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167 始めての校外学習

 カストリアのおかげで、食堂の問題はほぼ解決した。

 学園の食堂と寄宿舎の食堂、これらは片方をカストリアが、もう片方をスバルが仕切ることでほぼ食糧不足の問題も、人員確保の問題も片付いた。


 露骨に私やスピカを追い出そうとしていた教師連中は、今は打てる手が無いらしく何もしてきていない。


 そういう状況で一か月ほどが過ぎた。


 今日は学園の外に出ての校外学習という名のテストだ。

 私達はダンジョンに入ることになった。


「これからテストを行う。テスト内容は簡単、このダンジョンの地下にいるモンスターを退治し、その倒した証を持ち帰ることだ」


 ここは初心者向けのダンジョンだと言われている。

 元々は鉱山だったのだが、モンスターが住み着くようになり、廃坑になった場所だ。

 モンスターのレベルはそれほど強くなく、このダンジョンから出てこようというモンスターもいない。

 どうやらここにいるモンスターは、日の光が苦手なようだ。


「それでは二人組を作って挑戦しろ」


 クラスの生徒達が二人組を次々と作っていく。

 その組み合わせは大体がほぼ同じくらいの家同士になっているのは親に言われているからなのだろうか。


 当然のように私と組もうという貴族はいなかった。

 スピカも同じ扱いである。


 カストリアやスバルは大勢の生徒達に囲まれて我先にと一緒に組んでくれないかと声をかけられているようだ。

 カストリアには女の子が、スバルには男の子が声をかけてる。

 しかし、カストリアは彼らの申し出を全て断っていた。


「悪ィ。オレテメェらと組む気ねェんだわ」


 そう言ったカストリアは私の所に歩いてきた。


「よォ、もちろん……イヤとは言わねェよなァ?」

「あ、ああ。わかったよ」


 私はカストリアの差し出してきた手を握った。

 周りの女の子達からは悲鳴が聞こえる。


「キャー! 何でカストル様があんな平民にー!」

「何よあのブス、お高くとまってさっ!!」

「許さないんだから。わたくしよりあんな女を選ぶなんて」


 何とも醜い表情と声だ。

 大声で叫んでいるのは、綺麗な服を着ていなければとても貴族のご令嬢様達とは思えないような連中ばかりだった。


「バカかテメェら。この中でポルクシアに勝てるだけの魔力と剣技持ってるやついるのかよォ。顔を洗って出直してきなァ」


 まあそれは事実だが、火に油を注いでどうするんだ。

 この後で貴族の娘達から私への風当たりはますます厳しくなるだろう。

 私がタダの平民上がりならすぐにでも折れるくらい辛辣なイジメの原因になるのも見え見えだ。


 だが所詮は子供のママゴト。

 実際に貴族の策謀渦巻く世界で生きてきた私には生ぬるい程度のことだ。

 あの世界は一歩間違えば陥れで一族郎党処刑。

 決して優雅で華麗なだけの美しい世界では無いのだ。


「わかったよ、カストル」

「決まりだなァ。それじゃァ準備は良いかァ」

「ああ、もうこっちはいつでも出れる」


 私にはレイブンさんに鍛えてもらった暗殺術、格闘術、それにシリウス爺さんに教わった魔法、そして前の人生での貴族の剣技がある。

 この初心者向けのダンジョンでしくじるほどレベルは低くはない。


「そちらはもう準備できてるようですね」

「あァ。そっちもやはりそういう組み合わせになったみたいだなァ」


 スピカもやはり平民だということで、誰も手を差し出そうとはしなかった。

 そんなスピカに声をかけたのはスバルだった。


 まあスバルの腕とスピカの魔法ならこの初心者ダンジョン程度なら余裕だろう。


「お前達、ペアは用意できたようだな。こういう際のためにクラスは偶数にしてある。あぶれ者が出ないようにな!」


 ベア子爵の大きな声が辺りに響いた。


「それでは各自、テストを開始する。ダンジョンから自分の倒せるレベルのモンスターを倒した証を持ち帰ることで合格とする。途中で逃げ出してきた者は失格となるので覚悟するように!」


 そして、試験が開始された。

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