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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
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191 信長と一向

 





 1573年12月~1574年2月にかけて蝦夷の地でアイヌの民と津軽安東家との戦を行い勝利を治め帰還する中、京の都では信長の横行と戦が行われていた。



 史実とは違い甲斐武田家は信玄から太郎に当主が変わり那須に臣従している事から勝頼による長篠の合戦は起こらない、又、徳川家も織田家と北条家に臣従している形を取り三河と岡崎の政に精を出しており織田側の要請に基づく出兵は1000程度と抑えていた。



 織田信長の主な戦の相手は一向衆との戦いであり、那須家が2万近い一向宗を撃破した事で信長は戦を有利に進めるも身内による失政で大敗を喫してしまう。




「貴様が勝手に戦場から撤退した事で大敗してしまったではないか、大勢の兵が死んだでは無いか、貴様など八つ裂きにしてやる!!!」



 信長による見せしめとも言うべき暴力が自らの息子、織田信孝に向けられていた、前年に元服し、出陣回数は三度目の経験浅い、16才の時である、怒りが激しい信長、よりによって自分の息子が最初に戦場から逃げ出した事で怒りを爆発させ、ついに刀を抜き、切り付けようと迫る中、羽柴秀吉が平身低頭し信孝の前に踊り出てた。




「殿、殿お待ちください、殿のお怒り御尤もで御座います、どうかその刀をお納め下さい、某からもきつく信孝様を御諫め致します、どうかここは配下の我らにお任せ下さい!!」



「信孝様、此度の事某からもきつーく御諫め致しますぞ、こちらにお越し下され!」



 羽柴秀吉が絶妙なタイミングを見計らい信孝を部屋から連れ出した事で信長の怒りはやや下がり、今後身内でも愚かな戦をした者は処罰をすると言い放ち部屋から退出した事で納まる事に、一方部屋から信孝を連れ出し安全な部屋にて治療行う秀吉。



「大変で御座いましたな信孝様、顔が痛々しく腫れておりますが、大丈夫でありますか?」



 顔が変形しており両目も膨れ上がり見るも無残な信孝が泣き出し秀吉に罠に嵌められたと言い出した。



「儂は儂は兄に罠に嵌められ、この様な事になったのです、あの日の夜に隣にいた兄上の軍勢が突如陣を移動したのです、勝手に移動したのです、私の右隣りに兄上の信雄のぶかつそして私の部隊、その左側には佐久間殿の部隊が配置し本願寺を包囲しておりましたが、信雄が勝手に横に移動したのです、それで包囲に隙が生まれ雪崩のように一向が襲い掛かり我らの部隊だけでは抗し切れずに崩れたのです、佐久間殿の部隊に援軍を要請しましたが、あの者も逃げ出し、この有様となりました」



「えっ、では申し開きをされてはどうですか?」



「勿論しましたが先に手を打たれており全て私の責任とされました」



「先に手が撃たれていたとは、何の事でありますか?」



「信雄が父に先に、この事を報告しており、私が説明しようにも取り合って頂けず、まんまと兄の罠に嵌りました、以前にも似た様な事がなんども起きておりますが戦場でこの様にここまで嵌められたのは初めてであります、某は悔しくてなりませぬ、羽柴殿であればこの気持ちお判りでありましょう」



 織田信雄と信孝は次男と三男という事ではあるが、それぞれ母親が違い生まれた順で言えば信孝の方が次男と言われており、母親の格が信雄の方が圧倒的に上であり、後から生まれた信雄が次男として信長が認めた事で、次男と三男の順序が逆となった、信雄の母は、生駒 吉乃(きつの)という女性であり信長が最も愛した一人と言われている、側室でありながら正室扱いされたとされる。





「そうでありましたか、それは悔しゅう御座いますな、某も百姓の出であります、皆からさげづまれ、功を上げれば嫌味を言われ、あらぬ言いがかりで殴られ、腕が弱い者ですから、贖う事も出来ず、倒れた所に小便を掛けられ、耐えに耐えて今に至ります」



現代でも似たところが家によってあるが次男、三男では扱いが違う家がある特に戦国時代の武家ではその差は歴然としている




「でも羽柴殿は今では一城の主、立派です、某は切られそうになりました、もう何が何だか判りませぬ!」



「これからも困る事がありましたら私がお助け致します、どうか気を落とさずにして下され!」



「羽柴殿忝い!!」



 秀吉は信孝に同情する姿勢を見せるが秀吉のその姿勢こそ相手の懐に入り自分の立身出世の道具として手駒に使う人誑しの術である。



 又、この兄弟の信孝と信雄の仲が悪い事が度々他の物語でも取り上げられる、特に信長亡き後の織田家の当主を巡る清須会議では、両人とも問題ありとして《信雄と信孝》参加出来ずに後継者に選ばれず兄弟ではあっても反目する。



 秀吉がこの二人を利用する事は自明の理と言っても良い、一枚も二枚も上を行く策士、尚、織田信長による本願寺との決着はまだまだ先となる。





 ── 蘭奢待 ──




 天下人であっても簡単には手に入れる事が出来ないとされる香木の名、蘭奢待らんじゃたい東大寺正倉院に収蔵され、天下第一の名香と謳われ、香木の一部分を切り取ることを截香せっこうという、確実に分かっているだけでも足利義満、足利義教、足利義政、土岐頼武、織田信長、明治天皇らが切り取っているとされている。



 現在、3箇所の切り口に足利義政拝賜之處、織田信長拝賜之處、明治十年依勅切之の付箋がつけられている、織田信長は塙直政と筒井順慶を使者に出し、蘭奢待拝見の希望を伝え、東大寺僧3人の立会のもと、大仏師トンシキが持参した鋸で1寸角2個を切り取り、1つは正親町天皇に献上し、もう1つは我等が拝領と述べたとされる。




「なんと恐れ多い事か、信長が蘭奢待を所望していると申すのか、朕ですら持っておらぬ物を、天下人になったと申すのか?」



「織田信長は既に天下人に相応しい立場となっており、この都を守り朝廷を支えております、無下に断れば支障となり朝廷を、帝を敵視するやも知れませぬ、ここは穏便に諮る事が大事かと思われまする!」



「朕の元にその方、近衛が織田に属し危険であり心配りしているとの話が、囁きが聞こえるが織田の手先となり朕を脅してはおるまいな!!」



「おっほほほほ、そのようなじゃれ事などで帝のお心が揺れる事などありませぬでしょう、誰が朝廷を、帝を支えているのか、それを見定めねばこの戦国の世は乗り越えられませぬ、どの様な事があっても皇室をお支えするのが我らの役目であります」



「では近衛は織田に属している訳でなくこの朝廷を、朕である帝を支えていると言うのであるな!」



「勿論であります、我ら公家が支えるのは朝廷であり、帝になります!!」



 近衞 前久さきひさ官位は従一位、関白、左大臣、太政大臣、准三宮、近衛家17代当主、公家の怪盗とも呼ばれ戦国の世を上手に渡り時の権力者に懐に入り込む、その公家の第一の実力者が織田信長の盟友として既に振舞っていた。



 時には上杉謙信と又は足利義輝と、そして織田信長と渡り歩く、この男、近衛前久は本能寺の変で信長を死に追いやる張本人という噂もある、危険人物と見て良い近衛前久である。





 ── 上杉謙信 ──




 信玄が亡くなり武田太郎が新しい当主となった事と那須が一向宗門徒を退けた事で越後の関東管領上杉謙信にも史実とは違う好機が訪れていた。



 越中、加賀で起きていた一向一揆を退け史実より早く越中と加賀を支配下に置く事が出来た、那須が戦で18000もの大勢の一向門徒を撃退した事で越中、加賀の一揆衆の数が減り管領の軍勢が個別撃破し敵の城を落とし制圧した。



 那須が一向宗を撃退した事により上杉謙信にも幸運が訪れた、これにより上杉家の石高が一気に飛躍する事になる、越後39万石、越中38万石、加賀35万石、計112万石を支配する事になる、戦国期終盤に向かう中上杉家が112万石となる意味はとても大きいと言える。



 有力大名の那須、北条、小田三家以外で100万石を有する大名は毛利と織田であり、毛利が120万石、織田がこの時点で400万石という抜きん出ている、単独では一つも二つも抜きん出た織田信長である。



 石高で言えば戦国期の終盤と言えるこの時期、数十万の石高と数万石単位の領主達の合わせた石高が約600万石程と言える、それらがどこに向かうのか、他家を倒し吸収し又は臣従するか、それとも独自の路線を歩むのかどの家に取っても難しいかじ取りの場面が迫っていた。






 ── 那須烏山城下 ──





 蝦夷から帰還し溜まっていた庶務を熟し、資晴宛の文に返事を認めせっせっと忙しく動き回っていた、そこへ、梅より。



「若様、知っておりますか? 城下の町が店子が多く出来ており、店を勝手に作り賃料を取り、景気が良いとこれまた賃料を上げられる店が何件もあり刃傷沙汰にんじょうざたが起きたようです、番屋で下手人を探している様ですが、相手が判らず困っていると、弟の竹太郎様の元服も近く、他家から多くの方がお越しになります、城下にも行かれるかと思われます、争いに巻き込まれましたら厄介な事になろうかと思われますが!」



「何だと店子だと、誰の許しを得て店を作っているのだ?」



「番屋では店を建てる届出は出ていると、只、建てた者が他の者に貸して賃料を取っていると聞きました!」



「では勝手に建てたのではなく建てた後が問題になっておるのだな?」



「城下に新しい店が出来るのは嬉しいが、出来たら出来たで新しい問題が起きて居るのだな、明日見回りすると致そう、一豊に足軽を連れて来る様に伝えてくれ、20名もおれば良いであろう! あと暇な奴も一緒に連れて来るが良い、仕事を与えねば!!」



 翌日一豊初め最初に向かったのは城下の町を警備する番屋に、城下は大きく発展し町として広がっいてる事から資胤が南町と北町という呼び名でメイン通り左右を分け、番屋も二つ作られていた、城下での届け出や揉め事も司る出先の役所と言った所である。



「その方が番屋頭であるか?」



「はっ、某、菊地甚八と申します、このような所にお越し頂き恐縮であります」



「うむ、では最近出来たと言う店子を貸す店で賃料で刃傷沙汰が起きたと聞いた、先ずはどのような店なのか案内を頼む!」



「はっこちらであります、その通りの左に曲がったところが新しく出来た通りでありまして、そこに7軒もの新しい店が出来ました!」



「店を作る事の届けられたのだな!!」



「はい、その通りであります、届出に不備はありませなんだ」



「ほう新しい店であるな、何々みせの名が『越後屋』『釜屋善吉』『笠足袋しま』『両替屋久兵衛』『茶屋しのぶ』『紙屋千』『印判・彫師』『甘味処吉之』『くじら屋』『菓子屋・華』『しお・さとう・あぶら』『せともの』『酒処・山一』沢山店が出来ているのう、何処までがその賃料でやっている店子じゃ?」



「大店が越後屋でその隣から甘味処までになります、その先は届出本人が建てた店であります」



「刃傷沙汰になった店はどれじゃ?」



「今は店を閉めております、この印判師の店になります」



「では隣の紙屋に聞いて見よう」



「なに? 賃料が二度も上がったのか?」



「はい最初は120文という事で安価でしたので店をお借りしましたが、客入りが良いと見られ150文から200文に、そして先月からは200文になりました、この先これ以上上がりましたら困ると皆で話しておりました、印判師さんの伊能さんは、印判は儲けの少ない仕事で賃料の値上げはもう無理だと、これ以上はお手上げだと大店の越後屋の十兵衛さんに訴えていたのですが聞き入れられず、頭に来た様で仕事道具で切りつけたのです」



「幸い越後屋さんも軽傷で済んだのですが、番屋に飛び込み訴えている間に伊能さんが店を閉めどこかに消えたのです、他人事では済まされないのでなんとかなればと思います」



「うむ大体の事情は判った、賃料が最初120文であったのだな、借りてまだ数ヶ月で二度も値上げされたのだな?」



「はい、借りてより毎月値上がりしております」



「では最初に店を借りた時の証文はあるのか?」



「はい三通あります!」



「三通じゃと? どれ見せて見よ・・・何々これが最初の賃料120文と書かれておる、次は賃料の訂正月150文と書かれておる、そしてこれが三通目の訂正月200文と書かれておる、なんだこりゃ~? 」



「如何思う一豊?」



「これは又都合の良い訂正でありますな、勝手に大家が賃料を訂正しているだけでありますぞ、これでは天井知らずの値となりますぞ!!」



「では儂が良い事を思い付いた、済まんが店子の店主を集めてくれ、借りている者を集めてくれ、それと女将紙を6枚、あ~あと墨と筆を貸してくれ!!」



「良し、皆集まったな、那須資晴である、店子の賃料が上がり困っていると聞いた、これより一筆認める賃料がまた上がる様であればこの紙を見せるが良い、そして文句があるようであれば番屋に訴えでるが良いと越後屋なる大家に言うのじゃ、良いな!」



「では、最初の紙屋賃料についてじゃ、店子紙屋の賃料月100文に訂正する、今後賃料を変更する場合は番屋頭の許可を得る事、○○年○月○○日 那須家花押那須資晴!!」



「これでどうじゃ、訂正には訂正で仕返しするのだ、これで最初より安価な賃料になった、番屋頭の菊地甚八、賃料の値上げ当分許しては行かぬぞ、毎月上げるなど、最初からそうするつもりだったのじゃ、儂の城下町でこのような不埒な事を見過ごしては如何!! この話を町に広めるのだ悪者を懲らしめるのだ、良いな!!」



 越後屋の店子に賃料の訂正して文を書き、最後は甘味処でスフレケーキを食する事に。



「若様、直接越後屋に乗り込まず、これで宜しいのでしょうか?」



「初回だからこれで良いであろう、阿漕な事ではあるが、一応印判師から怪我を負った様だし、それと番屋頭には印判師を探す様に伝えた、彫師が儂の村でも必要なのじゃ、飾り職人の左之助が弟子を育てておるのだが育つまでに彫師は時間を要するようなのじゃ、飾り職人と彫師は同類じゃ、であればと思って探させる事にしたのじゃ!」



「若様も丸くなりましたね、店子の皆様も大変喜んでおりました!!」



「間もなく弟竹太郎の元服じゃ、あまり乱暴な事でもして変な噂が発てば竹太郎に申し訳ない、楽しみであるな!」



 弟の元服を来月と迫る中、蝦夷から那須ナヨロシク、根室のイソシアンを初めかく酋長と大勢の300者アイヌの民が那須に訪れ、資晴達と再会となった、その中に戦で戦った敵将の一人、城代の石井が何故が含まれていた。




信長の横行って、上に行けば行く程目立つようになります、自重が出来ない信長って所でしょうか。

次章「政と大交易」になります。

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