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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
235/331

235 海戦模様

 




「やはりそうであったか、儂の予感は的中したか、ふっふふふふ、それで良いのだ、信玄も喜んでおろう、のう軒猿よ、そちには最後つらい役目を頼むがそれも役目である、今生での使命が終わった後、儂にいろいろ聞かせてくれ!!」



「・・・・・」



「この事を絶対に直江に悟られてはならぬぞ、直江の方からお主にいろいろ話は来ておることも儂は充分知っておる、儂は何も知らぬ事を通す、どんな事があっても家を割る争いにしてはならぬ、ここに三通の書付と三家への書付を用意した、最初の三通は景勝と景虎と軒猿お主宛てじゃ!!」



「某にでありますか?」



「そうじゃ、儂が亡くなった後に開けよ、そちは一族と共に景虎の元に行くのだ、景勝には直江が付いておる、そして軒猿は忍びの頭領を跡目に継がせ、お主は景勝の側近として儂の目付として仕えるのだ、今は公言出来ぬが今日よりそちは、儂の養子とする、軒猿よ儂から与える最後の褒美じゃ、今日よりそちは儂の子ぞ! 軒猿よその方の名を『上杉影軒』と名乗るが良い、謂れを説明するまでも無いであろう、その名があれば景虎の取り巻きも何も言えぬ、景虎には儂の虎の子を遣わすと文に書いておる、大事にしてくれるであろう」



「はっ、はあー、ありがたき幸せになります、この軒猿に御実城様の名を頂けるとは必ずや使命を全うして参ります!!」



「もう一つ、この事は儂にもまだ読めぬ事があるがそちに託しておく、そちの判断で行うが良い、それは織田信長の事じゃ、あ奴は覇道の牙にて強引に天下を治めようとしている、そこはそれで問題は無い、しかしその牙には邪心の心も潜んでいる、恐れ多い事なれど僅かに残る律令を認めず朝廷を排除するかも知れん、又は自分の血筋を帝に据えようと画策するやもしれぬ、邪心の牙が表に出た時に軒猿の判断で信長を殺すが良い、場合によっては全くの思いもよらぬ別の者が信長を亡き者にするやも知れぬ、儂にもそこまでは読めぬが、何れその邪心の牙は顕如を倒し、毛利を退ければ天下を掌握した事になる!! その時にその牙がどこに向かうかを確かめよ! これはお主にしか託せぬ!!」



「又、那須資晴を中心とする三家は明確に対峙する時が来る、その時まで目を光らせ汚れ役は済まぬが軒猿に託すしかない、資晴を汚してはならぬ、数年もすれば三家の頭領となり上杉も含めた四家の頭領に相応しい男となろう、儂は信玄坊主と戦い過ぎた、あ奴が前に立ち塞がねば10年は自由に時を使えた、まあーあ奴も同じであろうが、10年あれば信長など手の上で転がせた、まあーこれはこれで面白い事である、今日は最後まで付き合うが良い、気分の良い夜である!」



 謙信は自分の寿命を悟っていた、直江の動きも、軒猿の動きもここ一年何か違っていた事を見抜き、己の寿命が間もなく終わろうとしている事を悟り、軒猿を尋問し、その事を確認した謙信は那須資晴がお家騒動を回避する策を直江と連携して動いている事も知る事になった、その事で後顧の憂いを無くす、排除する為に密かに残り最後の寿命が事切れる前に手当した、そこには謙信の想いが込められた、それぞれに対する感謝の策を文と言う形で今世最後の麗しい一手をあたかも一輪の花を生ける優しいで挿した。





 ── 海戦模様 ──





「玲子さん、資晴から毛利と織田で海戦が行われ、信長が敗れたと伝わりました、史実と同じ様です!」



「予想通りに動いているのね、西側の諸国は史実と同じだと言う事ね、明智十兵衛が織田に不在でも誰かが代わりを務め史実と同じ事が起きているって事ね、この海戦で敗れた信長は海賊衆に力を入れ大船を何艘も作らせ次戦をもぎ取る筈よ、歴史で言う所の鉄鋼船よ、南蛮のガレオン船を模倣して鉄板で周囲を覆った黒い船が登場する筈よ、何しろお金はあるから一気に作るから、面白い事になるわ!!」



「えっ、面白がってていいんですか、なんで態々そんな船を造る必要があるのかちょっと教えて下さい」



「あ~そうね、え~と那須家で使う石火矢とてつはうって武器あるでしょう、それのてつはの方の火薬で陶器を爆発させて油と礫を飛び散らす武器、あれって村上水軍の得意技の武器なんだよね、敵の船に投げ入れ爆発させ燃やして沈没させる武器として利用していた海賊衆なの、今回の海戦ではそれで九鬼の海賊衆を叩き潰したのよ!!」




「史実では第一次木津川口の戦いと呼ばれた海戦で天正4年《1576年》に毛利氏と織田氏との間で大阪湾木津川河口で行われた実際の話なんだけど、例の顕如が本願寺に軍勢と信徒が5万人が籠城して十年にわたって争われた石山合戦の一つの戦い、信長が米止めしているから毛利に兵糧を送るように依頼して、毛利の水軍《村上水軍》が兵糧を運び入れた際の戦、その時の戦い方が特徴があって、木津川河口を九鬼水軍300隻が防いでいたの、そこを突破しないと兵糧が運べないという事で村上水軍800隻が焙烙玉を次々と九鬼の船に投げ入れて壊滅的な打撃を与えたの」



「その結果毛利が完勝して兵糧を無事に運べたという海戦なの、物の見事に圧勝されてしまって信長は衝撃を受けるの、何しろ爆発する武器を投げ入れられて次々と何も出来ないで沈没して行くから、それもほぼ全滅という結果になるから信長の受けた衝撃相当な物だったと思うよ、海戦史上で完全勝利するって中々海戦史の中では珍しくてそれもこの時は両方で1000隻を超える船だから、村上水軍の船は小早船って呼ばれた船で、小型の船なんだけど漕ぎ手が10~14人位いて一気に敵船に向って走り出して、速度を生かして相手の船が射程距離に入ったら焙烙玉を投げ入れて過ぎ去るの、那須家の騎馬隊と同じヒット&ウェイを海で行う優れた海賊が村上水軍なんだよね」



「これが第一次で次に送った兵糧が減って来たので再度送る事になるんだけど、それが第二次木津川口の戦いと呼ばれて、その時に信長が秘密裏に作らせていた大船の鉄鋼船なのよ、村上の焙烙玉に対抗する為に、鉄の板で覆った船を造らせていたの、村上の焙烙玉の爆発に耐えて跳ね返す船、鉄砲隊と大砲を乗せた船を10艘近く造って(諸説あり)河口を防いで小早船の侵入を防いで近づく村上の海賊衆を撃ち殺して今度は逆に勝利した、その時の船が有名な鉄鋼船なのよ!!」



「えー、そんな戦艦みたいな船と那須は戦えるんですか? 拙く無いですか?」



「まあーねなんとかなるでしょう、その船の弱点も判っているから、人力で動かせる船だから砲台のように河口に留まって戦うならいいけど普通の大海原での海戦はそんな重い船は役に立たないから、相手にしなければいいのよ、確かその船は秀吉が朝鮮出兵で使ったと思ったけど活躍した話は聞いた事無いし、むしろ朝鮮の李舜臣の鉄鋼船にコテンパンにやられた話しか知らないし、信長の鉄鋼船は大きくて船を漕ぐ漕ぎ手も100人いたって資料がある位だから要はでか過ぎたのね!!」



「まあー玲子さんが心配してないようなら伝えなくていいですね、では三家は次に起こる乱について計画通り進めて大丈夫ですね?」



「うん、それでいいよ、今は三家が内政と関係する乱の対処でいいと思うよ、無理に何かをする事に力を使うより力を貯める時だね!!」



「一つだけ洋一さんの方で調べて欲しい事があるの、粉塵爆発って凄い爆発現象があるんだけど、その仕組みと、どうすれば出来るのかを、確か小麦の粉で出来た様な記憶があるんだけど、本当に出来るのか、出来る場合の条件とかを調べて欲しいの」



「なんか危険な爆発でしたね、調べて起きます、玲子さんもそろそろ那須の事は自分に任せて出産に集中して下さい、過度な甘い物とか駄目ですよ!!」



「・・・・・判ったわよ!!」






 ── 公家擬き ──





「殿、今川様より文が届きました!」



「どれ・・・又か・・・あ奴め調子に乗り追って、一体奴は銭を何に使っているのだ、三ヶ月程前にも300貫も渡したでは無いか、これでは年に5000貫も使う事になる、父上が困った時は遠慮なく申せと言ったものだから本気にしおって、困った奴じゃ!!!」



「如何したのじゃ、氏政?」



「はっ、幻庵様これを見て下され!」



「なんじゃ、銭の催促ではないか!! 確か年に3000石と決めた筈ぞ、どうなっておる?」



「それが氏真が、京にある今川の館で公家衆を庇護しているとかで銭が必要との事で三ヶ月前に300貫追加で送ったので御座います、所がこれで御座います、一体何人の者達を面倒見ているのやら、呆れておりました!」



「公家という連中は銭を産まぬ者達じゃ、他人の銭は自分が贅沢する銭と思っておる、それに氏真も公家に歌舞いておる、擬きじゃ、年に3000石という大金ぞ、100人の者が普通に暮らせる銭を渡しておるのだ、元は三ヵ国の太守の家柄、館の維持も必要であろう、下男下女の費えも必要であろうとの事で3000石という大金を渡しておるのだ、手元にいる者達はせいぜい20人程であろう、一人で数十人分も使っておる、些か贅沢をしているのでは無いか?」



「では送るのを止めまするか?」



「ここに書かれておる公家の面倒が本当の事を考慮して100貫も送れば良いであろう、後は自分の裁量で行えと申すが良い、甘えさせてはならん、本当に必要であれば使いを寄こし詳しい事情を説明しに来るであろう、その時に判断すれば良い、文一つで無心するとは心得違いもよい処じゃ! 氏康は知っておるのか?」



「父上に話せば、氏真に甘く銭を渡してしまいます、前回の時もそうでした、今までの経緯もあり甘くなるのでしょう、それはそれで仕方ありませぬ!!」



「・・・まあーそうかも知れん、あ奴の父とは同盟を組み切っても切れん関係じゃ、共に戦国を生きた戦友なのであろう、しかし、鷹から烏が生まれた様な者よ、あの氏真はどうしょうもない奴じゃのう!!」



「幻庵様、それを言うなら鷹から雀程度でありましょう、烏はではちと知恵がありすぎます、烏は利口でありますぞ!!」



「あっははは、確かに烏では無いのう、それにしても雀に集まる公家とはこれまた疲れる話であるな!」



 氏真の元には魑魅魍魎とした公家達が出入りしていた、信長の忌避し陰でこそこそとありもしない噂話を行い、氏真に取り入り祭り上げ徘徊する者達が館を出入りしていた、氏真は氏真で自分を頼る公家達を満更では無い気分で向かい入れ、共に信長を追い落とす話に花を咲かせていた、そこへある日、武田信玄に仕えていた者が氏真の館に義元公に手向けの香を追善したいと申す御家人らしい婦人が訪れた。



「ほう、そなた様は信玄公に仕えておりましたのか、してどうして我が父に手向けをしたいと申すのか、些か判りかね致します、どのような事でありましょうか?」



「私の名は千代と申します、今は無き武田様のお側で仕えていた者になります、今は日雇いなど濡れ仕事をして糧を求めて日々凌いでおる哀れな者に御座います、偶々近くを通りました処、こちら様は今川様の御館と聞きました、私はあの折りの遠い昔に三家が同盟を結び日に義元公様にお目通りをしております、その際にお声を掛けられ伽を、御情けを頂きました者になります、後に義元公様のやや子を授かりし事が判明致しましたが、残念ながら流れてしまいました、どうしてもこの事を墓前にてお詫びしたく、ここが館と知り訪ねてしまいました、お許し下さい!」



 ややもすると氏真の兄弟がこの女性から生まれていたと聞き、驚き青ざめる氏真、確かにその昔は綺麗な者であったであろう面影があり、態々このような話をする為に虚偽の話をする理由は無いであろうと判断した氏真、この女こそ信玄の元で歩き巫女を呪印で操り諜報の巫女を作る大元締めの望月千代女である。



「いや済まぬ、あまりの話に驚き、止まってしまった、その様な事があったのですね、某にそなたから兄弟が・・・してその流れてしまった赤子はどちらでありましたでしょうか?」



「はい姫として生まれて来るやや子でありました、申し訳ありませぬ」



「そうでありましたか、この話は私からモ父上の墓前にてお伝え致します、千代と申しましたね、行く宛はありますか?」



「・・・失礼かと思いますがどのような汚れ仕事でも致します、暫く今川様の処にてお仕え出来ませぬでしょうか?」



「おうおう、それはお困りでありますね、当家は何かと人の出入りが多く、信玄公にお仕えしていたとあれば作法もご存じでありましょう、暫く仕えて見て下され、千代殿が気に入りすれば良いのですが!!」



「勿体無く、忝のう御座います、まるで昔の義元公の御情けを頂いた安らかなる心で御座います、忝のう御座います」



 父義元公と伽し、自分の兄弟となる妹がこの千代なる女性の腹の中にいたと聞き、情をかけるしか無かった氏真、千代の話は全くの虚偽の話であり信玄の側に仕えていた事以外は全て噓である、氏真の懐に入るべく秀吉からの命を果たす芝居であり、この館には悪女の瀬名がいる、瀬名に近づく為の芝居であった。





謙信も判っていたようですね、ではなんで跡目をはっきりとしておけば良かったのにと思います。

次章「田村の前に田村無し」になります。

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