97 魔法対決、剣技対決
オレはこの目を見たことがある。
前の人生でオレを睨みつけたポルクスの目には、憎しみはあってもこれ程鋭い暗殺者のような目は無かった。
この目は……暗殺者レイブンの目だ。
オレが前の人生で何度か戦った相手、それが暗殺者レイブンだ。
前の人生でオレに恨みを持つやつは多かった。
それだけオレは生きるために多くのやつらを犠牲にしてきたからだ。
そんな犠牲者の遺族がオレへの恨みを晴らして欲しいと送り込んできたのが、レイブンと呼ばれる暗殺者だった。
レイブンは強く、オレは何度となく死線をさまよった。
今のポルクシアの目はまるでそのレイブンのような鋭い眼光だった。
「クソッ! これも避けるとはなァ」
ポルクシアはオレのフェイントすらも見破り、オトリのファイヤーボールに突っ込みながら氷の魔法で無効化し、もう一つのサンダーボルトを弾き飛ばした。
「同時に別属性の魔法を両手か、やるね! でもっ」
ポルクシアが地面を揺らしてきた。
クラックの魔法だ。
オレは脚を地面に取られ、転倒してしまった。
「もらったよ!」
「クソッ!!」
オレはポルクシアの足元に氷を貼った。
「な!?」
「もらったぜェ!!」
今まで足元を気にして動いていたポルクシアが勝利を確信したところで油断したようだ。
オレの貼った氷の床はポルクシアの足を滑らせた。
その様子を遠くで見ていた清掃員が一言呟いた。
「だから最後まで慢心するなと言ったのに……修行のやり直しだな」
清掃員の存在に気が付いたのは、オレ以外はどうやらシリウス爺さんだけだったようだ。
「それまでぇっ!! 時間切れぢゃ」
シリウス爺さんの大声でオレとポルクシアはお互いの胸の前に突き立てた魔法のエネルギーを止めたまま動けなかった。
「これ以上やったら本当に殺し合いになりかねんわい……二人とも末恐ろしい魔力ぢゃったわ」
結局オレとポルクシアの魔法模擬戦は引き分けに終わった。
「次は少し休んだら……体力試験の実技だ。各自、体調を取り戻しておくように」
オレとポルクシアはお互い睨み合ったまま、ニヤッと笑った。
「まさかこれほどとはね、僕がこれほど苦戦するとは思わなかったよ」
「テメェこそ、オレとあれだけ戦えるとはなァ。ビックリしたぜ」
そんなオレ達を二人の女の子が怒った表情で見ていた。
「お兄様! 何バカやってるんですか!?」
「ポル……無茶しないでよね」
「ゲッ! アルヘナァ」
「ス……スピカッ……ゴメン」
オレ達は四人で顔を合わせると全員で笑い出した。
「もう、お兄様は無理なさらないで下さい」
「ポルも興奮すると目の前見えなくなるんだから……もうちょっと落ち着いてね」
「悪かったよォ……」
「う、うん。気をつけるよ」
オレ達は他愛のない話をしていた。
そしてアルヘナが立ち上がっていきなり宣言した。
「決めました! 私。二年後に皇国学習院に入学しますわ!」
「アルヘナ……マジかよォ」
「もうそうなると、アルヘナさんがワタシの後輩になるのね」
アルヘナの目が燃えていた。
こうなると止められないのがコイツの性格だ。
そしてそんな話をしているうちに休憩時間が終わった。
「この時間の試験は体力の実技試験だ。最初は基礎体力の測定、その後は各自木剣を使った実戦形式の戦闘だ」
オレ達は動きやすい服装に着替え、体力測定から始めた。
体力測定はもやしっ子の多い貴族連中のバカガキ共はひいひい言っていたが、オレもスピカもポルクシアも余裕で合格だった。
「それでは剣技対決を始める。双方、剣を構え」
オレは木剣を構え、目の前の相手を睨みつけた。
「まさか、またテメェと戦うことになるとはなァ」
「まるで狙ったかのような組み合わせだね!」
オレの剣技対決の相手はポルクシアだった。
どうせあのシリウス爺さんが面白がってこの組み合わせにしたのは間違いない。
だが、オレはこの組み合わせに感謝した。




