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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
129/331

129 綱引き

秋と言えば運動会でしょうか、以前は私の住んでいる地域でも町内対抗の運動会がありました。

 




 この秋、極秘三国同盟の三家石高は以下の通りとなった。

 三国全てで新しい田植えにより石高が大幅に増えた。


 那須家   81万国(佐野家、蘆名家含まず)

 北条家  170万国(相模25万、伊豆9万、北条側駿河8万、武蔵85万、上野40万         ※西上野含まず)他諸島3万、今川の駿河12万、遠江26万含まず。

 小田家  118万国(常陸48万、旧結城領含、上総42万、下総20万、安房8万)

 合 計  369万石となる。


 三家の領地にはまだまだ開墾すれば田が出来る土地が多くあり幾らでも大きく伸びる可能性がある。


 10月に入り北条家より文が那須、小田家に届けられた。



「父上お呼びですか?」



「北条家より文が届いた、読むが良い」



「なんと幻庵様が来られるのですか、確かに以前那須に何れ行くと言われておりました、その際に三家にてこの那須にて談合を行いたいとの事ですね、11月中旬と書かれております」



「幻庵殿はお年は幾つであろうか? 」



「確か60を超えております」



「那須にお越し下されるのは問題無いが、此方からお伺う事も出来るが大丈夫であろうか?」



「幻庵様は見るからに健康そのものです、確か若い侍女を得たとか言っておりました」



「なんと羨ましいのう!」



「えっ、父上も若い侍女が欲しいと?」



「いや冗談だ、何でも無い」



「では受け入れの準備を致すので手配する事があればお主もする様に」





 ── 秋祭り ──




 例年の豊穣祭りを今年は一新して秋祭りが行われた。


 秋祭りを10月〇〇日~〇〇日に行う、とし領内に通達。

 各村又は城下町等で6名の力自慢を1組作り他の組と綱を引く大会を行う参加は男女自由である。 例年と同じ相撲大会を行う。(元服前の子供の相撲大会も行う)

 弓の競技大会。 騎馬の技競い。 料理の品評会を行う。(男女問わず、工夫した料理を作り那須奥方衆にて品評を行う)



 祭り会場には芋粥、肉の串焼き、アジの干物焼き、焼き芋、栗おこわ、大学芋、焼きとうもろこし、きな粉もち、麦菓子、べっ甲あめ、氷菓子、濁酒、澄酒、甘酒、麦茶、温かい牛乳、多数の豪華露天販売所を多数用意した。


 当日は高櫓を設置し、烏山太鼓の勇壮な舞で開始された。


 秋祭りには桟敷席を用意し、祭りへ大きく寄付した者、招待客など観覧出来るようにし佐野家、蘆名家からも多くの者を招待した。


 初めて行った綱引き大会では申し込みした組数は300を超えるという人気ぶり、佐野家、蘆名家にも力自慢を用意させ、予選免除させ決勝ランドに特別枠で出場させた、相撲大会も大人と子供の土俵を二つ作り自由参加の大会、弓の競技は例年と同じ扇当て、同じく1000名以上が参加、騎馬の技競いでは左右にジグザク走行、障害物を飛び越える等騎手の技競いとオリジナル技の披露で騎馬隊の隊長たちによる投票で上位八組を表彰する技競いとし初日と二日に予選を行わせ最終日に弓と綱引きは決勝戦を行い大盛り上がりとなった。



「佐野殿如何でしょうか、楽しまれておりますか?」



「お~嫡男殿、この度はご招待ありがとうございました、先程から皆様を探しておられたのですが人が多く難儀しておりました、それにしても盛況で御座いますな、この様な祭り初めてで御座います、当家の者達も勝手に散ってしまい楽しんでいる様子です」



「当家では夏のお盆とこの秋祭りを楽しみに領民こぞって参加しております、露店も多数あり楽しい楽しいと申しておりまして年々種類が増えております」



「この祭りは領民と侍達が一体に成れますな、見事な政の一つです、来年は佐野でも行って見ようと思います」



「それは良い事です、それと来年の田植えでは那須で行っている新しい田植え方法を教えます、収穫が3割ほど増えると思われます、それと新しい芋と他の作物も植えてみて下され、飢饉にも強く保存が効きますので兵糧にも使えます、佐野殿の力を支える作物となりますぞ」



「忝い、我ら佐野は那須と誼を通じて大成功と言えます、当家から那須殿にお返しが出来ず申し訳御座りません」



「何を言われますか、隣通し仲良くなれるなどこれ程戦国の世に取って大きい収穫などありませぬ、戦を行えばこの様な祭りも出来ませぬ、それが出来るという事は佐野殿から大きい恩恵を受けているという事です、今宵の夕餉では城にて父上が何やら美味しい物を用意している様です、楽しみにしていて下され」



「忝い、私などに配慮頂きありがとうございます」



「実は私の供回りとはぐれてしまい、探していた処だったのです、何処をどう探して良いか判らずでして」


「それなら凡そ澄酒か肉の串焼き辺りにいるかと思われます、考えている事は侍も農民も同じです(笑)」



「では探して見つけ次第しかりつけねばなりませぬ、当主である某を放置し楽しんでいるなど(笑)、某も仲間に入れろとしかりつけてやらねばなりませぬ、あっはははは」



「では佐野殿また夕餉でお会いしましょう」



 高櫓の周りでは豊穣を祝う獅子舞躍り最後に巫女達による豊穣の舞が披露され初日を終えた。


 夕餉では佐野殿と蘆名家の重臣達に海の幸と最後に『那須プリン』が披露され、その美味しさに舌鼓する佐野殿達であった。



「これは時告げ鳥の卵と甘い液体は砂糖を溶かし美味しく頂けるように作られたのです、菓子の名前は私の母上が『那須プリン』と名付けました」



「この様な美味なる菓子があったとは、口に入れますとあっという間に溶けてしまい、美味しさだけが口に残ります、実に名残惜しい菓子です」



「母上の采配にてこの『那須プリン』を広めるべく時告げ鳥の飼育を増やしている所です、卵には健康に良い栄養が多くあるとの事です、このプリンを食せば時告げ鳥への忌避感が和らぎ広がると考えます、多くの者に丈夫な身体になって頂けるようにしている所です」



「なんとその様な考えで取り組まれているのですか、驚きました」



「那須殿教えて頂きたい、那須のお家ではこの様な政は昔から行っていたのですか?」



「我らの那須は数年前まで御存知の通り大変に広い領地があっても5万石程度の実に貧しい家でした、質素であり慎ましいと言えば聞こえが良いですが、単に困窮しており何も出来なかった家なのです」



「この様に豊かになったのはこの正太郎のお陰であります、新しい田植え、新種の作物、鉄砲を買わずに砂糖を買い麦菓子を作り、幸い戦に勝ち領地が広がりそれらをより推し進め食に困らなくなり、富を領民にも分け気付けばこの様になっておりました」



「なんと、では嫡子殿がこの富を作られたと!」



「佐野殿決して私だけの力ではありませぬ、父上が私の後ろ盾となり、5才の童でありました某に村を幾つか頂き政を行えるようにして頂いたのです、小さきうちから政を学び、何が必要なのかを学んだのです」



「必要な物ですか? 必要な物とは何でしょうか?」



「村とは農民が生活を営む地であり我ら侍の食する米を作る最前線になります、5才の目で村に触れますと、如何に貧しい暮らしの中で米を作り営んでいるかを理解しました、この村が豊かになる事が那須の家が豊かになる近道であると考え田植え等を改善したのです」



 蘆名の重臣達も正太郎の話に驚き、我らは一体何を行って来たのであろうか? 政をしていたようで何もしていなかった、村の者などの生活を考えた事も無かったと、それが僅か5才の時にそれに気づき改革を行って来た正太郎という存在に敬服の念しかなかった。



「この佐野目が覚めたように感じ入りました、政とは一番身近な所にあるのですね、那須殿この度祭りにご招待頂き本当に感謝致します、佐野が進む道が見えた様に思われます」



「そうで御座いますか、それは良かったです、蘆名の皆様もまだ綱引きが残っておりますぞ、那須の農民は強いですよ、明日もたらふく召し上がって力を付け、勝ち上がって下され、佐野殿も油断大敵で御座いますぞ」



「父上私の組も決勝戦に出ます、恐ろしく力が強い者が出ますので優勝は譲りませんぞ!」



「それは面白い、儂も1組用意した、見ものであるな、楽しみにしておるぞ」



 うーちょっとこれではメンバー変更しないと農民に負けるかも知れんと考える佐野と蘆名の重臣達。


 相撲大会では蘆名で五人抜きした者が誕生した、残念であるが佐野家では一人もいなかった。

 騎馬の競技では見事な技を披露した5名が表彰され、どれも皆騎馬隊の者達であった。

 弓競技の扇の的当ては昨年より予選を勝ち抜いた者がなんと70名もいたのである、この一年間弓の鍛錬を続け、多くの者が勝ち抜いた、70名による決勝戦では、100間の距離から120間の距離に的を移動し行った。


 第一射でその120間の的を射当てた者が3名おり三名を勝者として称えた、その者達は全て弓騎馬隊の者達であり、俸禄を昇給する事にした。


 そして誰もが注目した綱引きである、綱引きは農民と侍達の注目の一戦となり農民チームが侍チームと戦う時は数千の観衆が農民を応援し、最高の盛り上がりとなった。


 馬頭村対烏山村の農民対決は中々決着がつかず途中水入りが入った、えっさ、ほいっさ、よいっしょ、こらっさ、えっさ、よいしょ、こらっさ、と大きい声で応援する者、一緒に身体に力をいれて見る者、決着は烏山村が勝利し、決勝に残った。


 最後の決勝リーグでは、烏山村、喜連川村、福原村、佐久山村の農村と当主推薦組、正太郎組、佐野組、蘆名組の8組で決勝が行われる事になった。



「これより順々決勝を行う、蘆名対喜連川村、配置せよ!」 お~!


「両者一本勝負、開始!」


 蘆名「引け引け引くのじゃ~、農民に負けるな~」


 喜連川「よいしょ~、よいしょ~、よいしょ~、よいしょ~」


 蘆名「おいおい、なんだなんだ、全然引けねぇー、本当に同じ人数なのか、相手は女子もいるのに、ダメだダメだ、負けてしまう」


「勝負あった、そこまで、勝者喜連川!」


「やったぞ、おらたち勝ったぞ! 侍に勝ったぞ~! 」

 

 観衆から大歓声が起こる。



「次、正太郎組隊福原組、配置に付け!」


 観衆から驚きの声が聞こえる。


「お~見たか、あのでかい黒い奴を二人もおるぞ、なんだあのでかさ、福原村の連中びびっちまっているぞ!」



 一豊が選んだ人選は先頭アイン、ウイン、武田太郎、佐竹義重、忠義、最後尾に大将の山内一豊であった。


 福原村の選手は目の前に黒い巨人しか見えず。



「やべーぞ、こんなでけい巨人見た事もねー、村の黒べコと同じ色でねぇーか、殺されっかもしれねぇー、おら死にたくねぇー!」


 と叫び大騒ぎであった。



「ふっふふっふふふ、この一豊の作戦勝ちである既に相手はびびっておる、勝は見えたり、我が采配に死角なしである!」



 調子に乗った最後尾の一豊は戦支度の鎧兜を身に着けていた。


 桟敷席には正太郎組が優勝するとの前評判から高林から三条のお方、嶺松院他大勢の侍女衆、アイン、ウインの奥方、福と万それに正太郎の母、藤も楽しみに観戦していた。



「では両者一本勝負である、開始!」


 一豊「引けひけー、引かんかー、どんどん引けー、そうだそうだもっとひけー、引くのじゃー!」


 スタートすると福原村はびびって力が入らず綱が半分ほど一豊側に引かれ、勝負あったかと思われた。


 福原村「びびってねぇーでいくぞ! えっさ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ!」



「嘘だろ~お~見てみろ福原村が戻し始めたぞ、すげえ、こりょあ~、判らんぞ!」


 一方桟敷席から奇声が飛び交う。


「きゃー太郎様~(嶺松院)、太郎遠慮せず引くのじゃ(三条のお方)いいぞ~一豊様(奥方まつ)、力を入れろ腰を下ろせ馬鹿者(福と万)、きゃ~きゃ~♪」



 一豊「敵が引き始めたぞ、もっとひけ~、アイン、ウイン引くのじゃ引けこの馬鹿野郎~」



 徐々に力を発揮した福原村、ドンドン綱が引かれ、最後は一豊が鎧兜を着けた立派な武将が引きずられ転がされていた、その頓珍漢な威風にこの日最大の笑いが、大爆笑が巻き起こった!



「勝負あった、そこまで、勝者福原村!」


 大歓声で拍手喝采であった。


 天を見上げた正太郎(一豊に任せたのが敗因かも知れん、なんで鎧兜を身に付けたのだ)

 一斉に桟敷席は静まり帰り、館に帰ったら説教しないと気が治まらぬ(嶺松院、福と万)

(一豊様を慰めてあげねば、このまつがいい子いい子してあげねば)



「次、佐野組対烏山村、配置せよ。」



 佐野「農民が思ったより強いぞ気合いを入れよ、負けたらどうなるか判っておろうな!」


 と脅す当主。


 烏山村「よし遠慮はいらねぇーおらたちの力見せてあげるべ!」 お~。



「両者よいな、開始!」



 烏山村「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ。」



 佐野「・・・・・・・・」



「勝負そこまで、勝者烏山!」 お~!


 なんだなんだ応援する前にあっさり佐野が負けたぞ、何しに来たんだ、それとも烏山が強すぎたのか?


 そう、烏山の引きが強く、掛け声を出す前にあっさり綱が引かれ声も出せなかったのである。



「次、当主推薦組対佐久山村、配置せよ!」



「この時の為に儂らは何日も前から隠れて調練したのよ、ふっふっふっー、間違いなく勝つであろう、見ておれ正太郎これが綱引きという物じゃ」



 この日の為に誰にも悟られず隠れて練習をしていた当主組、時には牛を相手に、大木に綱を巻き、大岩に綱を巻き引いて練習をしていた当主組である。



 この日の為に佐久山村では戦略が練られていた。


「どうやら綱を引く戦のようじゃ、村の者何か良い知恵は無いか? そうだ木こりを使うべ、木こりは木を切って綱を操り木を山から下ろすべ、綱にはめっぽう強いのでねえーか? お~流石権蔵どんだ、木こりだ木こりにやってもらうべ」


 という事になり、木こり衆を集めた佐久山村である。



「両者、配置せよ、まだまだ引いてはならん、よし、開始!」



 当主組「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!」



 佐久山木こり衆「とんとんと~とんとんと~(与作は木を切る)とんとんと~とんとんと~」



「勝負そこまで、勝者当主組!」



 なんだあのとんとんと~って、あれじゃーだめだべ、あんなのんびりでよく決勝まで来たもんだ、与作って誰だよ? と騒ぐ観衆達であった。


 その後、準決勝、喜連川村対福原村=勝者福原村  烏山村対当主組=勝者当主組


 そしていよいよ決勝戦となる。



「これより決勝を行う、福原村対当主組、配置せよ!」



「両者これが最後の戦いとなる、用意は良いな、勝負開始!」



 烏山村「よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ、よいしょ。」



 当主組「そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!、そうれ、そうれ、そうれ、そうれ!」



 お~烏山が勝っているぞ、行け行け農民の力を見せてやれ~、からすからすからすからす~♪



 「おのれ~こっちは、勝てば昇給じゃ、昇給、昇給、昇給、昇給、昇給、昇給~♪」



 観客からも負けるな農民~、生活がかかっているのじゃ、からす、からす、昇給、昇給、からす、昇給~ もうめちゃくちゃな歓声が飛び交う決勝の綱引き!



「勝負そこまで、勝者・・・」 



「馬鹿野郎! 聞こえんぞ審判でかい声で言え!」



「勝者・・『からす山村!』 勝者烏山村!」



「わ~わ~農民が勝ったぞ! 農民の勝ちだ!」



 万歳!~万歳! 万歳!~万歳! 万歳!~万歳! 万歳!~万歳! 数千の観衆が抱き合い喜び合う綱引きの決勝戦、大勢の侍達も拍手で勝者、烏山村の選手を讃えていた。




綱引きって見てる方も楽しい競技です、農民強しでした。

次章「幻庵が来た」になります。

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