道化師(ピエロ)
なぜか、七五調です。サクサク読んでいただけると幸いです。
おっちょこちょいの道化師は なにをやっても下手くそで
クマと一緒に三輪車 こげば、たちまち追い越され
火の輪くぐれば、その度に 尻に火がつき、大慌て
真面目に道化していても 失敗ばかり、繰り返す
だけど道化師、人気者
失敗ぶりや、慌てぶり みんな指さし、大笑い
ついに仲間も、腹抱え 一緒になって大笑い
うまく道化て笑われる はずが、失敗笑われて
きょうも道化師、落ち込んで
描く涙の、その下に 悲しい涙 隠す日々
そんな道化師、恋をした
相手は一座の花形の 笑顔、可愛いダンサーで
ブランコ乗りの二枚目と 仲良く話す、その姿
いつも、影から見つめては ため息ばかり、つくばかり
これじゃいかんと、道化師は まさに、一念発起して
興行終えたサーカスの 舞台でひとり、猛練習
打ち身もケガも、なんのその 寝不足だって構わない
とんぼに逆立ち、輪くぐりも こなして、明日は晴れ舞台
その気、やる気も盛り上がる
俺は、いつもと違うぞと はやる道化師、舞台上
玉の上へと飛び乗って 前後左右にステップを
踏んで自在に駆け回る
どんなものだと見えを切り 観客席を見渡せば
なぜか、お客は渋い顔
続けて、火の輪くぐっても 拍手まばらで、極めつけ
自転車乗って逆立ちを したら、客席ブーイング
道化が道化ず、なにをする
お前がうまくやるとこを はなから見には来ていない
慌てた道化師、おろおろと 周囲をみれば、冷やかな
仲間の顔の、その中に 恋しい人の顔もあり
その隣には肩を抱く ブランコ乗りの薄笑い
こんなことなら、特訓は 意味がなかった、なんのため
あんな努力をしたんだと
道化た顔の、その奥に 悔し涙が溢れだす
もうどうにでも、なりやがれ
やけのやんぱち、道化師は 自転車乗って走りだし
涙でぼやけ、躓いて 派手に転んで、うずくまり
痛みに堪えりゃ、湧き起こる 拍手喝采、笑い声
毒を食らわば、皿までと
玉に飛び乗り駆けだせば 足がもつれて転げ落ち
尻もちつけば、ブラボーの 大歓声のその中で
道化られない道化師の 化粧に隠れた、泣き顔を
道化と思い、大笑い
舞台がはねて、人波に 背を向け、道化師、スポットの
当たらぬ影で俯いて
いつそ、サーカス辞めようと ぼんやり頭で考える
そこに、こどもら、やってきて 道化師囲んで、拍手する
すごいね、ずいぶん練習を 頑張ったんねと、尊敬の
眼差し向けて、口々に 僕も頑張る、私もと
可愛い笑顔で言いながら パパ・ママ呼んでも帰らずに
道化の服にしがみつく
そうか、俺でも、この子らの みぢかな夢になれるんだ
頑張りゃ、道化もやれること みせてあげれば、どんな子も
明日を夢みて、生きられる 気づいた道化師、嬉しくて
子どもの前で、泣き笑い 道化の化粧が落ちるまで
他人目気にせず、泣き笑い
努力は、なかなか実を結びません。ともすれば、空回りをして、他人からみればピエロのようなものかもしれません。でも、その努力が実を結ばなくても、どこかで、素直にみてくれる人がいる。そんなことも信じてみたいなと思って書きました。