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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
193/331

193 桂馬

 





 元服式を終え各家々は自由に滞在し他の家々と誼を通じるべく勝手に外交に精を出していた、那須資晴も大切な話をするために北條氏政と話し込んでいた。



「本当にそのような事が起きるのですね、これは由々しき事になりますぞ、今から手を打たねば、直前では何も出来ぬ、しかし、今から手を打つにもどう打てば良いのか、良い手が浮かばぬ!!」



「洋一殿の話では軍師より、この者としっかり誼を通じよとの話なのです、この者であれば本来の史実でも話の通じるお方でありこの者にしか頼れぬと言う事らしいのです」



「相手当主に話し、手を打たずにこの者を頼れと言う事なのですね?」



「はい、史実では事が起きた時にこの者が差配し危機を乗り越えたと、危機が起こらぬようにする事と、北条家に災いがふり掛からぬようにする為にこの者にという事のようです!!」



「史実ではこの者が危機を乗り越えたとの事ですが、影響が大きく家の力が半減されてしまい、家は残りますが小さき家になったようです、その事も回避する必要があります!!」



「しかし弟を何処に持っておけば良いのか、難儀な事になりましたな!」



「この地図のここは今どうなっておりましょうか?」



「この地は広さはありますが中小の河川が多く小さき国人領主達がおり、纏め役は江戸氏という者ですが、その家も小さく一面葦が生えた野原となっております、そこがどうかされましたか?」



「実はこの地が史実では京の都を超える幕府の地になったと、そして人の住む数が100万人を超える途轍もない発展をする地だとの事です!!」



「そんな馬鹿な小田原より大きい町になると?」



「いやいや我らのこの時代ではどうなるか判りませぬが、それだけ大きくなる力がある地だとの事です、ですからこの地に弟殿をと、どうかと思ったのです」



「ふむ、そう言う事であったか、ちと驚いてしまった、たしかに本当であればそれは魅力的な地ではある!」



「まだ刻はあるから地均しをしておけば、この地でも問題はあるまい、後は弟の方であるな!」



「宜しければ某に任せて頂ければなんとか手を尽くして見ます、身内が手を出すと裏があると勘ぐられ警戒されるかも知れませぬ、那須の家であれば直接の形にはならず相手側も話に乗りやすいかと思われます」



「うむ、判った、では我らは向かい入れる地均しをしっかり行っておく、資晴殿弟を頼む!!」



 那須資晴と北条氏政が話し込み由々しき事態に備え回避出来る方法について軍師玲子による史実を知りする事になった、その史実とは1578年3月上杉謙信が亡くなり家督の後継をめぐり、ともに謙信の養子である上杉景勝(長尾政景の実子)と上杉景虎(北条氏康の実子)との間で起こった越後のお家騒動である、家を二分し戦に発展する史実の対処であった。



 家を二分し大きい戦まで発展した通称『御館の乱』と呼ばれている、このお家騒動は一年あまり続き景虎側が最後自刃し景勝側の勝利となるが上杉家の力は半減してしまう、又、景虎側に付いた多くの優秀な武将、国人領主も亡くなり家を保つために大きい足枷になってしまう、天下の動静が秀吉に移り力が半減した上杉家はこの御館の乱の後遺症により秀吉の風下に付く事にもなる、この大きい騒動は三家に取って形式上八屋形の主家とも言うべき上杉家が傾く影響は東日本側にって見過ごせぬ事と言える。



 那須資晴が近づこうとしいる人物とは直江家の婿養子となり景勝の腹心となり上杉家で絶大な影響力を発揮する直江 兼続かねつぐである、御館の乱の時には既に側近の一人として取次役を務め景勝の代わりに策を巡らしたとされる、その若者に近づこうとした。





 ── 訪問者 ──




 竹太郎、那須資宗の元服式を終え一ヶ月を過ぎた頃資晴の元に訪問者4名が訪れた。



「ささ、表を上げて下され、そのように畏まれては話も出来ませぬ、某の方が年下であり、そこまで頭を下げられては困ります、ささ頭を上げて下され!!」



 資晴の元に訪れた四名とは何れも浅井長政に仕えていた者であり重用されていた者達である、その四名とは雨森清貞、新庄直忠、新庄直頼、寺村小八郎であり油屋の紹介状を持参しての訪問であった。



「皆様にお聞きしたいのだが、当家は特に織田家とは争ってはおらぬ、かと言って特に親しい間柄でも無い、この先はどの様になるかは先の見えない戦国の世、それと当家は戦より内政に力を入れております、その当家を頼られ奉公したいと言う理由をお教え願いたい!」



「はっはー、それでは私、雨森清貞よりご説明致します、我らは浅井家の中でお亡くなりになりました、前当主久政様、当主でありました長政様に特に面倒を見て頂いた御恩のある者達です、時勢はべつとして織田家との戦で浅井家は滅亡致しましたが最後落城する前日に我らは長政様より城落ちを命じられた者です」



「浅井家は滅亡するが世の趨勢を見届け浅井家の為に亡くなった多くの者達に後の世がどうなったのかを知らせ弔う事を命じられた者達です、長政様の最後の命には従うしかなく城落ちを行い身を隠し最後は堺の油屋にて匿わられておりましたが、堺に代官が派遣され不審なる者の探索が激しくなり油屋殿の話にて那須のお家であればと紹介されたのです、以上が御伺いさせて頂いた経緯となります」



「ふ~それはなんともお辛かったでありましょうな、長政殿も皆様方もお辛かった事でありましょう、それと最後長政殿の亡くなった者達への弔いの話、これは重き使命でありますな、これは私の勝手な話となりますが人は亡くなっても亡くなってはおらぬのです、この身は消滅致しますが、その者の魂、又は意思、意志なる物は確実に次の者に受継がれ同じ血が流れておらずとも、亡くなった者を思う者に受継がれて行きます、勝手な説明で申し訳ありませぬが、故に長政殿が託された思いは皆様に受継がれており亡くなってはおらぬのです!」



「暖かい励ましのお言葉痛み入ります! 今の話長政様がお聞きしましたらきっと安堵されておりましょう!!」



「うむ、当家に仕える事は問題無いが一つだけ承諾される事があります、当家は私怨などで他家とは争いませぬ、先の事は保証出来ませぬが、長政殿がお亡くなりしましたことは残念でありましょうが織田家とも争う事は無いかと思われます、又争う必要も無いと思うております、それで宜しいでしょうか?」



「はっ、勿論であります、我らに託された事は弔う事であり仕返しなどの話ではありませぬ、我らが堂々と働き生きる事が弔いにもなります」



「うむ、では安心して当家に仕えて頂きたい、それと家族郎党も呼ぶが良い、所縁のある浅井家の者達にも声を掛け呼ぶが良い、仮に織田家から問い合わせがあり差し出す様にと話か来ても渡す事は致さぬ、安心して呼ぶが良い!!」



「忠義、この四名を十兵衛、半兵衛と相談し良いと思われる所に指示を頼む!」



「はっ、判り申した、では皆様方こちらへ!」






 ── 七夕 ──





「良く来たな、大賀よ、岡崎の様子はどうであるか、稲の穂はどうなっておる?」



「はっ、岡崎の城は殊の外、民も平穏に暮らしております、稲の穂も実り良く、これも殿の努力の賜物の恩恵であると申しております」



「儂にはそのような力は無い、百姓と領民が努力しておる事で恩恵を得られるのだ、信康はどうなっておる、良い話が届かぬが!!」



「若い力が有り余っており、時には暴れる時も御座いますが、中には織田様の若き頃と同じであり頼もしいと申される者もおり、最近は書に勤しむなど益々向上の志ありと言った所で御座います」



「力が余りあるとの理由で暴れるなど持っての他じゃ、そのお陰で犠牲になる者が出るなど思慮足らずの無法者じゃ、儂が怒っていたと申し伝えるが良い、それと織田様の若き頃と言う話であるが、決してそのような愚かな行為はしておらぬ、心得違いも良い所じゃ、そのような噂は消すが良い、織田様は思慮無分別で暴れる事などしておらぬ!!」



「それとここに書かれている奥が寄こした文の七夕には一度岡崎に帰ると伝えるが良い、節句の祝いを楽しみに行くと伝えよ、七夕が終わればもうすぐ秋である楽しみな事が続く、大賀よ、岡崎に戻りしっかりと今の話を伝えるのだ、岡崎の地は儂の大切な地である、汚れさせてはならぬ!!」



「はっはー殿のお気持ち必ずお伝え致します、不埒なる噂も見逃さず消して参ります!」



「うむ、此度はご苦労であった!!」




 家康との謁見を終え岡崎に戻る大賀弥四郎の顔には不気味な笑みがこぼれていた、しめしめまだ殿は何も知らぬ様子、これが今生最後の七夕である、楽しい一時を過ごすが良い、奥の築山は既に儂の懐に抱かれ遊び女になっておる事も知らぬとは、哀れな者よ、殿とは言えただの男であり某と何も変わらん、儂が最初から当主の息子として生まれておればとうの昔にもっと大きくなっていたであろう、まあー良い儂を家老の末席にした事は褒めといてあげよう、ふっふっふふふふ。




 ひと月後に予定通りに家康を亡き者に姦計を着々と進める大賀弥四郎一派。




「正信儂の演技も上手いであろう、刀に手を掛けたくて仕方が無かったが我慢したぞ!!」



「良くぞ我慢されました、これで七夕にて、はっきりと決着を行えます、ひとつ気がかりな事が、殿の考えをお聞かせ下さい」



「築山の事であろうな・・・儂もどの様にすべきかを思慮しているのだ罪を認めれば離縁し糧には困らぬようにと考えておる、問題は信康だ、信康は姦計に加担はしておらぬと半蔵からも聞いておるが、母親に付いておる、離縁した場合に、信康はどの様な態度をとるか儂にも見当が付かぬ、正信は如何思う?」



「殿の見立ては大変に甘う御座います、奥方様は罪を認めませぬ、罪は殿にあると断言されるかと、その場合の事をご検討された方が宜しいかと、それと信康様は母上を守るために兵を起こすかと、母上に誑かされており、殿が奥方様を罰したら動きます、そうならぬように先に動くしかありませぬ!!」



「儂の考えが甘いのか・・・きっと正信の意見が正しいのであろう、最後は賭けになる、正信は最善の手を尽くすのだ、儂はそれに従う、どんな事をしても岡崎を守らねばならん!」



「判り申した、では某にお任せ下さいまし!!」






 ── 戦将棋 ──





「う~待った!!」



「先程も、もう待ったは使えませぬと一度だけの約束でありましたぞ、若、負けを認めたらどうですか?」



「いやだからなんとかその一手はもう少し、優しく打てぬのかと言う人の心を半兵衛に教えたくて申したのじゃ、もそっと、ここら辺に歩を打ってはどうじゃという意見なのじゃ!」



「先程も似た様な事を言い私に関係ない歩を進めさせました、ただ単に歩が取られただけではありませぬか、もう駄目で御座います」



「だからあの歩は足軽であって、足軽の大切さを半兵衛に伝えたくて歩を歩ませたのじゃ!!!」



「では後ろで見ております梅殿に意見を聞いて見ます、梅殿、殿の言い訳をどう思われます!」



「はい、はっきり言います、卑怯者であります!!! これしかありませぬ、もう三回はこの将棋で負けておるのにあ~でもない、こ~でもないと、これが時期当主かと、はっきりと卑怯者であります!!!」



「・・・・怒怒怒・・・おのれ儂を卑怯者呼ばわりするとは、先程から後ろでボリボリと麦菓子を食べ茶を飲み、挙句に卑怯者とは・・・・」



「殿、負けた時は潔く認めるのです!」



「判ったこれは儂の負けで良い、もう一局じゃ、次は容赦せぬぞ!!!」



 パチン、パチン、パチン、パチン



「ふっふふふふー、これでどうじゃ、ここに桂馬じゃ!!」



「う~何でありましょう、その桂馬は、進めば取るだけでありますぞ!」



「あっはははー、よく見るのだ、小さい目でよく見るのだ、桂馬の下になんと書いておる?」



「ゴミが付いているかと・・・字でありましたか・・桂馬の漢字の下に・・・えっ・・・桂馬の下に米粒の小さい字で飯富と書かれておりますぞ!!」



「そうなのだ、飯富と言えばもう判ったであろう、飯富とは蛇行よ、この桂馬は蛇行の動きが出来るのよ、こうやって半兵衛の駒を交わし、王を獲れるのよ、これで儂の勝じゃ!!!」



「ひひひ、卑怯でありますぞ、勝手に駒に字を書いて飯富と書いて蛇行する駒など将棋にありませぬ、若はいつからそのような悪辣な事を・・・卑怯であります、梅殿なんか言うて下さい!!!」



「ゴッホ、ゴッホ、ゴッホ・・・麦菓子が喉に・・余りの卑怯な手にて麦菓子が・・・喉に詰まりました、これは一大事・・・殿に、お方様に言わねばなりませぬ、三国一の卑怯者になってしまったと!!」



「え~い、煩い、何が三国一の卑怯者だ、半兵衛が手を抜かぬから悪いのだ、最近覚えたばかりであるぞ、待ったもさせぬとは、半兵衛の方が卑怯である!!!」



「申しましたな、私を卑怯者と、では宜しい、もう一度やりましょう、今のは若の勝ちと致しましょう但し私も手を抜きませぬぞ!!」



 パチン、パチン、パチン、パチン



「又、そこに桂馬の飯富殿を張りますか、ではこの王を捕れますかな?」



「何・・・王の下に小さい文字が書かれておる・・・王・・王資胤様・・・ひひひ卑怯な・・ひきょうであるぞ半兵衛、父の名が書かれた王将を獲れる訳なかろう・・・どうだ梅・・半兵衛も卑怯者であるぞ、どう思う!!」



「お二人とも、もう将棋は止めなされ、馬鹿馬鹿しい将棋に意見も何もありませぬ、この話を聞く者は呆れるばかりです、若様に将棋は無理です!!」



 戦の無い那須の地に戦争将棋なる戦将棋が流行した、敵の王将を倒す将棋、なんとも平和な初夏の那須である、桂馬の下に飯富と書かれたとんでもない将棋、梅はそこまでして勝ちたいのかと呆れていた。





那須の国は戦国と言う世から離れて内政一本のようですね。

次章「1574年・秋」になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読んでいて気になった点があるので感想にて指摘すると同時に解決策も提示させて貰いますので参考にして欲しいです。 先ず前提条件として何処とも争わないって言っているけど問題点により現状不可能です…
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