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第96話:あぶなかった! の、ひ!

 村で一泊したあと、お城に向かって出発した。


 村での出来事といえば、普通に宴会騒ぎになって、8歳で冒険者のマグア君が皆から訓練を受けて、獣人数名と森の中に狩りに行って、イノシシを仕留めてきた事かな。

 初めての狩りで感動して、自信満々にどうやって狩ったかを話してたね。

 うん、嬉しそうでよかった。ちなみに、ソラちゃんは体当たりでトロルを吹き飛ばしちゃってるけどね……。


 ――パパとまちがったんだもん。


 そうでしたね~。


 人間違いで吹き飛ばされたトロルよ……。


 そうそう、お風呂で死に掛けましたよ。

 3歳のソフィアちゃんと、5歳のマリーちゃんの3人でお風呂に入ったんだけどね。


「ソラ様、私も一緒に」

「あたち、おねえちゃんだもん!」


 と、ソラちゃんがお姉ちゃん風を吹かせて、2人をお風呂に入らせたいみたいですよ。

 マリーちゃんよりも背の低いソラちゃんが、腰に手を当ててふんぞり返ってますよ。

 ソフィアちゃんとマリーちゃんもね、孤児院にはお風呂がないから、初めてのお風呂に期待で瞳をキラキラさせてるの。

 まあ、それでソラちゃんが増長したっていうか……。


 脱衣所で衣類を脱ぎちらかすでしょ~。

 普段はジェノさんと一緒に入ってるから、かけ湯して体を洗うのは慣れてるから、ソフィアちゃんとマリーちゃんの体も洗ってあげたし~。


「ごち~ごち~。きゅっきゅ」

「くすぐった~い! きゃっきゃ!」

「がまんちて!」


 うん。今度は背中を洗ってあげて。


 わたしもね、フォローを精一杯してあげましたよ。

 で、ソラちゃんが先に湯船に入ったときにそれは起こった。


 いつもはね、湯船の中でジェノさんに抱かれて座ってるでしょ。

 今日はジェノさんが居なくて、そのまま座っちゃったんだよね。

 うん。湯船の深さ70センチくらい? そこに座っちゃうと頭の先まで湯に浸かっちゃいました。

 しかも、勢いよく座ったから、いつもは頭の位置にあるジェノさんの胸のクッションが無くてね。


 ゴン! ぶくぶくぶく……。


 後頭部を湯船の縁にぶつけて、溺れました。


「「おねえちゃぁぁぁん!」」


 マリーちゃんに引っ張り上げられて、ソフィアちゃんが外に飛び出していって助けを呼んできてくれました。

 3歳と5歳児に助けられちゃう6歳児……。


「ソラ様!?」

「まぁ! ソラちゃん!」

「マナファリス様! ヒールを!」

「はい!」

「ソラリスや! だいじょ――」

「男は入ってくるなぁぁぁ!」

「ぐぼぁ!」


 場外でもパパが死に掛けてたらしいよ。

 緊急時でも、嫁入り前の女の子の裸を見ちゃダメっていう決まりでもあるのかな?

 パパ、ごめんね。


「うわぁぁぁん! ジェノしゃぁぁぁん!」

「あ~! ソラ様! 私が数時間でも数千年でも、ずっと一緒に入り続けてあげますからね!」


 ちょ! ジェノさん? 入ってあげるじゃなくて、入り続けてあげますって、それは無理じゃないかな? 融けちゃいますよ?


 まあ、ソラちゃんの、おねえちゃんだもん! 作戦は失敗だね。


 ――ジェノしゃんといっちょじゃないと、あぶないね!


 そうだね……。


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