177 宝石を食べる親子
ストーンバイターの強烈な一撃が硬い岩壁を砕く。
そして砕けた岩壁はその衝撃でどんどん崩れていった、外側は硬くても一度ひびが入ると脆いものである。
「やったなァ!」
カストリアが叫んだ。
ストーンバイターはまだ目が真っ赤だ。
だが、少し動きが止まった。
どうやら怒りよりも目の前の美味しいそうな宝石が気になっているようだ。
だが、ストーンバイターのいる位置からでは上にあるスターライトルビーは取り出せそうにない。
これでは大人しくなるはずのストーンバイターが宝石欲しさに暴れまわり、この大空洞すら崩壊させかねない。
そうさせないためには、私達があのスターライトルビーを手に入れるしか方法は無さそうだ。
「スピカ、アースクエイクの魔法は使える?」
「うーん……土の魔法はあまり得意じゃないけど、使えると思う」
「今すぐに使ってくれ、時間が無い!」
「わかった!」
スピカは杖を手に、地面を突いた。
「アースクエイクッ!」
地響きが辺りに広まる。
ストーンバイターも何が起きたのかがわからず、その場で動けない。
やがてスピカのアースクエイクの魔法は、上部の方にあるスターライトルビーの鉱脈にも伝わり、岩壁が音を立てて壊れた。
「やった!」
崩れた岩壁から真っ赤で巨大なルビーが転がり落ちてきた。
その巨大な宝石は、ストーンバイターの頭部に直撃し、ストーンバイターは思わずビックリしてしまったようだ。
「あんなもの落ちてきたら即死だったなァ」
カストリアは、スターライトルビーの大きさに感心しているようだった。
「これであの怪物が大人しくなってくれるといいんだけど」
少し落ち着いたストーンバイターは目の前の巨大なスターライトルビーに手を伸ばした。
そしてその宝石を手に取ると、まじまじと見つめていた。
「見て、あの怪物の目の色が」
「本当だ。青になっている」
ストーンバイターの目は怒りの赤から通常の青い色に戻っていた。
大人しくなった親の近くにはストーンバイターの子供も姿を見せた。
ストーンバイター達は、スターライトルビーを触ったりなでたりしている。
「あっ!」
そしてストーンバイターはついにスターライトルビーを口の中に放り込んだ。
ガリガリガリボリボリボリ……。
宝石を噛み砕く音が辺りに響き渡った。
そんな親に向かい、ストーンバイターの子供が何度も手を引っ張っている。
どうやらスターライトルビーのことが気になっているようだ。
―GUOOOOOON―
ストーンバイターの鳴き声が響いた。
その目は青いままだ。
そして、親のストーンバイターは、砕けたスターライトルビーの一部を子供に渡した。
「わぁ、何だか可愛い」
ストーンバイターの子供は砕けたスターライトルビーを口に入れ、美味しそうにバリ彫りと砕いて食べだした。
「どうやらもうアイツが暴れることは無さそうだなァ」
カストリアも、親子で食事をしている嬉しそうなストーンバイターを見て安心したようだ。
「そうだね、これでようやく上に戻れそうだね」
私達がどうにか廃鉱山の上に戻ろうとした時、ストーンバイターが私達の前に立ち止まった。
「何だ? やる気かァ?」
いや、それは勘弁してほしい。
これ以上コイツと戦ったら命がいくつあっても足りない。
「見て、これ」
ストーンバイターは私達に手を出し、その大きな掌の上には砕けたスターライトルビーの欠片が載っていた。
「これを……わたし達にくれるの?」
スバルさんが尋ねると、ストーンバイターはグオーンと吠えながら首を縦に振った。
「ありがとう。これもらうね」
ストーンバイターは嬉しそうに身体を上下させている。
どうやらあのスターライトルビーを手に入れたのが私達だとわかったのだろう。
私達にスターライトルビーの欠片を手渡したストーンバイターの親子は、大空洞の奥に姿を消した。
「みんな、やったね! コレを持って上に戻ろう!」




