201 何がどうなっているのやら
昨日はメチャクチャな一日だった。
何が悲しくて男装の姿でカストリアの従者のフリをしなければいけないんだ。
何だか昨日の事を思い出したら少し腹が立ってきた。
「ポル、どうしたの?」
「あ、ああスピカ……別に何でもないよ」
「そう? ところで昨日……」
「昨日なんだよ!?」
私はつい大声になってしまった。
「そんなに大きな声で怒鳴ることないじゃない。昨日ポル夜まで見かけなかったからどうしたのかなって聞こうとしただけなのに! もう知らないっ!」
「あ、ゴメン、ゴメンよスピカ……」
あーあ、誤解でスピカを怒らせてしまった。
それもこれも昨日カストリアがいらないことをしたせいだってのに……。
まあ終わったことをグダグダ言っても仕方ないので、後でスピカに謝っておこう。
そしてお昼まで私はスピカと一言も口をきけなかった。
お昼になれば食堂で何か買うだろうし話す機会もできるだろう。
私はそう考え、食堂に行くことにした。
しかし今日に限ってスピカは姿を見せなかった。
「あれ? スピカ……どうしたんだろう」
少し心がざわついた私は、何だか嫌な予感がした。
私は食堂の行列を離れ、教室に戻ろうとしていた。
すると、そこには何だかよく分からないが黒山の人だかりができていた。
「何だ? 一体どうしたんだ?」
私は黒山の中心の方に目を向けてみた。
すると、そこにいたのは昨日の迷惑男、テムジンだった。
「あ、アレはテムジン!?」
よく見るとテムジンの手前にいたのはスピカだ。
「何をするんですか!?」
「オウ、アナタ可愛いでスね。どうでスか? ワタシと一緒に食事ナドしまセんか?」
「お断りです! 何でアナタと一緒に食事しないといけないんすか!」
どうやらスピカは昨日のカストリアのようにテムジンに言い寄られているようだ。
ここで下手に出ていくと、私まで彼に何か言われそうな気がする。
「やめてくださいっ! 誰か、誰か助けてっ」
しかしだれもスピカを助けようとはしない。
所詮傍観者の貴族達にとってはスピカは庶民の特待生、助ける義理も無ければ横から見て面白おかしく成り行きを見ているだけなのだ。
ああもう、私が助けるしかないのか。
「やめるんだ! スピカが嫌がってるじゃないか!」
「誰でスか? アナタは」
私はスピカを助けるためについ前に飛び出してしまった。
「オウ、女の子を助けようと飛び出すなんてまるでアナタ、騎士みたいでスね。可愛い女の子なのに」
テムジンはそう言うと私の方を鋭い目で見つめてきた。
「よく見ると、アナタもとても可愛いでスね。ワタシ気に入りました」
「お断りだ! スピカ、こっちにおいで。行こう!」
「ポル……」
私はスピカの手を強引に引っ張り、その場をすぐに離れた。
黒山が邪魔をしたからだろうか、テムジンは私達を追いかけてくることは無かった。
「ポル……アタシ、ゴメン」
「良いよ、スピカ……怖くなかった?」
「う、うん……大丈夫。ありがとう」
どうにかテムジンの魔の手からは逃れることはできたが、今後この学校が安全だとは言い切れなくなってしまったな。
あのテムジンは間違いなく留学生として今後学校の中で顔を合わせる相手になるだろう。
そう考えると今後の学園生活が平穏では済まなくなりそうだ……。
「あ、こんな所にいたのか。ポルクシア、シリウス学長がお呼びだ。一体何をしたか知らないが……すぐに学長室に行くように」
「はい、承知致しました」
何があったのだろうか?
私はシリウス学長に呼ばれ、学長室に向かった。
「失礼します。シリウス学長に呼ばれてこちらに参りました」
「ほうほう、来たかい。ポルクシア、そこに座りなさい」
「はい、承知致しました」
私はシリウス学長の言う通り、椅子に座った。
「実はお前さんに渡す物があってのう」
シリウス学長は私に何を渡そうというのだろうか?




