28 服屋への依頼
オレは前の人生でもこの店を使った事がある。
この店は確かに、超一流の最高級レストランだ。
だが、一枚皮をむくと、品も何も無い店だった。
オレがこの店を使った時、三日三晩店の全てを借り切った。
その時の客は、オレの身内と貴族、その貴族のご婦人方、娼婦、奴隷商人、そして奴隷達だ。
オレは盗んだ大金で店を三日三晩借り切り、奴隷商人と貴族達に最高で最低のサービスを提供してやった。
つまり最高級の料理を食べ放題飲み放題で、あちこちで素っ裸の男女が日夜、酒池肉林の淫蕩な快楽にふける乱交パーティーを主催したわけだ。
そのパーティーに参加した貴族共の醜聞を握り、オレは社交界の連中を手玉に取った。
その為に利用したのが、この店だったわけだ。
お高くとまっているが、ドレスコードさえ抜けて個室に入れば、どうとでも出来る店。
それがここだった。
それなのでこの店は、ドレスコードさえ抜ければ、マナーを気にせず食事が出来る店なのだ。
だからこのガキ共や元誘拐犯という品のない連中に、美味しい物を食べさせてやるにはピッタリだ。
「みんな、何でも好きな物を頼めよォ、食べたかった物を我慢せずに食わせてやるからよォ」
ガキ共と元誘拐犯は、メニューにある料理を全て注文した。
オレはその代金を金貨の入った袋で店に払ってやった。
袋の中には金貨100枚以上入っていた。
なお、オレが前の人生でこの店を借り切った時は、一日で金貨100枚だったので、コイツらの昼食代としてはおつりが返ってくるほどだ。
だが、ここで多く払っておけば、今後もオレの言う通りに店の個室を用意してもらえる。
そういう意味では先行投資というべきか。
少し待つと料理が出てきた。
本来ならコイツらには、一生食べる事のないような高級品ばかりだ。
ガキ共と元誘拐犯は手づかみで肉をかじり、ソースの皿を舐めていた。
流石にオレとバロとアルヘナは貴族らしく、マナー良く食事をした。
金を払う者が下品だと、足元を見られるからだ。
それは前の人生でオレが懲りた事だった。
全員がもう食べきれないというくらいに、料理を平らげた。
本来、この店は持ち帰りに対応していなかったが、あれだけの大金を払ったので残った料理は全部バロが持つ事になった。
満腹になったオレ達は何かいい物が無いかと、街を歩きながら探して……潰れた花屋に向かっていた。
そして……オレが気になったのは、寂れた服屋だった。
ここも見覚えがある。
前の人生でオレがこの街に用意したアジトの一つとして、手に入れたのがここだった。
その時、ここには何年も放置されたハサミの刺さった親子の骸骨が転がっていた。
だが、今はまだ店が残っている。
オレは店の中に入った。
「よォ、邪魔するぜェ」
「き、貴族様……こんな店に何の御用ですか!? この店には売れる物なんて何もございません」
この店は服屋だが、確かに貧民向けの安くてボロい服しか置いていない。
だが、このままこの家族を見捨てると、コイツらは食べる物も無く死んで骨になるだけだ。
「よォ、テメェ、腕はあるのかァ?」
「腕……ですか、まあそれなりには。かつては貴族様の服を作った事もありますので」
コイツは腕があっても貴族に見捨てられてしまい、食えなくなった服屋のようだった。
「それならオレの注文する服を作ってもらおうかァ」
「……申し訳ございませんが、わたしどもには服を作る材料を買うお金がありません……」
この社会では服屋は金を出してギルドから生地を買い、それを元に服を作って売るのが常識だ。
だから一度生地を買えなくなってしまうほど困窮すると、生きていく事が出来ない。
「テメェ、オレが生地を用意してやる、それを元に服を作れ。それならできるなァ?」
「そ、そんな事が!? 本当ですか」
「ああ、本当だァ、オレの話を聞く気になったかァ?」
服屋のオヤジはオレの顔を強く見つめていた。




