第97話:みんなびっくり! せいいき! の、ひ!
さてさて。帰ってきましたよ、懐かしい自宅……お城に。
「「でっけ~」」
マグア君とケリー君が、馬車を降りてお城を見上げながら立ちすくむ。
改めて見ると、わたしも大きいな~って思う。
だってね~。アリアちゃんのお城よりも、全てが2倍くらい大きいんだもの。
「人族の城よりも大きいじゃろ~」
パパが自慢げに言う。
「どうしてこんなに大きいの?」
「大きくないと、俺が頭をぶつけちゃうじゃろ?」
……そんな理由!?
庭園を皆で歩いて、お城の入り口まで向かっている。
ソラちゃんは、ばぁちゃと手を繋いで大はしゃぎだ。
「ばぁちゃ、あっちにね、おはなばたけがあるの!」
「まあ! 見てみたいわね!」
「いこ~!」
ばぁちゃの手を引き、……途中で抱かれて、花畑に向かったよ。
花畑には、何種類もの花が咲いている。
そして、たくさんの妖精が嬉しそうに花畑で舞ってる。
「きれい! いいにおいがするね!」
ソフィアちゃんが花畑の中に入っていく。
『誰~? この子誰~?』
妖精たちが、ソフィアちゃんに集まって、周囲を飛び回る。
「ソフィアちゃん、あたちの、おともだち!」
「きゃ! おねえちゃん」
ソラちゃんが後ろから抱きついちゃった。
『ソラ様のお友達~! 祝福をあげる~!』
妖精がソフィアちゃんの周りで輝いて、その光をソフィアちゃんの体に飛ばした。
【花妖精ピクシーの祝福】
全ての花を育てるのに成長補正がかかる。
優しい心で世話をするほど、成長促進。
さすがに、枯れない花を作りだすほどじゃないね。
「しゅご~い! いっちょにおはなやしゃん、ちよ~!」
「うん、やってみたい!」
お花屋さんの従業員ゲットですよ! ソフィアちゃん、まだ3歳ですけどね!
花畑でしばらくきゃっきゃしたあと、すぐ横の湖に来た。
「すげ~! 結構深いけど、水が透明で底が見える!」
マグ君が、湖の縁から覗き込んで感動の声をあげる。
「マリーねえちゃん、ほらほら、すごいよ!」
「本当に水が透き通ってるわね」
ケリー君とマリーちゃんも、湖を覗き込む。
さすがに、ソフィアちゃんは落っこちると危ないってことで、ばぁちゃに抱かれてる。
「凄いじゃろ。この水は聖水になっておってな、いっさい濁ることもないし、減ることもないんじゃ」
「あたちがちゅくった!」
ソラちゃん? 自慢したいのは分かるけど、魔法の失敗で偶然出来ただけだよね?
――ちゅくったのは、あたちだもん!
そうなんだけどね……。
まさか、大きな氷の柱? が、溶けて聖水になるって思わないじゃん?
――あたち、しぇいじょだもん!
ああ! そうでしたね! 暴力的聖女でした!
――むふふ~。
……褒めてませんよ?
「聖水の湖に、妖精が舞う花畑。命溢れる草木……ここは聖域なのではないですか?」
「「「……その通り!」」」
ばぁちゃの言葉に、皆が納得しちゃった!
ソラちゃんは、花畑と聖水の湖どころか、聖域を作っちゃってたよ! しかも、魔王城のすぐ横!
――しぇいじょだもん!
……聖女らしく、もうちょっと落ち着こうよ~!