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30 女の身体はキツイ!

 服屋のタイヤールと娘のリュバンに服の依頼を終えたオレ達は、潰れた花屋に戻った。


「みんな、食べた後すぐに動くと横腹が痛くなるからなァ、少し休んどけ」


 マルシェと元誘拐犯達は、ガキ共と一緒に床に寝転がっていた。


「バロ、すまないがあの花屋の棚を改造してベッドに出来ないかァ?」

「なーに、オレの力なら簡単な事だぜ」

「やりすぎて壊すなよォ」

「それ言われるとちょっと痛いな」


 アルヘナがこのやり取りを見て、後ろでクスクス笑っていた。


「まあ冗談はさておき、二階をガキ共の部屋にして一階をアイツらの部屋にするからなァ」

「カストル、それだと商品の荷物はどこに置くんだよ?」

「そんなの決まってるだろ、地下だよォ」


 ここの店の下は下水道の離れ、地下墓地に続く通路だ。

 あまり良い場所とは言えないが、まさか物盗りもこんな地下に商品の倉庫があるとは思うまい。


「さて、忙しくなるぜェ。テメェら、休めるのは今のうちだからなァ」

「勿論です、坊ちゃん。バリバリ働きますよ!」


 マルシェは本当に改心したようだ。

 まああれだけ良い物食わせてやって金も渡してやれば、素直にもなるだろう。


「さて、少し休んだらテメェらに仕事だァ。ガキ共、これを受け取れ」


 オレは銀貨の入った袋をガキ共に渡した。


「それでお前らが必要だと思う物を何でも買ってこい。食い物以外の部屋に置きたいものだァ」


 二階の部屋はあまりにも殺風景だ。

 それなら玩具でも本でも何でもいい、ガキが自分の居場所だと言える安心できる場所を作ればいいんだ。


「あ、ありがとうございます! ごしゅじんさま」

「カストルで良い、オレはテメェらを奴隷にする気はないからなァ」

「ありがとうございます、カストルさま」


 ガキ共は元誘拐犯が付き添って、街に買い物に行った。


「さて、マルシェ。テメェにも今日の仕事をしてもらうぜェ」


 オレはまた金貨を弾いてマルシェの所に飛ばした。

 マルシェはそれを空中でキャッチし、オレにお辞儀をした。


「坊ちゃん、今日のお仕事とは何でしょうか?」

「なぁに、またヘミニス家の屋敷に行って今度は布の生地を持てるだけ持って来てくれ。色は黄色と水色、それに黄緑のやつだァ」

「承知しました!」

「頼んだぜェ」


 マルシェと数名はオレの命令でヘミニス邸に布の生地を受け取りに行った。


「さて、明日からはいよいよ仕事を始めるぜェ」

「カストル、ベッドが出来たぜ」


 バロはやはり優秀な奴だ。

 バロは壊れた花屋の棚を少し修理しただけで、子供何人かが寝られるベッドを作ってくれた。


「よーし、早速二階に持ってくぜェ。バロ、オレが反対側を持つからなァ」


 オレはバロに子供用ベッドの上側を持ってもらい、下を抱えた。


「キャアッ」


 ! 何だこの重さは!?

 オレは今の自分の体を過信していたようだ。

 前の人生のオレの体力ならこの程度の重さ、余裕だったが……今のこれはめちゃくちゃ重い!


 やはり女の身体には、負担があるという事なのか。


「カストル、どうした? 女みたいな叫び声上げてたぞ」

「ハッ、ハハハッ! 何でもねーよォ! この程度ォ!!」

「でも顔が真っ赤だぜ、おれ一人でやろうか?」

「大丈夫だって言ってんだろォ!!」


 オレにも意地がある。

 ここで女バレするのも何だし、オレは顔を真っ赤にしながらガニ股でどうにかベッドの下を二階まで持ち上げた。


 階段の下ではアルヘナが、お腹を抱えて笑っていた。


「ゼェ、ゼェ……あー疲れたァ」

「おにーさま、バロ、おつかれさまっ」


 アルヘナが下から水を持って来てくれた。

 オレはコップを受け取ると、水を一気にがぶ飲みした。

 水は何だか少し甘酸っぱかった


「? コレ、何か入ってるのかァ」

「はい、ワタシがもってたキャンディーをとかしてみました」


 これはマジで美味かった。

 疲れた体に甘さと酸っぱさが、心地よく体に染み渡るのをオレは感じていた。

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