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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
245/331

245 天下布武の城

PC修理からなんとか復帰しました、お待たせいたしました。

 




 那須資晴が那須野ケ原で大規模な軍事訓練として巻き狩りを行っている中、鞍馬の頭領鞍馬天狗は巻き狩りには参加していない、別の使命にてある者たちと謁見を行っていた。



 場所は京内裏近くのとある神社が京周辺を諜報探索する際に利用されている那須家の忍び宿となっている神社での謁見を行っていた。



 伊賀の上忍三家、服部家、百地家、藤林家の各頭領が先年行われた織田信雄による伊賀攻めの話を事前に聞き、それに備え戦えた事で信雄を追い払い完勝出来た御礼と、事前に話を伝えた際に鞍馬天狗の元に御礼の挨拶をする約束を橋渡しした服部家は百地と藤林に伝えており、この謁見となった。



「恐れ多くも鞍馬天狗様にお会いできる事この上なく高貴なる誉れであります、我ら伊賀の忍びは先年行われました織田家による無謀なる侵略を事前にお知らせ下さり対処する事が出来ました、そのお陰を持ちまして敵を退かせ、伊賀の名を満天下に示す事がこれ全て鞍馬様のご配慮による賜物で在ります、ここに伊賀の忍び一同御礼を申し上げ致します」



「うむ、伊賀の者が救われ我ら鞍馬も安堵している、皆の者よくぞ織田の横暴を食い止め勝利した、此度皆に会うには実に大きい災いが又も伊賀に襲い掛かる事確実となった、それに備えるためにあえてこの表向きは神社である我らが利用している忍び宿に来て頂いた!!」



「・・・・鞍馬様、今のお話ですと又も災いがあるというのですか?」



「よく聞くのだ、本願寺の顕如と織田家が総力をあげ戦っている事は皆もよく承知していると思う、毛利が参戦した事で状況が大きく変わり、毛利の水軍、村上水軍と織田の九鬼水軍にてこの度二度目の大きい海戦が行われ、この二回目の海戦で織田家が完勝した、今は織田の九鬼水軍にて木津川口が塞がれ本願寺に兵糧が運べなくなり籠城のみの抗う戦となった」



「織田家は本願寺を囲み、中にいる者たちを干上がるのを待つだけとした、そこで多くの兵に余裕が出来たのじゃ!! もう判るであろう!! そうじゃ、その多くの兵を伊賀に向ける事になったのだ!!」



「・・・鞍馬様・・多くの兵とは如何程でありましょうか?」



「此度は3万の兵である、前回は8000であった、此度は武将を揃え、1500の伊賀の者たちに3万の兵が襲い掛かる、まさに大きい伊賀の国始まって以来の災いとなる!」



「・・・3・・・万で・・ありますか!!」



「狼狽えるは当然である、先に戦った忍び1500名の者達は戦える忍びであるが年老いて隠居した者、妻や子供を含めれば10万もの多くの犠牲を強いる戦となる、織田の軍勢は年が明け4月に侵攻を始める、その方達に策はあれば、策が浮かべば話を聞くが、無いようであれば儂の指示に従うが良いであろう、如何致す!!」



「この百地、某の命は如何様にも使う事は些事の事でありますが、無辜の民が10万も亡くなる事は認める事は出来ませぬ、残念でありますが鞍馬さまの知恵をお借りするしかありませぬ」



「某、藤林も同じあります、策があるのであれば賜りたく存じます!」



「私、服部も同じであります、是非お助け願いと言う御座います」



「うむ、判った、ではこの伊賀の地を全ての者が一旦離れよ、空となった伊賀の国に織田の軍勢を入れるのじゃ!!」



「えっ、降伏しろとのお話しでありますか?」



「考え方によっては、降伏では無く一旦撤退という賢い選択になる、良いかここからは我らの主である那須資晴様からの策である、空城の偽計については知っておるな、空となった城に敵を誘い込み隙を見て戦う策じゃ、小さき家であっても頭の良い武将が行う偽計じゃ、それを伊賀の国全土にて忍びの家々が伊賀の地を離れるのじゃ、無駄に戦って命を落とすのでなく、その命は後の為に取って置き戦う策じゃ!」



「田植えもせずに、畑も耕さずに国を離れてしまうじゃ、残る村々の者は元々忍びとは関係ない者達だけである、さすれば伊賀を獲った織田家が得る石高は5万石を得る事すら難しいであろう、石高を得る為に多くの侍達が面倒な田畑を耕さなければならぬ、数年後にやっと10万石に戻れば良い方である、何れ那須資晴様の話では織田家に危機が訪れる、その時に伊賀の国を取り戻せば良い、その時の為に命を保たせよと話である!」



「・・・話の意味は解り申しましたが、何故そのように遠く離れた那須様がその事をお判り出来るのでありましょうか?」



「お主達上忍の頭領のみに伝えるが那須資晴様は未来を見通せる心眼を持つお方なのだ、那須家が急に大家となったは那須資晴様の先を読める心眼お陰じゃ、小田家も北条家も、管領家上杉家も皆、那須資晴様の心眼によって大きな家となっている、今では東の坂東武者は全て戦を止め国力を上げる政をしている、これ全て那須資晴様の御計らいによる証左である!!!」



「この百地も、共にいる服部、藤林も途方も無き話、鞍馬様からの話で無かったら信じませぬでしょう、日ノ本全ての忍びを頂に立つ鞍馬天狗様の話ゆえ、きっと真実なのでありましょう、疑う事も不敬となります、そこで我らはどこに退けば良いのでありましょうか? 年老いた者から童まで含めれば1万以上の家族数となります、その多くの者が行く宛はどうなりましょうか?」



「案ずるでない、既にその事も解決済みじゃ、服部の多くは今、徳川に仕えている、ここにいる服部の者達は北条家にて仕えて頂く、勿論ここにいる他の家で服部と共に行く小家の忍び達も北条が引き受ける、百地の家は那須家が、藤林の家は小田家が引き受ける事になっている、それぞれの家に付いて行く家の忍び達も全て受け入れる事になっている!!」



「・・・もうそこまで話が出来上がって、絵が書かれておりますのでありますか・・・」



「先程も伝えたが那須資晴様は何年も前よりこの日が来る事を読み取っていたのだ、北条家も小田家でも那須資晴様と強力な同盟をされている家々なのだ、何万人であろうと両手を上げて向かい入れ庇護して頂ける、下を向かずに堂々と各家を頼るが良い、三家はこの伊賀の地とは違い食する物が豊富にある、何処の地よりも恵まれた豊穣の地である、家族の者達も安らかに過ごせるであろう、先ずはこの事を、織田に露見されぬ様に今から動き年明けには徐々に移動するのだ、詳しい話は風魔と和田衆を遣わす、三月半ばまでに移動を終えるのだ!!」



 この一連の計は軍師今成玲子よりもたらされた史実からの悲劇を回避するべく、洋一より話が那須資晴に伝えられ、多くの忍び達が亡くなり伊賀の国は織田家の領地となる事を逆手に取って、偽計空城の計を大規模に一国の伊賀の国を舞台に、伊賀国内を空とし、その後に取り返す、その昔、長野業盛と行った、上野の箕輪城で行った偽計を真似た大掛かりな策であった。



 何れ取り戻せば良い話であり無理に戦い大勢の犠牲者を出す必要が無いとの話であるが戦国に生きる者達は一戦交えてから退くという事で最後まで戦ったという、抵抗したのだという証を求めて余計な犠牲を作り出していた、その事を良く知る資晴は日ノ本の忍びの頂点に立つ鞍馬天狗より説得させる事にした、鞍馬が話す事で、天狗の指示で退くという大義を得た事になる。





 ── 天下布武の城 ──




「皆の者、これが天下を掌握する我が城である、間もなく顕如も毛利もわしの足下に頭を垂れ跪くであろう、さすれば儂が天下人になる、お主たちは天下人に貢献した名誉ある忠臣として称えられるであろう、外を見てみるが良い、人が蟻のようである、これが天下を取る者の眺める景色という限られた者に与えられた特権である!!」



「この秀吉、只々驚いております、天空の夢の地から見ているようで体がふわふわしております、まさに上様は天下人なのですね、日ノ本で唯一人のお方に御座りまする、天下人たる上様と出会えた事この秀吉の誇りであります!」



「ふふふふふ、誇るが良い、そして手柄を立てよ、天下は目前であるぞ、皆の者儂にひれ伏すが良い、儂の命に従い手柄を上げよ!! 手柄上げぬ者は身内とて容赦はしない、皆の者儂にひれ伏せよ!!!」




 天下布武の城『安土城』が完成した、地下1階地上6階建てで、天主の高さが約32メートルそれまでの城にはない独創的な意匠で絢爛豪華な城の完成である、総奉行は丹羽長秀、普請奉行に木村高重、大工棟梁には岡部又右衛門、縄張奉行には羽柴秀吉、石奉行には西尾吉次、小沢六郎三郎、吉田平内、大西某、瓦奉行には小川祐忠、堀部佐内、青山助一があたったとされる。



 当時の日本の中央拠点であった京に近く、琵琶湖の水運も利用出来る利便性があり城郭の規模、容姿は、太田牛一や宣教師の記述にあるように天下布武(信長の天下統一事業)を象徴し、一目にして人々に知らしめるものであり、山頂の天主に信長が起居、その家族も本丸付近で生活し、家臣は山腹あるいは城下の屋敷に居住していたとされる。



 築城の際に城の鎮守石を基礎部に埋めるべく巨大な蛇石を埋設したと記録が残されているが未だに発見されていない、この蛇の紋様がある蛇石と呼ばれた巨大な大岩を運ぶために、秀吉は観音寺山と長命寺山の谷から大石を引き出すため人足を集め、石引きの歌声が天地にこだまする有様は、昼夜山も谷も動くばかり『信長公記』安土御普請の事と記述されている、なかでも「『蛇石』という巨石は五間余《約10m》推定三万貫(約112トン)、引き上げる途中で綱が切れ、横滑りした蛇石に150人余が挽き潰され殺された、その後蛇石は安土山頂まで引き上げられたはずだが、現在までに幾度の発掘調査を経ても、未だ発見されていない。



 ポルトガル人イエズス会宣教師であるルイス・フロイスは著書『日本史』に、天主に関して次のように記している。



 中心には、彼らがテンシュと呼ぶ一種の塔があり、私たちの塔より気品があり壮大な建築である。

 この塔は七重からなり、内外共に建築の妙技を尽くして造営された。事実、内部にあっては、四方に色彩豊かに描かれた肖像たちが壁全面を覆い尽くしている。


外部は、これらの階層ごとに色が分かれ、あるものはこの日本で用いられている黒い漆塗りの窓が配された白壁であり、これが絶妙な美しさを持っている、ある階層は紅く、またある階層は青く、最上階は全て金色である、このテンシュは、その他の邸宅と同様に我らの知る限りの最も華美な瓦で覆われている、それらは、青に見え、前列の瓦には丸い頭が付いている、屋根にはとても気品のある技巧を凝らした形の雄大な怪人面が付けられている。




 安土城の完成から三年余りで消え去る天下人の城、果たして信長に本能寺の変が史実と同じく襲い掛かるのか、織田家には明智光秀は存在しない、本能寺の変が起こる場合、軍師玲子はどのような一手を指すのか、那須家の命運はどう変化して行くのか、那須家の再興 今ここに!! 迹から本地を表す後段に移ります。




織田信長の安土城が完成したんですね、着々と玲子の指示による戦略の一端を担うであろう伊賀の忍び達を味方に付けたようです、那須の連合三家はこれで日ノ本中の主な忍びを取り入れた事になります、面白い展開がありそうです。

次章「調練と戦略」になります。

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