92 三人の天才達
国語の試験が始まった。
はっきりいってこの国語の試験が特待生枠の足切りのために存在するといっていい。
この国の貧乏人は文字が読めない奴が大半だ。
文字を読めるのは貴族かその部下、あるいは教会関係者くらいのものだ。
一般の民衆は本どころか文字を読む習慣もそうはない。
算学は金貨や銀貨を数えるために文字が読めなくても覚えるやつもいるが、国語となるとそうはいかない。
国語の問題に出てくるのは、有名な作家の書いた伝記や戦記。そして晒上げにされた貴族同士の恋を伝えるための手紙などだ。
オレはベレニケに試験に出てくる一通りの本や文学、伝記に戦記等を習ったので、この試験も余裕だった。
前の時間にポルクシアやスピカを笑っていた貴族のバカガキ共はこの試験で相当苦労していたようだ。
そしてスピカとポルクシアもやはりオレと同じように余裕で試験を解いていた。
ポルクシアは前の人生のことを覚えているとしたら余裕で合格できるだろうし、スピカはシリウス男爵の爺さんがたくさんの本を持っているなら文学を覚えるだけの地頭があるので彼女も問題ないだろう。
余裕だったのかスピカは試験が終わった後、答案用紙の上で居眠りをして怒られていた。
そして国語の試験が終わり、昼食の時間になった。
「カストリア様ー! 一緒に食堂に行きましょう」
ベレニケがベタベタしてきた。
少し鬱陶しいが、勉強を教えてもらった手前、邪険にあつかうわけにもいかない。
「あ、あァ。じゃァ行くかァ」
「お、そこにおるのはベレニケちゃんぢゃないか」
「シリウス様。お昼ですか」
どうやらスピカやポルクシア達も昼食で食堂に行くようだ。
「どうせなら一緒に食わんか? 久々に話もしたいからのう」
「え……ええ、わかりましたわ」
そしてオレとベレニケ、それにスピカとポルクシアとシリウス男爵の爺さんで食事をする事になった。
「お兄様、ワタシもつれて行ってくださいませ」
「ゲッ、アルヘナ……どうしてここにィ?」
オレをふくれっ面で見ていたのは妹のアルヘナだった。
「お父様は他の貴族様とお話があるのでワタシ一人だけ残されたんです。でも一人ぼっちで食事は嫌なのでお兄様を探していたんですーっ」
アルヘナは周りに合わせてオレを兄扱いしている。
それを見ていたスピカがクスクス笑った。
「可愛らしい妹さんですわね。カストリア様の妹さんですか?」
「はい、ワタシはアルヘナと申しますわ。お兄様の妹です」
アルヘナが貴族のマナーで自己紹介をした。
その様子を周りにいた貴族のバカガキ共がヒソヒソ話をしている。
「オイ……あの女、下民相手にあんな挨拶してるぜ」
「下民にはもっと高圧的にしなければつけ上がるって知らないのかアイツ」
この国の貴族のバカ共には本当にうんざりする。
オレはアルヘナのそばに行き、手を引いてその場をすぐに離れた。
「あ、お兄様。どこに行くんですか?」
「あんなバカ共のいない場所だ」
貴族のバカガキ共から離れるために食堂に向かうオレを追いかける来る形でベレニケやスピカ、ポルクシアにシリウス男爵の爺さんがついてきた。
そして全員が同じ席に座った。
「いいんですか? アタシ達が貴族様と同じ席で……」
「いいんぢゃよ、儂はこれでも男爵ぢゃ。それにここには儂の教え子も沢山おるでな」
食堂に着いたオレ達は教師陣に囲まれた。
「シリウス学長、お久しぶりです!」
「儂は引退した身ぢゃ。元学長でええわい」
「今年はシリウス学長の教え子が入学するかもともう噂になっております。なんでも難問の試験を時間内に終わらせたのが三人いるとか」
「ここにおるのがその三人ぢゃよ」
オレは何も言っていないのにシリウス男爵の爺さんが三人と言ったことに驚いた。
「ぢゃが、正しくは一人は儂の教え子のベレニケちゃんの弟子ぢゃよ」
「皆様、お久しぶりですわね」
「おお、ベレニケ様もおられたのですね」
どうやらベレニケはここでは有名人らしい。




