46 カストリア商会設立
次の日、オレはバロとアルヘナを連れて、服屋に向かった。
「カストリア様、こんにちは」
「ああ、こんにちは」
服屋のリュバンはニコニコと笑いながらオレに服を見せてくれた。
「これを見てください。カストリア様の為に、店にあった一番良い布で服を作ったんです」
リュバンが見せてくれた服は色とりどりで、とても綺麗だった。
「本当はもう一色あったんだけど、昨日カストリア様そっくりな子が買って行きました」
オレそっくりな子供?
それは間違いなくポルクシアだ。
「そういえば、もう一つの服も一緒にいたとても可愛い女の子にって、買ってくれました」
それはおそらくスピカだろう。
どうやらポルクシアとスピカは一緒にいるみたいだな。
「そうか、無いもんは仕方ねェな」
「おねーさま、おれーさまはやはりあかいろがにあいますわ」
アルヘナがリュバンと一緒になって、オレに服を着せてきた。
まだこの二人には、オレが女だとは気づかれてはいないようだ。
オレが男で女装させていると思っているようだ。
「お待たせ様。カストリア様。とても綺麗ですわ」
バロが持っていた服を落とした。
「カストル……お前、マジで女の子にしか見えないな」
バロが顔を赤くしていた。
いや、それ普通の反応なんだが……とてもそうだとは伝えられない。
「おねーさま、とてもうつくしいですわ」
「カストリア様、やはりあなた様にはこの服がピッタリでした。これからもバリバリ作らせてもらいますね!」
リュバンが燃えていた。
まあこの服なら本当に作って確実に売れるだろう。
そう考えると、今のオレは金を稼ぐ方法が四種類ある事になる。
・ご禁制の草を合法的に使った麻酔薬を使った商売。
・元人さらいによる健全な運び屋
・一家心中するはずだった服屋のプロデュース
・後の天才画家の世話を見てやって絵を売る
どれもが前の人生では不幸だったり、人に誇れない仕事をしていた連中の為の仕事だ。
これが全部できれば前の人生で不幸だった奴らを、全員助けてやる事が出来る。
それもこれも今のオレが貴族の子供だからできる事なんだろう。
オレはこういう事をするために、もう一度神様に人生を与えられたのかもしれない。
「ニャーン」
「猫? おい、テメェ」
オレは見覚えのある白い猫を店の中で見かけた。
「可愛い……」
「あ、ねこさんだ」
白い猫は服を着替えたオレのそばに寄ってきた。
「よォ。久々だなァ」
「ゴロゴロ……」
オレ達はみんなで猫をなでてやった。
すると、猫を囲んでいたみんなの表情が和らいだ。
「ひょっとすると、テメェが俺達の幸せの神様なのかもなァ」
「ニャオーン」
猫は一声鳴くと、ぴょいと窓を飛び越えてどこかに行ってしまった。
「いってしまいましたね」
「そうだなァ」
猫を見ていたオレの頭に、直感が働いた。
「テメェら、全員オレについてこい!」
◇
オレはアルヘナ、バロ達とリュバンと親父さんもつれて、潰れた花屋に戻ってきた。
そしてオレは、元人さらいやガキ共といったここにいるみんなを集め、オレの考えを伝えた。
「みんな、実はオレにはこの間から考えていたことがあるんだ」
「おねーさま。いったいどうしたんですか?」
「カストル……かしこまってどうしたんだ?」
「カストリア……様?」
オレは店にあった踏み台の上に乗った。
「オレはここにいるみんなに伝えたい。オレはオレのやり方でテメェらを幸せにしてやる。この国はチャンスが無ければ、みんな底辺をうろつくだけで何も変わらない」
みんなが一体何を言っているんだ? といった表情をしていた。
「だがオレはテメェらと違い、恵まれた環境に生まれる事が出来た。でもそれだけでオレは良いのかと考えたんだ、だったらオレがテメェらの為にチャンスをやる。その為の仕事はもうすでにスタートしてるんだ」
「カストル……」
「おねーさま……」
みんながオレに注目していた。
「オレはカストリア商会を設立する! これはテメェら全員のための会社だァ。だからテメェらはオレに従え。絶対に幸せにしてやるッ!」
オレを見ていた全員が拍手をした。
そしてこの日、後のトレミー皇国最大の大会社になる『カストリア商会』が誕生した。




