攻撃力9999の呪われたグローブは最強です ~中二病の邪龍と無双するダンジョンブレイカー~【試し読み版】
試し読み版を作ってみました。
ノリが合ったらイッキ読み版も是非ご一読ください。
『 デロデロデロデロデーデン♬
じゃりゅうのグローブには のろいが
かけられていた!
※このそうびは はずせない 』
頭の中に流れてきた不吉なBGMと、メッセージボイス。
この日から、良くも悪くもユウマの人生は大きく変わることとなる。
◎ ◎ ◎ ◎
ダンジョンを攻略することを生業とする者をダンジョン攻略者と呼ぶ。
最底辺ブレイカーの高坂ユウマはいま、生きるか死ぬかの瀬戸際に立っていた。
長年の付き合いであるブレイカーの先輩に誘われて、ここで成り上がるのだと挑戦した大規模ダンジョン攻略。
途中までは、それはそれは順調だった。
大型のモンスターを20匹以上も討伐した。
このままダンジョンをブレイクすれば、その貢献度からブレイカーランクもきっと上がる。
その予定だった、ハズなのに。
ダンジョン最奥の大空洞に、突如現れた強力なボスモンスター『黒い一つ目巨人』にチームは潰走。
先輩にも見捨てられ、崩れた床からダンジョンの下層まで落ちたユウマは、独りでノワールサイクロプスと対峙していた。
――グオオオオォォォォォォォ
ざっくり8mはあろうかというノワールサイクロプスが雄叫びを上げる。
バリトンボイスがダンジョン内の空気を震わせた。
ユウマの身体にも空気の振動が伝わってくる。
(ドームまで有名バンドのコンサートを聴きにいったときと同じだな)
絶体絶命の状況だと言うのに、ユウマの頭はなんだか他人事のようにスッキリしていた。
ノワールサイクロプスが、その大きな腕を振り上げた。
拳の大きさは約2メートル。ユウマの身長172センチメートルより余裕でデカい。
その拳を一発でも喰らったなら、十中八九、ユウマはこの世とお別れすることになる。
ユウマは拳を向けられる前に、ノワールサイクロプスに向かって大剣を投げつけた。
今日の大規模ダンジョンを攻略するために、大枚を叩いて買った虎の子だの武器だ。
よくよく考えてみれば、もはや武器など持っていても無意味である。
相手の身長の1/8も無いクレイモアなど、本来の大剣の役割を果たせない。
ちょっと斬り傷をつけたところで、怒ったノワールサイクロプスに殴り殺される未来しか見えない。
回転しながら飛んできたクレイモアを、ノワールサイクロプスは虫を払うかのように軽々と跳ねのける。
唯一の武器を手放したユウマは……、踵を返して一目散に逃げだした。
全速力で、ただただダンジョンを走り回った。
時には石につまづき、転がりながらも広いダンジョンを逃げた。
それ以外に選択肢は無い。
なんとか上に戻る道を探して、ダンジョンから脱出する。
それだけがユウマの助かる道なのだ。
ノワールサイクロプスは、機敏とは言えない動きで、さりとてその巨体を活かした大きな歩幅で、ドスン、ドスンと大きな足音を立てながらユウマを追ってくる。
逃げるユウマ。
大股で追うノワールサイクロプス。
〔ち……ら……し……か?〕
突然、必死で逃げているユウマの頭にびっくりするくらいのイケボが響いた。
ユウマはいやいや、と思い直す。
(そんなはずはない。そもそも「ちらしか?」ってなんだよ? 『ちらし』か『にぎり』かってことなら断然『にぎり寿司派』だし、『チラシ』か『フライヤー』かってことなら、ぶっちゃけどっちだっていい。いや、だからそれもなんの話だ! こんな状況で俺は脳みそは余裕なのか? 余裕をかましているのか!?)
〔ちからがほしいか?〕
幻聴を払い除けようと頭を振るユウマの頭に、またしても謎のイケボが響く。
今度ははっきりと聞こえた――力が欲しいか? と。
「ちからって、力? パワーのこと? そんなもの欲しいに決まってんじゃん! 見りゃ分かんだろ!!」
いまユウマが置かれている状況は、控えめに言っても絶体絶命というやつだ。
すがれるものはワラにだって、ぺんぺん草にだってすがりたいに決まっている。
(本当に力をくれるのなら、もう幻聴でも何でも良い)
ユウマは走りながら脳内に響く声と会話する。
〔ならば、我と契約せよ〕
「け、契約!? なんの? って確認してる場合じゃねぇか。 分かった! する! 契約でも何でもするから! マジで助けて!!」
〔我は悪夢の竜帝、ここに契約は成立した〕
突如、ユウマの目の前に『真っ黒な闇』のようなものが現れ、左右の拳に覆いかぶさった。
「なに? なんなの、この黒いヤツ!?」
〔契約者よ叫べ! 究極を超えた拳と!!〕
「え!? ウルトラなに? もう一回!!」
〔究極を超えた拳だ!!!〕
「なんだそれ!? めちゃくちゃダサいな!」
〔ダサくない! 叫べ!!〕
「わ、わかったって。ウ……、ウルトラ、アルティメット、パンチ」
〔そのまま拳をヤツの方に突き出せ!!〕
「こ、このまま!? パンチするの!? 絶対届かないよ!?」
〔いいから、さっさと言う通りにしろ〕
「ええい! もうなるようになれ!! ウルトラアルティメットパーンチ!!」
ユウマは後ろを振り向き、迫ってくるノワールサイクロプスに向かって拳を突き出した。
当然だが、圧倒的にリーチが足りない。
その拳は誰がどう見ても、相手に全く届いていなかった。
しかし、突き出した拳の先。
黒いサイクロプスの胸から腹にかけて、丸くて大きな風穴があいていた。
それはもう綺麗な楕円の穴だった。
その穴は拳の形をしていた。
――グ、グオォ?
ノワールサイクロプスが戸惑いの声をあげている。
なぜ自分の胴に風穴が空いているのか、全く理解出来ていない。
気がついたら身体ごと臓器をゴッソリ持っていかれていたのだから、それは混乱もするだろう。
いかにモンスターとはいえ、そんな状態で生きていられるはずもなく、ズゥゥゥゥンと大きな音を立ててダンジョンの地面へと倒れこんだ。
「え? 死んだ? こいつ死んだの? 俺、帰れるってこと?」
ノワールサイクロプスの身体が、足先からサラサラと消えていく。
「おおおおぉぉぉぉっしゃああああぁぁぁぁ、おらあああぁぁぁぁ」
ユウマは諸手を挙げて、雄叫びも上げた。
そのとき、ユウマの視界に入ってきたものは、いつの間にか右手と左手に装着されていたグローブだった。
さっきまで真っ黒な闇みたいだった《《なにか》》が、グローブへと変貌していたのだ。
ユウマの手を包んでいたのは、レザーのオープンフィンガーグローブ。
そこまではいい。ちょっと合わせる装備は選びそうだが、まあいい。
問題はデザインだ。
手の甲の部分に燦然と輝く『6つのメタルの突起』、修学旅行生がお土産で買いそうな『ドクロと龍をあしらったデザイン』、手首には『無駄にぐるぐる巻かれたチェーン』……。
「くっそダセェ! 中二かよ! 俺もう28だぞ!!」
この窮地を救ってくれたことには感謝しているが、これ以上このグローブをはめていると蕁麻疹が出そうだ。
だが、グローブの外し方が分からない。
手首にはチェーンが巻かれていて緩めるところがない。
ユウマがどんなに強く引っ張ってもグローブはピクリともしなかった。
「え? どうやって外すんだ、これ」
『 デロデロデロデロデーデン♬
じゃりゅうのグローブには のろいが
かけられていた!
※このそうびは はずせない 』
頭の中に直接響く不吉なBGMと、メッセージボイス。
「はっ!? のろい? 外せない!? ウソだろ!!」
呪われたダンジョン装備なんて聞いたことがない。
ユウマはなんとかしてグローブを外そうとするが、むしろチェーンの締まりがキツくなっている気がする。
〔だから外せないって。無理するな〕
またしても、頭の中に直接イケボが話し掛けてくる。
「おまっ、ふざけんな! こんな中二病こじらせたデザインのグローブをつけたまま生活しろってのか? ムリムリムリムリムリムリムリムリムリ」
〔バカだな。よく見ろ、カッコいいじゃないか〕
「てめぇ、センス壊滅してんのか! ってか邪龍のグローブってどういうことだよ。お前ナイトメアなんちゃらじゃなかったのかよ!?」
〔我が名は悪夢の竜帝。邪龍は種族だ〕
「こいつ、名前も中二病こじらせてたーーーー!!!! それ、絶対自称だよな! お前が自分でつけた名前だよな!?」
ユウマは頭を抱えてダンジョンの床を転げまわった。
(いったい、どうしてこんなことになった? 俺はどこで選択を間違えた!?)
崩壊が始まったダンジョンの中で、ユウマは大規模ダンジョンに挑むと決めた自分を呪った。
【5/8更新】
他サイトで先行配信していた連載版をなろうでもスタートしました。
「攻撃力9999の呪われたグローブは最強です ~中二病の邪龍とダンジョン無双 猫耳カチューシャのロリっ娘ポーターを添えて~」
⇒ https://ncode.syosetu.com/n9057hp/
最後までお読み頂きありがとうございました。
試し読み版『呪われた装備は最強で最悪だ ~SSS級ダンジョンブレイカーは中二病ファッションから解放されたい~』はいかがでしたでしょうか?
とても楽しく書けた作品ですので、是非とも皆様のご感想をお聞かせください。
中編イッキ読み版もよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n7983hn/
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