44 おかしなスピカ
「イアーソン。オレ、その子送って帰るわ」
「え? レグルス、早くねえか?」
「これ以上遅くなったらこの子が危険だろ」
レグルスは私を気遣ってくれている。
「そうか、ではまた飲もうな」
「ああ、じゃあな」
そして私はレグルスに家まで送ってもらった。
しかし、家に着くまでお姫様抱っこはさすがにちょっと恥ずかしかったが、嬉しかった。
私はレーダ母さんと遅めの夕食をして、ベッドで眠りについた。
◇
次の日の朝、私はいつも通りにパン屋に向かった。
「よう、ポルクシアちゃん。おはよう」
「レグルスさん、おはようございます」
レグルスはまた外に出かけるみたいだった。
「レグルスさん、今日はどちらに?」
「なーに、ちょっとしたヤボ用よ」
レグルスは普段よりもかしこまった服装で出かける前だった。
その引き締まった服装に、私は胸がキュンとしてしまった。
「いって……らっしゃい」
「おうよっ」
私はレグルスの後姿をぼーっと眺めていた。
トンッ。
「えっ?」
「ポル、おはよっ」
後ろから肩を叩いたのはスピカだった。
今日の彼女は普段見るよりも、一段と可愛らしく見えた。
なんだか柔らかそうな唇が薄くピンク色っぽく見える。
目もパッチリした感じだ。
普段から美少女だった彼女が、今日は一段と美しく、キレイに見えた。
街の人達がスピカを見る度に誰もが振り返るほどだ。
「スピカ、今日は一体なにがあったの?」
「なんでもないわよっ、さあ、いきましょ」
今日はスピカが腕を組んで、グイグイ押し迫っているような感じだ。
そして私達はパン屋に到着した。
今日はスピカの可愛さがみんな気になったのか、パンの売り上げが普段以上だった。
そして彼女はずっとニコニコして、たまに私の方をチラチラ見てきた。
なんだか今日のスピカは普段よりもおかしい……。
お昼休みにスピカはお金を持って私に買い物に付き合って欲しいと言った。
それで私はスピカに付き合って、街にあった服屋に入った。
服屋には大きなリボンをつけた女の子がいた。
「いらっしゃいませ、カスト……。えっ? 失礼しましたッ!!」
どうやら私は誰かと間違えられたらしい。
この店にはカストリアが来たようだ。
「あ、貴女にピッタリな服がございます。いかがですか?」
「僕にピッタリな服?」
「え、ええ。あたしがデザインした服ですが、何種類かの色を作ってみたんです」
どうやら彼女がデザインした服があるらしい。
「どんな服ですか?」
「あの。貴女にそっくりな方の為につくったのですが、試作品で何種類かの色をあててみたんです」
どうやらカストリアが注文した服の試作品を着てみて欲しいという話のようだ。
まあここではカストリアが非合法な商売に手を出しているわけじゃなさそうなので、私は彼女の提案を聞いてみた。
「僕、この子の為の服を買いに来たんだけど……」
「まあ、とても可愛いっ! 貴女にお似合いの服も用意しますわねっ」
服屋の女の子は店の奥から急いで服を取り出してきた。
「どうぞ、こちらをお試しください」
「う、うん」
僕とスピカは店の奥の使っていない部屋で試着させてもらった。
「お二人共、とてもよくお似合いですよ」
「そ、そうなのかな??」
「ポル、可愛い」
スピカが私を見て顔を赤くしていた。
「じゃあこれ……二つとも買うよ」
「ありがとうございますっ!!」
僕はスピカの服と合わせて銀貨四枚を彼女に渡した。
店の外に出ると、私たち二人はあっという間に街の人達の注目を集めてしまった。
他の人から見ると、可愛い服を着た私とスピカの二人は絶世の美少女に見えるらしい。
「ポル……ちょっと時間遅くなっちゃったね」
「そうだね、早くお風呂屋さん行かないと」
私達は二人でお風呂屋さんに行ったが、この姿を見たパン屋のおばさんが、私達の仕事を休みにしてくれた。
「アンタ達、そんな綺麗な格好で仕事して汚れたら服が台無しだろ」
まあ、当然と言えば当然である。
その日のお風呂は、シリウス爺さんが久々に一人で焚いてくれたので私達は一日街で遊んだ。




