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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
163/331

163 先手

新型コロナで全世界がパニックになりましたが、人類は伝染病との戦いなんですね。


(昨日、読者アクセスが8000を越えました、ここ数日で急に増えましたが、資晴が元服したからでしょうか? 理由って? 嬉しい事なので、お読み頂き大変に感謝申し上げます、拙い内容で申し訳ありません、処女作なのでなんとかお目こぼし、お許しください。)

 




 ── 梵天丸 ──




 幼少時の名前、梵天丸とは、伊達政宗の事である、奥州の王と言っても良い、それ程東北の中で暴れまわり伊達家100万石という異名を築いた戦国期後半の武将である、特に秀吉、家康に臣従する中、常に家を大きくしようと立ち回り、調略を含め一揆を先導するなど、裏から糸を引く策略に長けた武将であり、あと20年早く生まれていれば天下を手中に収めたであろうとされる程語られる伊達政宗である。




「殿、那須より使者が訪れております、如何致しますか」



「何、今は使者に会っている場合では無い、そちが対応せよ!」



「それが殿に会いに来たのでは無いと、梵天丸様の治療で来たと申してます」



「何だと、梵天丸の治療だと、どうして知っているのだ? う・・・良し、通せ!」




 伊達家16代当主 伊達輝宗(てるむね)


「伊達様突然の訪問お許し下さい、某、千本義隆と申します、こちらは医師の幸之助と申します、那須の嫡子資晴様より急ぎ伊達様の元に行き、梵天丸様の治療にあたれとの命を受け参りました、こちらが那須の嫡子資晴様からの文に御座います」



「何だと、では拝見致す・・・・・!?」



「何故那須殿は梵天丸が疱瘡に罹患した事を知っているのだ、誰にも話しておらぬ、使者殿どうしてだ?」



「我らの若様資晴様は以前より優れた医師と疱瘡の治療について日々研鑽をしており、対処の治療法を見出しました、疱瘡はとても危険な病であり命を失う者多く、梵天丸様が罹患しました事をどのような理由で知たのかを私は説明を受けてはおりませぬが、命を救うべく我らを遣わされました、疑義があるかと思われますが、治療をお受け致しますか?」



「今更隠す必要は無い事なのであろうが、既に祈祷しておる、必ず治癒するであろう!」



「伊達様、失礼ではありますが、その様な稚児祈祷などで治癒するなど、まやかし事であり自らの不安を封じ込めても梵天丸様を苦しめるだけで御座います、那須資晴様は必ず祈祷で治すと言うに違いないと私に説明するであろうと申しました、その際は厳しい言葉を使いこう申しました『父親の使命を全うせよ!』と、それでも応じなければ帰還するが良いと!」



「なんと申した! その方我を侮辱しに来たか!」




「お叱りはお受け致しますが、今は梵天丸様の御命が第一で御座います、如何致しますか? 今は床の上に寝かされ一人病と闘っておるのでしょう、医師も恐れる病です、大切な嫡子様を放置で宜しいのですか?」



「では聞くがお主らは怖くないのか、不治の病ぞ、罹患すれば命を失う事がある多々ある病ぞ!」



「ご安心下さい、私も医師の幸之助も介助の侍女2名も既に疱瘡に罹患しない処置を受けておりますので梵天丸様に触れても疱瘡にうつりは致しませぬ」



「なんだと、罹患しないだと・・・では梵天丸を介助出来るのか?」



「勿論です、介助出来るゆえ、遣わされました」



「むむむむ・・・では待っていろ、必要な物はなんだ!」



「寝間着複数、水桶二つ、中に氷を入れて下され、無ければ冷たい井戸の水を、それと厚みのある寝床と身体を拭く布を複数を願い致します、我らは梵天丸様のいる部屋にて寝泊り致します、その手配をお願い致します」



「う・・・判った」



 1571年梵天丸、後の伊達政宗は5才の時に疱瘡に罹患する、快癒するものの右目が疱瘡の痕ひどく視力を失い、後に独眼竜の由来になる、しかし、疱瘡痕がひどく、母親に疎まれ遠ざけられ、その後、弟小次郎を当主にと兄弟にて争う事になり母から毒を盛られるなど、母の命には夜叉が潜んでいると言われた、政宗は母の愛情に飢えた青年期を過ごし、激情の道を歩み始める事になる。




「こちらの部屋になります」



 梵天丸が寝かされている部屋は16畳程の床に蝋燭が1つ灯され、布一枚の上に寝かされ高熱と闘っていた、僅か5才の童に誰も付かず放置されていた。


 急ぎ用意された寝具の上に梵天丸を移し、身体を拭き、新しい寝間着を着せ、対処療法として熱を下げる薬を与え、塩水を与え、頭、首筋、両脇、足首に絞った冷たい布を置き身体に籠った熱を下げだのである。



「どうであるか幸之助」



「はい、これから数日間が一番熱が上がる時かと、なんとか間に合いそうです、命を取り留める事できるかと思われます、体熱との闘いになります」



 疱瘡は高熱との戦いであり急激に40度前後の熱となり身体中の関節痛、頭痛、吐気などに襲われる、また罹患してより体内に抵抗力が備わるまで10日以上を要する悪質なウィルスと言える、発疹が膿み、瘡蓋が取れるまで感染力があるとされ実に厄介な伝染病とされる。


 栄養状態の良くない当時の戦国期の死亡率は発症すると30~50%という説もある。

 回復し完治しても後遺症として、痘痕(色素脱出を伴うへこみ傷)、失明、脳炎、骨髄炎、男性不妊症(閉塞性無精子症)などがあげられる。






 ── 玲子の先手 ──





「本当に洋一さんと資晴さんが入れ替わったのよ、驚いたのは私の方よ、目付きも鋭くなっていて、私に拝礼して感謝していたんだら、玲子様って呼ばれ、様付けよ、洋一さんだって様付けで呼んだ事ないのに軍師玲子様と来たんだから、もう!」



「判りました、信用しますから、もう五回目ですよ、私もこの際だから、玲子様って呼びましょうか?」

 (日頃から下僕の様に尽くしているので様付け位なんでもない洋一)



「やめてよそんなの他の人に聞かれたら私が洋一さんを虐めているように勘違いされるから」

 (勘違いでは無いと洋一の心が反応していた(笑))



「それで資晴に追加で伝える事があるって言いましたけど、追加の話って何を伝えれば?」



「信玄が刺客を放ったでしょう、回避出来たからいいけど、侍女の梅ちゃんが死ぬところだった様だし、やっぱり許せないのよ、だから追加で調略をしておくの」



「えっ、でも武田家って結束力が強い家ですよね、その重臣達に調略なんか厳しい話じゃないですか、使者が訪れたら殺されますよ!」



「確かに武田24将はそう言えるけど、蚊帳の外に置かれた人がいるのよ」



「えっ、そんな人いましたか?」



「信玄って沢山戦をしているけど、ほとんどの戦に参加していない家が一つだけあるの、名前は有名だから、結構有名な武将よ」



「首を捻っているようだから教えてあげるは、蚊帳の外にいる武将はなんと『木曽義昌』よ、結構名前はしられている武将よ」



「なんか聞いた事ありますね、なんでしたっけ?」



「それはね、信玄が亡くなって武田家が徐々に衰退していく中で武田家に離反して信長の調略に乗って、その事で信長が甲斐武田家の侵攻名目を得るきっかけの武将よ、木曽義昌は武田家の親族衆でもあるの、信玄の娘を妻に娶っているの、太郎と勝頼の妹なんだけど、立派な親族衆よ、それが武田家を見限るの!」



「なんで親族衆の木曽が見限るんですか?」



「一説にはそれ程武田家の中であてにされていない、木曽谷の国人領主で石高も15000石程、兵力も500~700程、山間部の地という領主、だけどその場所が魅力的な所だったから信玄は、娘を嫁がせ親族にしたの」



「じゃー力は無いけど、地の利を得る為に娘を嫁がせた訳ですね、兵力も少なそうですし、それで戦に参戦していない訳だ、でもなんで見限るんだろう?」



「それは勝頼よ、信玄が亡くなった後に、戦ばかりやるもんだから、税の取り立てが厳しくなってそのしわ寄せが木曽まで来るの、特に戦に参戦出来ない木曽には重く圧し掛かるのよ」



「木曽は木材の産地で他に、那須と同じく木曽駒っていい馬が沢山いたの、武田騎馬隊の馬ね、小さい家だけど重宝する家として信玄は娘を娶らせたけど、勝頼はお構いなしに重税を求めたと言う訳ね」



「やっと理解出来ましたが、どうやって調略するの?」



「信玄の娘という事は太郎の妹でもあり、三条のお方の娘でもあるの、さらに姉妹は北条家にも嫁いでいるよ、黄梅院(おうばいいん)って覚えている?」



「あれ誰の奥さんでしたっけ?」



「もう、北条氏政の奥さんよ、この人も信玄の娘さん、木曽義昌の奥さんは真理姫、黄梅院の妹さんなの、まだ太郎と三条のお方を使う訳には行かないから、この黄梅院を使って真理姫に近づいて、徐々に木曽義昌に入り込むのよ、これが調略っていう物よ、時間をかけてじっくりコツコツと弱火で煮込むの、そうすると、とろ~りとした美味しいシチューが出来上がるのよ」



「シチューなら毎回僕が作っていますが?」



「なんか余計な事、言わなかった(怒!) 」



「いや、シチューなら作りましょうかと・・・・」



「じゃー今夜はビーフがいいわ、フルーツサンドとビープシチューにしましょう、愛称ぴったりでグー! そんな訳で今の話を伝えるのよ、木曽義昌に今の内に入り込むの、信玄を最後叩く時のカードの一枚に加えるの、刺客などもっての外だから、私を怒らせると更にカードを切るよって位しなくちゃね」






 ── 梵天丸 ──





「梵天丸殿、梵天丸殿聞こえますか、こちらの耳はどうですか?」



「耳は大丈夫そうですね、では片目を閉じて、これは見えますか? こちらは目は見えてますね、では反対の目はどうですか? これは見えますか?・・・・もう一度・・・・」



「ではもう一度、この蝋燭の光は見えますか?」



「光には反応しているようです、では私の顔は見えますか?・・・ではこの光は見えますか?・・・光に反応していますが、視力が弱っているかも知れません・・・ではもう一度、こちらの侍女の顔は見えますか?・・・!?」



「ぼんやり見えまする、部屋が暗いのでぼんやりしか見えませぬ!」



「では少し部屋を明るくしてみましょう」



「では窓を開けましたので先程よりは明るくなっています、ではこの侍女の顔は見えますか?」



「う~見える事は見えますがこっちの目よりは見えませぬ」



「では見える方の目でみると今までと同じに見えますか?」



「いままでと同じに見えます」



「判りました、今日の所はこれまでと致しましょう、明日もう一度お確かめ致しましょう」



 梵天丸の後遺症は右目の瞼の皮膚にあばたが残り、黒目の中に小さい白斑があり、それが視力障害となっていた、光には反応するが物を見るにはぼやけてみえる症状が後遺症として残った、史実では失明とされているが、それよりは少しだけ改善されたと言って良い、他には特に後遺症は見受けられなかった。



「では梵天丸様、父上に報告して参りますのでまだ部屋からはお出になってはなりませぬ、侍女と一緒にいて下さい」



「伊達様以上が梵天丸様の状態となります、既に病魔から回復され日常の行いに戻れます、今も元気に部屋にて侍女と遊んでおります、面会をしても大丈夫で御座います」



「此度の件、感謝しても感謝しきれぬ、右目の瞼にあばたが残り、視力がやや不自由であると言うが戦国の男子である、箔が付いたという位じゃ、それにしてもなんとお礼を申して良いか、今夜は皆様を労いたい」



「ありがとうございます、宜しければ炊事場をお借りしたいのですが、それと時告げ鳥の卵は手に入りますでしょうか?」



「卵であれば手に入りますが、何をなさるのでしょうか?」



「この日の為に侍女が那須にて流行りの美味しい菓子を御作り致します、梵天丸様もきっと大喜び致す新しい菓子になります」



「それは楽しみだ、是非お願いしたい」



 この日梵天丸の床上げとなり快癒祝いが行われた、その際に侍女が作った『那須プリン』が振舞われた。



「これは・・・これは美味であります、どうだ梵天丸皆様にお礼を言いなさい、お前の為に作って頂けたのじゃ!」



「ありがとうございます、本当に嬉しいです、皆様のお陰です、そしてなによりこの菓子は最高です」



「よう御座いました、では後ほど侍女より賄い方に作り方を教えておきますので、これからは父上様と母上様のいう事を良くお聞きして頑張った時に褒美として作って頂き食して下さい、身体に大変良い菓子になります」



「那須の皆様はこのプリンなる菓子を食されるのですかな」



「はい、那須の城下町にも甘味処の店があり、領民も好んで食しております、卵には身体を維持する力が詰まっているそうです、帝に仕えておりました公家殿が安心して食するようにと卵を広めております、そのひと役に『那須プリン』を担っております」



「那須資晴殿の元服式は見事で御座いました、その席での饗応では珍しい食を沢山頂き、食べ過ぎてしまい、この那須プリンを膳に残していたのだが、膳ごともって行かれてしまい、あの時食する事が出来なかったのだ、先に食して置けば良かった、あっはははは」



「あっははは、それは残念で御座いました、伊達様の所ではみかんの時期かと思われますが、宜しければもう一品明日にでも御作りできる物があります、こちらも絶品な菓子になります、那須プリンと双極の菓子があります、その菓子も賄い方に作り方をお教え出来ますのでご用意致しましょう」



「なんとそれはありがたい、なにゆえ那須にはその様な菓子あるのですか?」



「はい、今は戦国の世です、どの家も戦支度に忙しく大変な世です、それは那須でも同じだったのですが、昔の那須はとても困窮しており、鉄砲も買えずこまっておりました、そこで若様の資晴様が、那須には鉄砲はいらん、それよりも砂糖を沢山買って身体を元気にするのだと言って麦菓子を作られたのです、それが源となり今でも食に対して力を入れる家になったのです、菓子もその一例です」



「土産で頂いたあの菓子ですな、あれなどあっという間に奥方と侍女にとられてしまった」



「砂糖と麦粉、油を少々頂ければ簡単に御作り出来ます、那須では誰でも菓子屋で購入できる人気の菓子になっております、騎馬の馬まで欲しがります」



 伊達家と那須ではお互い距離も離れており、行き来する誼は特に無かった、しかし、那須に蘆名が臣従した事で、資晴の元服式に伊達輝宗は参加していたのである。



「那須のお家は北条家と小田家と深い誼を通じておると聞いております、日頃はどの様な誼を行っているのですか?」



「主に交易を主としております、これからは益々大きく日ノ本全体と交易すると若様は言っております」



「全体とはどのような意味ですか?」



「那須の家が朝鮮、明国側の海を使い、蝦夷から陸沿いの各国の港にそして九州までとなります、小田家と北条家は反対側の常陸側の外洋の陸沿い国々と琉球までを担います、そうすれば日ノ本全てと交易が行える計画となります」



「なんと本当に日ノ本全てと言う意味でしたか、それは壮大であります、蝦夷から琉球までとは恐れ入りました、お聞きして良いのかどうか判りませぬが今三家の兵力は如何ほどありますか?」



「やはり関心はありますか、三家の軍勢は約12万となります」



「12万・・・・ですか、途方もない数字です」



「伊達様の家も大きい家で御座います、これを機に誼を通じ三家の中に入る事も出来ます、三家の誼は、交易を主としておりますが、共に争わずというのが第一義になります、そして第二が共に豊かにで御座います」



「なんと・・・その様な誼を聞いた事ありませぬ、元服の際に北条の姫君との話がありましたが、三家の盟主は北条殿で宜しいのでしょうか?」



「この三家を結びましたのは若様の資晴様です、盟主と言ういい方であれば間違いなく那須資晴様です」



「・・・・・・・」





先手の意味が判明でしょうか?

次章「一向総起になります。

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