第98話:ジェノしゃんみたいに、ちたかった……。の、ひ!
さてさて。
聖域に感動した後、お城の中に移動しましたよ。
立派な大理石? のような、石なのかも分からない石畳の廊下。重厚な彫刻が施された石柱。
皆がそんな城内を目の当たりにして緊張している。
「ミノタウロスだ……」
と、ケリー君が通称『うししゃん』を見て強張っている。
「うししゃん、ただいま!」
「うも~! おかえり」
ソラちゃんがうしさんの脚にしがみつくと、うしさんは頭を撫でてくれる。
1番初めにソラちゃんを……ていうか、わたしか。わたしを世話してくれたっていうことで、このうしさんとは特別仲がいいんだよね。
そんな様子を見て、マグア君が呆然とした顔で。
「凄い……Sランクの伝説的なモンスターなのに……」
なんて言ってる。
伝説的なんて、初耳なんですけど。
……お城の雑用係って思ってた。
――おもらち、ちたとき、しぇわちてくれたちね!
だね~。
うしさんと挨拶を交わした後。パパ達はみんなの部屋を用意すると言って別れていった。
ソラちゃんはソフィアちゃんの手を引いて、孤児院の子達を自分の部屋に誘った。
「ここ、あたちのへや」
まあ、自慢できるほどの部屋じゃないけど。
6畳ほどの広さの部屋の中には、簡易なベッド、クローゼット、それと……おまる。
おまるには蓋がしっかりしてあるから臭ってないはず。……臭ってないですよね?
「おまるって、お城にトイレはないの?」
いい質問だよマグア君!
さあ、正直に答えてあげようか、ソラちゃん!
「て、とどかないから、どあ、あけれないもん」
「ああ~、ここの人達って、みんな大きいから、ドアノブも高い位置にあるんだね」
今までの謎が全て解けたよ。背が低いからって関係なかったみたいだね。
「あ!」
と、マリーちゃんが声をあげて、窓まで歩いていった。
「どちたの?」
「綺麗いなカーテンね!」
「はじゅかち!」
いやいやいや! どこに恥ずかしがるところがあるのかな?
ていうか、カーテンよりも、おまるを恥ずかしがろうよ!?
と、ソラちゃんが両手で顔を隠して恥ずかしがってると、今度はソフィアちゃんがどこかへ歩いていく。
「こっち、えほんがある!」
あ、床に置きっぱなしだったね。
「いいでちょ~! ジェノしゃんがいっぱい、もってきてくれるの」
「いいな~」
絵本はどうやら高価なものらしい。ていうか、紙と本が高いのか。
ほとんど羊皮紙だし、印刷技術もないだろうしね。
ジェノさんはどこから絵本を持ってきているのか、謎だね。
「よみきかしぇ、ちてあげる! あたちのひざのうえ、しゅわって!」
「うん!」
ソラちゃんが床にぺたんと座り、そこへ、読んでほしい絵本を持ったソフィアちゃんが勢いよく座ってくる。
えっと……目の前に迫り来るソフィアちゃんの頭。
ドン! と、体に衝撃が来て、ころん、と、視界が反転して、何故か天井が見えて。
ゴゴン!
2人仲良く床に頭をぶつけた! 小さい体でソフィアちゃんを受け止めるには無理がありました! ただでさえ、幼児体系で頭が重いんだからね。
「「う……うわぁぁぁん!」」
「「うわ! どうしよ、どうしよ!」」
ジェノさぁぁぁん! 保護者ぁぁぁ!
大惨事発生ですよぉぉぉ!
誰か来て~! 子供達だけにしないでぇぇぇ!
今年最後の投稿になります。
また来年を楽しみにしていてください!