第90話:でんしぇつきゅうの、なまえ? の、ひ!
「あ~う~……」
アリアちゃんとアヤネちゃんに、両サイドから手を引かれ、ズルズルと抵抗虚しく引かれていく。
周りから見れば、捕獲され、連行される宇宙人……。
「ソラちゃん。怖いのに、どうして前衛など希望したのですか?」
「いやって、ちただけ……」
アリアちゃんの問いに、絶望を搾り出したような声で答える。
まあ、話を聞かずに実行したソラちゃんが悪い。
「まあ、私も護衛として同行するから、大丈夫だよ」
「う~……」
「はい。もうここまで来たら諦めて、馬車に乗るよ~」
校門の外に待機していた馬車に、強制的に乗せられる。
もうこうなったら頑張るしかないよね。
――う~……。
森に入る前から重症だね……。
王都を出てから2時間ほど。大きな森が見えてきた。
森の手前、森から50メートルほど離れた平原に、テントがいくつか設営されている。
そこへ、馬車はゆっくりと停車した。
「さあ、ソラちゃん、降りますわよ」
「あたち、おるちゅばん」
椅子にしがみついて、必死に抵抗する。
と、そこへ、白髪で一部が白銀の髪をした人物が、馬車の昇降口から顔を覗かせた。
「あらあら、ソラちゃん、どうしたの?」
「ばぁちゃ!」
馬車から飛びだして、ばぁちゃの腰に抱きつく。
「マナファリス様、どうしてこちらへ?」
「医療班として、この授業に参加しているのよ」
準聖女として、精霊の祝福を受けたばぁちゃが参加するってことは、それだけ危険な授業なのかな?
まあ、モンスター相手の実戦だから当たり前か。
「ソラちゃん、頑張ってね」
「うん、がんばる!」
さっきまで馬車でお留守番するって言ってたのに。
――もぉぉぉ! がんばるの!
はいはい。
実戦研修に参加する生徒が、勇者の前に整列する。
特待クラスの皆は1つのチームとして全員参加だけど、他のクラスは、剣術と魔法の成績が上位の者のみの参加のようだ。
「よし。みんな防具の確認は大丈夫か?」
防具……。みんなは、学園の備品の革でできたチェストアーマーと腕を守るガントレット、脛当てを身につけている。
そんな中、ソラちゃんはネコミミ帽子だけを被る。うん、4歳児の体にピッタリなサイズがなかったというね……。
「ねこみみぼうち、かぽ!」
「「「かわいい!」」」
女子達に大人気である。
「当然よ! 私がデザインしたんだからね!」
「「「トレンティー様!」」」
葉で出来た翼を羽ばたかせて、空から降りてきた。
――パパもきたのかな!?
いや、トレンティーさんだけっぽいけど。
「ソラちゃん、これプレゼント。世界樹の樹皮のペンダントよ」
「やった!」
トレンティーさんに首にかけてもらった。
「危機を自動で察知して、守ってくれるわ」
「しゅごーい!」
さらに、魔力を流すことによって、防具に変化するらしい。
世界樹っていうだけで国宝級なのに、凄い機能まで付いちゃってるから、伝説級なペンダントになっちゃってる。
――ちぇかじゅじゅだんと、しゅごいね!
うん。
武器の、ちぇかじゅのだ。防具の、ちぇかじゅじゅだんと。ほんと、凄い名前つけたね……。