51 焼け落ちた服屋
リュバンの店が燃えていた。
店の中には服が沢山ある。
それに火がついたらもう中は火の海だ。
オレ達が到着した時には、もう既に店は火の海だった。
幸いリュバンと家族は無事だが、それも時間の問題だ。
リュバンとタイヤールの親父さんはベランダに出て無事だが、それもいつまで持つのか。
警備隊は火事に関しては無力、火がついた家は焼け落ちるまで待つしか方法が無い。
「テメェらぁああ! 無事かぁああー!!」
オレは大声で叫んだ。
「大丈夫ですぅぅぅう! でもお母さんが!」
なんという事だ、店の中にはまだリュバンのお袋さんが残っている。
「くッ、どうにかできねェのかよ!」
コレだけの火の中からどうやってリュバンのお袋さんを助ければいいんだ。
「バロ、一緒に来てくれるかァ!」
「おおう!」
「マルシェ、テメェもこい!!」
「了解です!!」
オレ達はすぐそばの下水道に入った。
この下水道の構造ならオレやマルシェが完全に把握済みだ。
オレ達は地下下水道から、タイヤールの店の地下に移動した。
「バロ、この上を思いっきりぶっ壊してくれ!」
「おう! 任せろ!!」
バロが力任せに頭突きをした。
すると、タイタールの店の床板がぶっ壊れて中に入る事が出来た。
「オイ、リュバンのお袋さん、どこだァー!!」
「誰かぁー。助けてぇー」
女性の助けを呼ぶ声が聞こえた。
タイヤールのお袋さんの声だ。
「ドコだァー!」
オレは声を聞いた。
前の人生では火をつけた後に逃げる方法を考える事も多かったので、火の中からわずかな音を聞き取るのは経験で身に付いている。
「そこかァー!!」
オレは床にうずくまってたリュバンのお袋さんを見つけた。
「バロー! 手を貸してくれ!」
「おう!」
バロがお袋さんを引っ張って穴の開いた床板まで連れて行った。
そして、どうにか下水道の穴の中に引きずり込んだ。
「すぐ戻るぜェ!」
「おうっ!!!」
オレとバロとマルシェは再び下水道を通り、燃えている店の前に出てきた。
「リュバンー! お袋さんは無事だァー! 安心しろォー!!」
「カストリア様ー!!」
リュバンと親父さんはベランダから動けない状態だ。
「誰かァー!! 誰でもいい、布と紐をありったけ持ってこい!!」
「わ、分かりました!!」
流石は貴族様の命令だ。
野次馬はありったけの布や紐をあちこちから持ってきた。
「テメェら! 誰でもいい、何人かで紐を両端に持て! その上に大きな布を張るんだァ!!」
オレの指示で野次馬が紐を持ち、布をその間に貼った。
「良いかァ! リュバン、この布に飛び下りろォー!!」
「カストリア様ぁー!!」
完全に火に包まれた店のベランダからリュバンが飛び降りた。
「キャアアアー!!」
「大丈夫だァー!!」
リュバンは飛び下りて無事だった。
親父さんもその後に飛び降りて無事だった。
店はその後完全に焼け落ちたが、幸い死者は誰一人として出なかった。
お袋さんは穴の開いた下水道から後で助け出されたが、火事の後遺症で足が不自由になってしまった。
後日、警備隊によって放火犯人が見つかった。
放火犯は近くの服屋の番頭だった。
男爵の命令で火をつけたそうだが、男爵は当然知らないふりで切り捨てるだろう。
ドガッ! バギッ!
「テメェのせいでオレの店のやつが死ぬところだったじゃねェかよォ!!」
オレは怒りのままに犯人を殴った。
「俺だって最初は断ったんだ。でも、目の前の黒猫を見てたら、何だか最近売れている服屋が妬ましくなって……気がついたら火を付けていた。信じてくれ!」
黒い猫……まさか不幸を呼ぶ黒猫か。
オレは殴っていた手を引っ込めた。
「テメェ。オレの親父は鬼の警備隊長ヘミニス伯爵だァ。オレが言えばテメェなんてすぐにでも縛り首になる。でもなァ、助けてやってもいいんだぜェ」
「それは……どうすればよろしいのでしょうか?」
「テメェに火を付けろと命令した男爵の名前を教えろォ。それが条件だ!」




