8 生涯の忠臣
「よォ、ここがオレの畑だ」
オレはガキ共を連れて、家の離れの中庭の畑に連れてきた。
ここの畑にはご禁制の草をびっしりと植えている。
畑からは一昨日植えて、もう小さな芽が出ていた。
「お前らの親父で、戦場に行ってるやつはいるのかァ?」
「……ぼくんち、とーちゃん、へいしにされてて、いえにはかーちゃんだけだ」
「そうか……」
「何だよ、それとこの畑になにが関係あるんだよ? それより金もうけってなんだ!?」
バロがオレに突っかかってきた。
「まあ、落ち着いて聞けよ。つまりだァ、戦場にいるって事はァ怪我をするって事だ」
「当たり前だろっ!」
「で、怪我をしたら当然痛いだろォ。それを痛み感じなく出来ればどうなる?」
「そりゃあ痛くなきゃ戦えるし、痛みで寝れないって事はないよな」
やはりバロは馬鹿じゃないらしい。
オレの意図がなんとなく見えてきたようだ。
「ここの畑に植えているのはご禁制の草だ、だがオレは貴族。この草を植えていたからと言って罰せられることはない」
「何だよ! きぞくの自まんかよ!!」
ガキ共がオレを不満そうな目で見ている。
「まあ落ち着けよォ、この草はそのまま使えばご禁制の薬になる。でもなァそれを特別な作り方をすると……これになるわけだァ」
オレはバロに飲ませた薬と同じ瓶を見せた。
「この薬を一瓶銀貨一枚で売る、そうすればご禁制の薬だとこれ一つで金貨五枚と同じだ」
「それじゃあ全然金にならないじゃねぇかよ!」
「ところが、そうじゃないんだなァ。この薬に使うのはご禁制の草のほんの一かけらだ。そうするとご禁制の薬金貨五枚分の量でこの痛み止めなら金貨五十枚になるんだよォ!」
「金貨五十枚!!?」
バロがビックリしていた。
まあ当然だろう、金貨一枚がコイツらの親の年収にも満たないのがこの国の格差だ。
「どうだ、オレのいう事に従えば毎日でも肉のスープ飲めるんだぜェ」
「すげぇ! すげぇよ! 男女なんて言って悪かったな!」
「なあに、気にすんなってェ」
バロとガキ達はオレのいう事を素直に聞いていた。
「けどなァ、間違ってもこのご禁制の草、お前達が持って行くなよ。下手すればお前らの親父やお袋が逮捕されるからなァ!」
こうやって恐怖を与えておかないと草を勝手に持ち出して売ろうとするガキが出かねない。
それを阻止する為にはこれくらい怖がらせないといけないわけだ。
また、本当にご禁制の草を持っているというだけで、庶民ならすぐに逮捕投獄されるのも事実なのがこの国の実態だ。
「わわわ、わかったよ! おれが子分には草を持って行くなと強く言っておくからな!」
「それと、オレが渡してもお前らは金貨を持っていない方が良い。どうせ盗んだ物とかと言われかねないからな。それならオレの家で畑を手伝ってコレをもらったと言って何か食い物と交換して持って行け。町の商店にはオレが話をつけておく」
「ありがとうよ! おれ、お前の為ならなんでもするぜ! 約束だ」
「ああ、オレも信じているぜ、バロ」
「それで……お願いがあるんだが」
「なんだ?」
「おれと友達になってくれ!! 身分違いなのは分かってる、でもオレ、お前の為に何かするなら友達の関係でいたいんだ!」
「いいぜ、バロ。よろしくなァ」
「ありがとうよ、そういえば名前まだ聞いてなかったな。おれに教えてくれないか?」
「オレはカストルだ。バロ、オレに様なんかつけなくていいからな」
「ああ、カストル、おれはお前の為なら何でもするからな!」
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これが後の時代にカストリアの一番の忠臣と言われた猛将、バロ将軍との出会いだった。
バロ将軍は庶民の出身ながら実力で出世し、革命期にその力をカストリアの為に振るい、生涯変わらぬ忠誠を尽くしたという。