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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
212/331

212 余興

バザールでゴザール!!

 




「どうだ信孝様のご様子は?」



「無事に入れたご様子です、こころが出来上がっている大人には無理なのですが、あれだけの制裁をうけ生死を彷徨い魂が一度死に心も何も感じなくなり童と同じ状態になりました、それと心が戻っても現実から逃げておりましたので入れました、これで信孝様はあなた様の物になりました!」



「流石である、それとお主の技を使い今までと同じ様に巫女を育てるのだ、それと忍びの子供にも技を使い育てるのだ、これよりは儂の為に働くのだ、褒美は思いのままであるぞ、儂はもっともっと大きくなる、そなたのかつての主人であった信玄殿より大きくなる、儂に尽くせば間違いない!」



「はっありがとうございます、信玄殿を超えるとなれば信長様の次に大きい方になられる訳ですね、この千代女楽しみにしております、ご用は何なりとお申し付けください」



「何れ判ろう、では信孝様はもう落ち着かれたのであるな、信長様にお話ししても大丈夫であるな?」



「はい、心の支えが入れた事で落ち着かれ今までの信孝様とは別人と思われるでしょう、余計な事も話さず静かに過ごすお方になっております、何も心配は要りませぬ!!」



「うむ、では儂と一緒に暫く従軍させ様子を見て観よう! 下がって良いぞ!!!」



 望月千代女は武田信玄の元で呪印を施し歩き巫女を育て諸国に放ち情報を得る方法でいち早く敵の情勢と弱点掴み有利は運び勝利を掴む貢献をして来た、その千代女は武田太郎が甲斐に戻った際に囚われており締り所に押し込められていたが隙を見て逃げ出し、羽柴秀吉の元で庇護を受ける事になった。



 秀吉も信玄が多くの歩き巫女を利用していた事を知り、その利用価値を認め庇護する事になった、そんな中、織田信長の三男信孝が生死を彷徨う制裁を受け、大人ではあるが試しに呪印を施し何れ何かの役に立つであろうと含みのある処置を行った、織田家の中で秀吉の上にいる重臣は丹羽、滝川、柴田である、後は嫡男の信忠と信雄のぶかつ位であり、ここには明智光秀は存在しない。



 秀吉が千代女には利用価値があると判断した事と同じく千代女には復讐の道具として秀吉を利用する為に近づいた、決して庇護などを求めて来た訳では無い、その復讐の相手は那須である。





 ── 豊穣祭り ──





「若様バザルが大変な事になっております、百合様が半兵衛様の百合様が無双しております!」



「あっ、血相を変え半兵衛様が参りました、半兵衛様の顔が渋柿になっております!!」



「なんの事だかさっぱりじゃ、半兵衛を通せ、きっと何かあったのであろう! どうした半兵衛、何があった?」



「若、申し訳ありませぬね某の落ち度であります、百合が百合が勝手に市場で物売りを始めました! 止める事出来ませなんだ!」



「えっ、市場ってバザルの事か?」



「はい、あのバザルの10組のグルを一つにして、大きい4つの天幕の内、那須の家で使う予定の所に、なんというかそれを乗っ取り、今、品を売っており大勢の人だかりが出来ておりまする、某が止めたのですがお家一大事の時に、この時を逃がしてなんとすると申して無双しております!」



「う・・・相変わらず判った様な判らん様な説明を半兵衛はするのう、梅ここは梅の出番である解説を頼む!!」



「はい、若様のバザルの話を聞いた百合様は、白河結城家は今、城の修繕、お家騒動などありましたので懐に余裕なく、城代の半兵衛殿が苦労している中、この話を聞きつけ、白河結城家の蔵から売れそうな品を吐出し、その品をバザルでいち早く売り出したのです、流石百合様と言った所でありますが、領民がこぞって津波のように集まり無双状態となっております!!」



「なんとそれ程銭に困っておったか、気が付かなかった申し訳ない、それとその無双なる状態とはもう少しどんな感じなのじゃ?」



「売り子が20名程で裁いておりますが、何しろ1000名以上の津波であります、収拾が付かず、押し寄せる津波に向かって竹製の薙刀で追い払っては押し寄せ、追い払っては押し寄せと暴れております!!」



「あはははー、それは面白い、要は売り子が足りぬのであろう、良し百合を助けるのだ、白河結城の蔵の品を今日中に売りさばくのだ、明後日のハザルに向け良い宣伝になる、侍女達を引き連れ手助けに行くのだ、小太郎達にも手の空いている和田衆にも急ぎ向かわせる、品を売り切れば百合も大助かりであろう、半兵衛も渋柿の顔をしとらんで、手伝うのじゃ、結城白河家の戦ぞ、面白い事ではないか!!」



 バザルで津波と戦う百合の元に援軍が駆けつけ結城白河家の蔵にあった品を売る事に、現代のバザールもそうであるが、何故走って目の前の商品を見定めもしないで取り合うのか、何故馬鹿みたいに買うのか、商品を取り合って喧嘩をするのか、買わないと死ぬとでも言うのか、興奮状態となった結城白河家のバザル、押し寄せる津波の数は1000人どころでは無かった、バザルを聞きつけた城下の町民も午後にはこぞって押し寄せ、夕刻前には全ての品が売り切れ、残されたのは放心状態となった売り子と百合であった、半兵衛は仮死状態のぼろきれで発見された。



 この日だけで150貫《1500万》もの大金を得た結城白河家であった。





 ── 余興 ──




 いよいよ祭りとバザルが始まった、市場バザルは前日から開催され常時1000人以上の人だかりの大盛況となった、那須家の領内は年々石高が上がり米が余り余った米を那須家で買い取り、買い取った古い古米は毛利に売る事になっている、百姓町人と工夫達は今ではしっかりと銭を持っている、使い道が無く箪笥預金として貯まっていた処にバザルが開かれた、城の蔵にある物はそこそこ名品が揃っており、漆器類も豊富に山の様に貯まっており断捨離の良い機会となり、各村でも余った穀物の放出出来るチャンスとなった。



 商人達もこれは儲けるチャンスと捉え大人買いする者も現れ、噂が噂を呼び大勢が集まる千客万来のバザルが開幕した、結城白川家の百合の活躍がその下地となったと言えよう。



 豊穣祭りが始まる前段階の露払いの余興演目が行われる事になった、露払いで演目が行われるのは初めての事になる。




 豊穣祭りの大広場には高櫓4段が設置され、大きい円周の広場があり正面には来客用のビップ席と有料の桟敷席があり、その他は自由に見学出来る広場になっている、余興として最初に勇壮な諏訪太鼓が披露され、そこへ東西南北の方角から蛇行の動きで騎馬隊がゆっくりと現れた、諏訪太鼓の音頭に合わせ四方向から東より青龍 緑色の服装、西より白虎 白色の服装、南より朱雀 赤色の服装、北より玄武 黒色の服装に身を包んだ大蛇の騎馬隊が登場した。


 これは四神、四獣、四象とも呼ばれる四つの方角を守る霊獣を表し太郎の演出は那須には武田家という守り神がいるという演出を行った。



 太鼓の音に合わせ四方向から現れた大蛇の騎馬隊に驚く観衆、蛇行の動きで円を描きながらゆっくりと移動する、徐々にその動きが速くなり中心に四方向の大蛇が集まり大きい渦が出来た、四色の綺麗な渦の騎馬隊が密集した時点で太鼓の音が止み、今度は大きい幟旗が掲げられた、幟旗には墨痕鮮やかな『風林火山』と書かれた文字の幟が書かれており、見事な旗がなびく中、騎馬の上から太郎が叫んだ!!!



『武田太郎見参!!』 その声に合わせ騎馬隊が一斉に、えいえいえおー、叫び諏訪太鼓の音に合わせ退場となった、これ程の近くで騎馬隊の動きを見た領民達は驚くもワクワク感が抑えきれず騎馬隊に声援を送った。



 太郎達が退場し終わったと思ったら、今度は高櫓の上段から烏山太鼓が鳴り響いた、資晴は太郎達の演目が終われば祭りの開始と聞いていたが、この烏山太鼓の事は知らされていない。



「おっ、まだ何かあるのか?」



「若様、向こうの方があの奥の方で何かが動いております!!」



「どこだ梅?」



「あそこです、そっちではありませぬ、この指の先の方です」



「お~あれか、なんであろうか?」



 勇壮な烏山太鼓が鳴り響く中、またもや騎馬隊が現れた、100名程の戦闘用の黒色の狩依を身に纏い隊列を組んで場内を一周した。



「えっ、梅・・あれはあれは父上では無いか、母上、父上でありますぞ!!!」



 驚き話かけるも、にやけて笑みを浮かべている母のお藤のお方。



「母上は知っておったのですね、父上は何を致すつもりなのですか?」



「観ておれば判ります、父上の凄さが判りますよ、そなたに婚儀の手土産にお見せすると文が来ておりました、何をするのかは妾も知りませぬ!!」



「なんと本当でありますか、この為に帰ってこなかったのですか!!」



 当主資胤を先頭に城内を一周し、100名の者達は反対側に移動し横並びに並んだ、一人残された資胤、そこへ大きい盃と一升樽を抱えた配下が盃を渡し一升の酒を並々と注いだ!!



『我は那須家当主那須与一資胤である、これより我が弓の腕を披露致す、とくとご覧あれ!!』


 静まり返った場内、一体何が始まったのか、当主資胤様は何をするのだという興味に固唾を飲んでいた、勿論資晴も何をする気なのかは不明であった、大きい盃にたっぷりの酒が入っておりそれを飲み始めた資胤、ごくりごくりと音が聞こえるような錯覚に、一気に飲み干した盃を皆に見せ『これより三本の矢を放つ!!』と声を上げ構えた。



 天空に向け最初の鏑矢を放ち、音が鳴る中、上空200m程で落下し始めた所に第二射の鏑矢が放たれ、最初の鏑矢に音を立て命中した、そして第三射の鏑矢が放たれ又もや二射目に放った矢に見事命中した!!!  落下する鏑矢は音を立て地面に落ちて来た!!



 観衆は信じられない物を見たと言う顔付で、那須の当主がこれ程の弓の名手であったのかと言う誇りに大歓声となった、無事にやり遂げた資胤の元に騎馬隊も整列し大歓声の中退場した。



「父上はお前に見せる為に常陸で小田様の所で修練していたのです、素晴らしい父であり我が夫であります、資晴も父の背を忘れてはなりませぬぞ!!」



「はい、母上、生涯この日を忘れませぬ、父上に感謝致します!!」



 余興の演目も終わり祭りが開始された、三日間に渡る大豊穣祭り、例年と同じく獅子舞が練り歩き、相撲もあり、巫女48の萌え舞いと楽しい祭りである、注目の綱引きは今年から武家は参加せず領民達に全て解放し楽しんでもらう事になった、規模が大きく成り、予選を行う会場も何ヵ所も運営し、留守になった村々の巡回警備など運営側の陣容も大きくする必要からであった。



 祭りの初日が終わり義兄の那須ナヨロシクが資晴にどうしても諦められないから聞いて欲しいと詰め寄って来た。



「それほど義兄は梅を側室に欲しいのですね、以前一度即答で断られましたが、又も断られるかも知れませぬがそれでも宜しいですか?」



「それで良いのだ、あの津軽安東家と南部との戦いで油川の町《現青森市》を津軽が取った手腕は見事であり蝦夷の民には真似できぬ、初対面で儂をしかりつけたあの度胸は只者ではない、どうしても側室に欲しいのだ、もう一度資晴から某の想いを伝えて頂きたい!!」



「義兄が直接言うてみたらどうでしょうか、その方がよろしいので無いでしょうか?」



「儂もそう思ったのだが、今の儂は蝦夷の王である、その王である儂が又一撃で断られたら二度と立ち直れぬ、そこで資晴から聞いて頂き断られたのであれば直接ではないゆえ、又いつか挑戦出来るでは無いか、そう思ったのだ!!」

(最初から断られる事を前提で頼むとは、凝りもせず三回目も考えての持久戦なのだな(笑))



「判りました義兄がそこまで言うのであれば梅に聞いて見ます、某が聞いて断られました時は両腕をこう上げて交差致します、×の印を作ります、それで良いですね?」



「判った、嘘でも良いから丸を作るのだ、〇であるぞ!!」



 席を離れた那須ナヨロシク、梅を呼びナヨロシクの希望を伝えるも梅は大きい声でお断り致しますと廊下の向こうまで聞こえる大声で即答した!!



 その声は那須ナヨロシクに充分届いており、青ざめていた、そこへ廊下の向こうから資晴が嘘の〇を、両手で〇を作り止めを刺した、梅に惚れた那須ナヨロシク、梅は一体誰と結婚するのであろうか、適齢期を過ぎている梅である、梅の結婚話は後に訪れる事に。



 二日目の祭りでは桟敷席で資胤も来賓で来た山科殿を初め多くの方々と昨日の見事な弓技の事を聞かれ上機嫌で楽しく過ごし午後には夫婦にてバザルの見学に、そこではやはり百合が相変わらず無双をしていた、先の試験的なバザルで持って来た蔵の商品を売り尽くしたので急ぎ追加の蔵に眠っている品を運ばせ、新たにグルの天幕を勝手に作り結城白川家のバザル場を横に作り気炎を吐き阿修羅の如く追い払っては売りさばき、見物客もこの売り場面白いとなり大勢の津波が押寄せていた。



「あれは確か百合であろう、半兵衛に嫁いだ百合であろう? どうしてあの様に無双をしているのじゃ? 妾が確かめて来よう!!」



「・・・妾には無理であった、とてもじゃないが中まで辿り着けぬ、放置するしかあるまい!!」



「お藤、こっちも凄い事になっておるぞ、このバザルという奴は危険であるな、怪我人も出ておるに違いない、明日からは何か考えんと死人が出るぞ、ほれ、あそこで油屋が殺されかけておる、服が引きちぎられておる!!」



 買い物客の半数以上は女性であり多くのご婦人方に支配されている、旦那の男衆は祭りを観賞しながら楽しく一杯ひっかけていた、買い物に目覚めた那須の女性達である。




千代女が又もや登場しました、危険な匂いがしますね。

次章「結納」になります。

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