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251 夜の帳とレオタード

 家に着いた私はレイブンさんに貰った剣を自分の部屋でいじっていた。


 どういう仕組みになっているのかまでは分からなかったが、この剣は普段小さな玩具くらいの大きさだが、柄のボタンを押す事で剣の先端が伸び、普通の長剣のサイズになる。

 そしてまたボタンを押すと短く戻り、鞘に入れれば剣とはわからないようなくらいだ。


 レイブンさんはこの剣でどれだけの人を殺してきたのだろうか……。

 それを考えると私は少し怖くなった。

 剣の刀身は真っ黒に塗られていて、確かにまるで烏の嘴のようにも見えなくもない。

 

 でもさすがにそれは私のセンス的には会わない気がした。

 何か良い名前無いかな……。


 私は剣を握りながら名前を考えていた。

 全身漆黒の刀身、まるで夜を固めたような黒さ、――そう、夜の帳のような。


 そうだ、この剣は烏の嘴ではなく、夜の帳と名付けよう。

 レイブンさんは私を、闇を照らす光だといった。

 それならば、闇夜を切り裂く剣はあえて黒い剣であり、その剣を使いこなす私こそが明けの明星となろうではないか!


 私は夜の帳を構え、鏡の前でポーズをとってみた。

 この鏡は、――やはり女の子の部屋には鏡くらい欲しいよね――、とレーダ母さんが働いてくれた金で買った庶民にとっての高級品だ。


 鏡の前の私は、マスクを身に着け、剣を構えた姿だった。

 でも何か足りない、そしてこれでは夜に目立ってしまう。

 レイブンさんに以前聞いたヤマトクニの暗殺者、ニンジャという戦士は闇に隠れて敵を倒すという。

 私はそのニンジャに習い、全身を黒い服で覆う事にしようとした。


 しかしいざ部屋のタンスの中を見てみると、可愛い服装、色のキレイな服装が多く、黒や紺といった服装が見当たらない……。

 仕方ない、明日学校の演劇部更衣室の物を借りるかな。


 次の日、私は鞄の中に夜の帳をしまおうとしたが、ギリギリ入らない大きさだったのでスカートの下に忍ばせることにした。

 足の太ももにベルトで縛り付けたが少し擦れて痛いかもしれない……。

 これは改善の余地がありそうだ。


 その日は何事もなく授業が終わり、放課後になった。

 私は一人だけで合鍵を使い、演劇部更衣室に入った。

 

 最近はこの部屋に入る時はカストリアと一緒のパターンが多かったような気がする。

 先日黒猫のサロンに潜入する為のアストレイアとポールの変装をしたのもここだ。


 演劇部の部室の中には私のイメージに合った服があるのだろうか……。

 私は様々な衣装がある中で出来るだけ色の濃い服を探してみた。

 候補になりそうな服は……あるにはあったのだが……。


 見つかったのは演劇練習用の濃紺のレオタードだった。

 他の服で黒に近い色の服は残念ながらこれしか見当たらない。

 いやいやいや、流石にこの服装で街を歩いていたら痴女丸出しだ。


 でも以前見たあの変な夢では私はこんな感じのスタイルだったな、と思うと……私はつい興味本位でこの濃紺のレオタードを着てみた。

 女物の下着を着たままではレオタードは動きづらい。


 仕方なく私は誰も見ていないので裸になり、その素肌にレオタードを身につけた。

 レオタードにベルトを着ければ少しはマシになるかな……。

 私は太ももで擦れて痛かったベルトを腰に巻きなおし、夜の帳を鞘ごと括り付けた。


 サイズはピッタリ!

 それにこの服装、何気に動きやすい!

 そう、見た目さえ気にしなければこの服装は動くには最適だった。


 でも流石にこのままでは外に出られない。黒いマントくらい見つからないかな。


 黒いマントは吸血鬼の衣装の物がすぐに見つかった。

 イメージピッタリな事に、闇夜に蠢く吸血鬼のマントは夜の闇に隠れるには最も使えるものだった。

 私は衣裳部屋の鏡で全身を見てみた。


 濃紺のベレー帽にレイブンさんに貰った仮面舞踏会用マスク、濃紺のレオタードにベルト、そして漆黒のマントに漆黒の剣―――夜の帳――。


 そう! 今、鏡の前にいるのは皇国学習院生徒ポルクシアではなく……義賊、明けの明星だった。

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