第95話:いっぱいいたら、たのちい? の、ひ!
皆を乗せた馬車は、森の中を一直線に駆け抜ける。
本来なら、木々が生い茂って道なんてないはずだけど、なんていうかね、森の木がズズズって移動して、道を作ってるんだよ。
まあ、森の精霊女王トレンティーさんが乗ってるからね。
で、通り過ぎたところは、また深い森に戻っていく。
400年間、人族が突破出来なかった森。
それがこうも簡単に、しかも、最短距離で森を抜けれるっていうね。
「さあ、獣人の村に着いたぞ」
馬車が村の手前、訓練場になっているところにゆっくりと止まる。
「ソラ様、ソフィアさんを起こしてもらえますか?」
「うん、おこしゅ」
ソフィアちゃんは、花畑を作り出したソラちゃんに感動して、すっかり懐いてソラちゃんに抱きついて眠っちゃってた。
妹ができた感じかな。でも、1年後には背の高さは追い抜かれちゃうんだろうね。
――ちかたないね。あたち、おおきくなれないち。
うん。
周りの子達が、大人になって、結婚して子を産み、そんな流れの中で、ソラちゃんとの関係はどうなっていくんだろう?
いや、そんな考えはやめよう。わたしは、ソラちゃんの幸せを精一杯見守る。悠久な時を生きることになっても、わたしがずっと一緒に居る。
ソラちゃんは1人じゃないよ。
――ソラしゃん、なにいってるの? わかんないよ? むじゅかちい、はなち?
いや、ちょっとシリアスな感じを出そうかと。
――あたち、おしりあるよ? ここでおしりだしゅの?
だめぇぇぇ! そうじゃない! そうじゃないんだよ、ソラちゃん! しりだす、じゃないから!
馬車から降りると、獣人の人達が集まってきてた。
この国のトップ、パパの出迎えかな?
「すげぇ! 本当に人族を連れてきたんだな!」
「ソラ様のお友達みたいだぞ」
「みんな小さいな」
「ちょ、グランゾ様、邪魔。体が大きいんだから、もっと隅に寄って!」
「うむ。すまぬ。……みんな俺の出迎えじゃないのか?」
「「「は? 人間の子供を見に来たんだよ」」」
魔王国 パパの扱い 酷すぎる。
いや、うん。四天王のみんなも、パパと友達って感じだしね。
「凄い……アヤネちゃんみたいなのがいっぱい居る」
マグア君? アヤネちゃんがいっぱい居たら、この人数だけで人族の軍団を壊滅できちゃいますよ?
いやほら、アヤネちゃんの強さって、獣人の枠を超えちゃってるんだよね。
ソラちゃんが特別懐いた人達って、全員が精霊の祝福やら加護をもってるしね。
アヤネちゃんは加護持ち確定だね。
……アリアちゃんも、将来は人族の限界を超えそうだな……。
「あたちも、いっぱいふえよかな?」
はい? 何言ってるの? ソラちゃんがいっぱい?
――たのちくなる!
全員が予測不能な言動をして、世界を大混乱させるんですね?
……やめて! ツッコミすぎてわたしの精神がもたないからぁぁぁ!