7 男同士(?)の戦い
オレはガキ大将のリーダー、バロとの約束で対決をする為に前回と同じ場所に同じ時間に到着した。
「逃げずに来たようだな! きぞくのむす子さんよぉ!」
「お前こそなァ! 一人では勝てないから仲間を呼んだようだなァ」
「何だと! ここにいるのは、おれとお前の戦いを見るために来てもらったやつらだ!」
どうやらバロは、オレを数人がかりで倒そうというわけではなさそうだ。
まあこの程度のガキの群れ、オレなら全員を相手にしても余裕で勝てる。
前の人生でオレは最大300対1の戦いをした事がある。
あの時の戦いに比べれば、こんなのガキの遊びでしかない。
「オレは全員かかってきてもいいんだぜェ」
「なめるなっ! お前みたいなヒョロっとした女みたいな顔のきぞくのむす子に負けるほどおれは弱くないぞ!!」
どうやらバロは、オレを女みたいな男だと認識しているようだ。
そしてバロは大勢を一人で倒すのはプライドが許さないらしい。
見上げた根性だ。
まあそんなのどうでもいい。
とりあえずはバロをタイマンで圧倒的に倒すのがオレのするべき事だ。
「おれだってきのうは山でとった鳥の肉を食べたんだ! この間とはパワーがちがうぞ!」
その程度で強くなったと思えるとは、やはりガキだ。
「かかってきなァ!」
「行くぞっ!! 男女!」
バロは大振りでオレに殴りかかってきた。
だが前回と同じがら空きだ、それに足元がお留守だぜッ。
オレはバロの攻撃を避け、足元にローキックを決めた。
このローキック、地味に見えて実はかなり効果的だ。
足を動けなくしてしまえば腕だけで動くしかできなくなる。
腕だけで素人が勝てる程オレは甘くない。
だが、予想外の事があった。
オレに向かって石が飛んできたのだ。
それを避けようとしたオレはバロのパンチを頬に一発喰らった。
ボガッ!
オレは後ろに転倒してしまった。
このままマウントを取られれば、オレも今はガキの身体なので負けてしまう!!
だが、バロは立ち止まったまま、オレに攻撃をしてこなかった。
「ダレだ……今、石を投げたのは?」
周りの子供達は黙ったままだ。
「ダレだって言ったんだっ!! 男同士の戦いに石をなげたやつは!!」
「……バロ、おらだ」
バロは前に出てきたデブを思いっきり殴った。
「ふざけるな! 男の戦いをジャマするなんて、お前はオレを信じられなかったのかよ」
このバロというガキ大将、中々に見どころの有る奴だ。
オレはコイツの事が気に入った。
「バロ、オレの負けだよ。オレはお前に一発ももらわないで勝つつもりだった。でも、オレはお前にパンチを喰らった、良いパンチだったぜ!」
これも実は最初からの計画だ。
オレに勝ったというご褒美にアレをやろうってわけだ。
オレはポケットから袋を取り出した。
「ここに金貨がある、これはお前の親父らがいくらがんばっても手に入らない金だ。オレに勝ったお前らにこれをやるよ」
「……ふざけるなっ!! おれたちをバカにするなっ! とーちゃんかーちゃんを苦しめるヤツのほどこしなんてほしくねぇよっ!!」
バロはオレの予想通りの奴だった、これで金貨をくれという奴ならもっとすんなり行くんだが。
「そうだなァ、だがこれをやるけど仕事を手伝えってのならどうだ?」
「何だと? おれたちに何をやれって言うんだ!!」
バロは傷だらけの顔でオレを睨んだ。
「じゃあ、まずはこれを飲んでみろ」
オレはバロに完成した痛み止めを飲ませてみた。
子供でも使えるのはオレが自分で実験済みだ。
バロは俺から薬の瓶を奪い取ると一気に飲み干した。
「な……何だ? これ。おれの痛かったのが……消えた」
「どうだ、オレの持ってきた痛み止めの効果はァ」
「すげぇ、お前、一体何なんだこれ?」
「それはオレの家で作った痛み止めだ。お前らにはこれを作る手伝いをしてもらう、それが出来たらこの金貨を全員にやるよ」
そしてオレは、ガキ大将とその手下を全員オレの畑に連れて行った。