70 王都の闇
イアーソンさんが渋い顔で私達に話した。
「さらわれた子供達は、警備隊で預かることになった。そこで身元を調べて親の元に返すことになるらしい」
「そうですか……では親の無い子供達とかは、どうなるんですか?」
「一応は……国営の孤児院で引き取る事になるだろう。王都にはそんな広さが無いので郊外に作っているそうだが」
そんな話は聞いた事が無い。
なぜそういう事を言い切れるかというと、私は前の人生で警備隊長として身寄りのない子供の保護も書類で見ていたからだ。
子供はベレニケ男爵という人物が作った孤児院で世話をしているという話だった。
私は前の人生ではそれを鵜吞みにしてしまい、サインに書類をしていたが今考えるとおかしなことばかりだったような気がする。
保護されたはずの子供達は、形としては孤児院や女の子だと修道院に輸送された事になっていたはずだが、私は前の人生でその書類に一切サインをした覚えが無いのだ。
「この子達、大丈夫なんですか?」
「まあ俺も出来る事はしてやりたいが、警備隊もそこまでヒマじゃないので俺個人ではできる事が限られてしまう」
「イアーソン。仕方ない、子供達を警備隊に連れていくか」
翌朝、私達はおばさんに言って、イアーソンに付いて行き警備隊の事務所に向かった。
そこには以前私を蔑ろにした二人の警備隊員がいたが、私に気がついたらしくワザと目線をそらしていた。
「イアーソン、非番の時にさらわれた子供達を保護したそうだな」
「はい、どうも胡散臭い連中が東の貧民街にいたのでそいつ等の後を追いかけたら、ケプラーの手下に捕らえられた子供達がいたので、保護しました」
「ご苦労、今後この件は我々で調査するのでお前は下がっていいぞ。ケプラーの屋敷に勝手に入った事は後ほど始末書を書くように!」
「ちょっと待って下さい! ケプラーは奴隷売買をしていたんだよ。それを何故見逃すんだよ!!」
やはり、警備隊とケプラーはズブズブにつながっているようだ。
「黙れ、貴様はこの件に今後一切の関りを禁ずる。一週間謹慎していろ」
「ふざけんなよ!! どうなっているんだ!!」
イアーソンは他の警備隊員に抑えられ、そのまま反省房に連れていかれた。
「部外者はさっさと帰れ!」
私は二人の警備隊員に追い返されそうになり、スピカだけが残される事になった。
「ちょっと待てよ、そこのスピカちゃんは身寄りがないわけじゃない。シリウス爺さんって立派な保護者がいるだぜ!」
警備隊員が何かこれはマズいって顔をしていた。
コイツらは奴隷商人とグルで、魔法の使えるスピカを売り飛ばそうとしていたのか。
「スピカ、シリウス爺さんの所に帰ろう!!」
「ま、待て!! まだ話が終わっていない」
「スピカちゃんには身内がいるんだからわざわざ身元を調べる為に残る必要ないだろ、オレがシリウス爺さんの所に連れて行ってやるって、イアーソンに伝えていてくれ」
レグルスが警備隊員を引き留めてくれたので私とスピカは走って外に飛び出した。
その後でレグルスが警備隊の事務所から出てきた。
警備隊を振り切った私達は自分達の西の街に戻ってきた。
その後私はレーダ母さんにスピカが無事だった事を伝え、シリウス爺さんの所にスピカを連れて帰った。
「おうおうおう、スピカちゃんや、儂、昨日心配で寝れんかったんぢゃよ!!」
「お師匠様、ただいま」
「おうおう、お帰り。儂が今、美味しいもの用意してやるから待ってるんぢゃよ。レグルスとポルクシアちゃんも食べていきなさい」
私達は嬉しそうなシリウス爺さんに美味しい食事を作ってもらい、ご馳走になった。
その日私達は仕事を休ませてもらい、シリウス爺さんが風呂焚きをやってくれた。
その後しばらくはレグルスが、スピカの周りを守ってくれる事になった。
早くあのケプラーが捕まればこんな不安な気持ちにならなくて済むのに。
だが、その後何日経ってもケプラーが捕まったという噂は、街のどこからも聞こえてこなかった。




