう者は切り殺され、力ある大名とて逆らえずに日ノ本の次に外の国に牙を向けます、何故なら関白は亡き織田信長殿が夢で語られた朝鮮、明国、天竺までの大版図という夢物語に憑りつかれております、それ故に朝鮮に攻め入ります」



「織田殿が亡くなった夢を実現したいと言うのか?」



「そうではありませぬ、主家であった織田家を乗っ取りした秀吉は織田信長殿が出来なかった事をする事で豊臣秀吉という己の方が強き覇者であったと天下に示すために自己の権威を示すために行うのです」



「なな・・なんと愚かな・・・朝廷は・・帝はその時に何をしていたのじゃ?」



「帝を初め多くの者が朝鮮への出兵を止めようと致しますがその力全く及ばず20万もの兵が出兵致します、その結果は悲惨の二字しかありませぬ、朝鮮の兵は10万以上が殺され、無辜の民も数十万と言う数得きれぬ程の民も犠牲となります!! しかし勝てずに戦は終わります!」



「・・・その戦を止める手立ては無いと申すのか? 勅命で止まらぬのか?」



「朝廷も帝も関白には逆らえず勅命を発すれば天皇を傀儡となる他の者に譲位される事になります、止める事が出来るのは三家と東国の我らしかおりませぬ、その為に力を蓄え時を待ちまする!」



「仮にその戦を今の内に手を打ち止めても関白の暴走はどうなるのじゃ?」



「その場合でも時間を経れば朝廷の力も弱くなり関白の支配下となりましょう、結局は関白と言う権力欲に支配された物の怪に対処するには東国の力で抑えつけるしかありませぬ」



「那須資晴殿のお考えではこの朝廷はこの先どの様にするのが良いと考えじゃ!!」



「大変無礼で失礼な話となりますが、何故このように100年あまり途方もない年月を日ノ本では戦となったのか、その一番の原因は朝廷にあります、もそっと深く読みますれば朝廷に巣喰う公家の堕落が原因とも言えます、公家の地位を護るために差別化を図り階級を増やし官位を銭で売り荘園まで他者に管理させ放置した結果であります、律令が壊れて行くのを黙って眺めていた帝にも責任があります、時の将軍もそれに拍車をかけ今日に至った結果が関白を止める事も出来ぬ朝廷となります!」



那須資晴に語られ沈黙するしか無い上皇と帝、語られる未来での恐ろしい戦と朝廷の姿に鳥肌を立て聞き入るしかなかった。



「私が求める事は朝廷に巣喰う公家の解体と帝の権威復活であります、460年先の今成洋一殿の時代にも帝が存在しているとの事です、ただし朝廷と言う仕組みは解体されているとの事でした」



「では那須殿が求める仕組みで必要な事はなんであるのか?」



「この国は大きく分けて公家を含めた朝廷と武家が民を支配しております、太子様が創られた律令の世は崩れて無くなりましたが、その法に基ずく律令を復活させます、今川家ではその昔分国法なる律令を唱えておりましたがそれはあくまでも今川家が時の主となる意味での法でありましたがそれを大儀なる形に創ります、私が描いています律令は公家と朝廷及び寺社仏閣への公家諸法度、武家には武家諸法度、民には民諸法度という律令の制度が必要でありましょう!!」



「那須殿! 公家の解体とは・・・どのように考えておるのじゃ、公家を解体したら朝廷は成り立たぬ事になる、どの様な事になるのじゃ?」



「今の公家と言う仕組みは他者から富を搾取した上での贅沢でありその贅沢を守る為に作られた仕組みであります、決して朝廷を守る仕組みとは成っておりませぬ、又上位に位置する者達は地位を守る為に功績があっても上位に就けぬ半家という差別まであります、官位も細分化されており職名と官位及び責任が一体となっておりませぬ、それらの点に手を入れまする、無用な者達は朝廷から去らねばなりませぬ、その為の仕組みと諸法度が必要となります、帝であれ誰であれ決められた法を犯せば罪となります」



「その内容は誰が決めるのじゃ?」



「武家諸法度も民諸法度も帝と我らで創るのです、他者から与えられるのではなく自ら悩み創り上げねば意味がありませぬ!!」



「確かにそうである、何時しか朝廷は世の政を武家に頼り多くの公家は役目を放棄してしまった、それが今の朝廷である!!」



那須資晴より語られる未来像に震える程恐ろしいという逃げたいという感情もあるが若き帝は自分の役目と責任について真剣な眼差しで聞き入っていた、史実と違う未来像が陽炎の如く浮かび観えていた。



那須資晴の考えている未来像が初めて明かされました、史実かけ離れた未来像どうなって行くのでしょうか?

次章「反撃」になります。

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