第85話:ねこみみぼうしで、おでかけ! の、ひ!
「わー! かわいい!」
鏡の前で、頭に被った帽子を両手で掴みながら言う。
白銀の髪を隠す帽子。
黒猫さんの顔をしていて、しっかりと可愛いネコミミが付いてる。
勇者の助言、「ソラリスちゃんの髪色は特殊で、市民街に行くときは、その髪を隠したほうがいい」てことで、トレンティーさんとジェノさんが作ってくれた。
まあ、パパ達にしっかりと、勇者に街まで行っていたことが報告されたわけで。
――ゆうちゃの、つげぐち、ゆるしぇないね!
いや……心配してくれたんだからさ?
――ゆうちゃぁぁぁ!
あかんわ。あの感動の仲直りはなんだったのか……。
パパとトレンティーさんに怒られちゃったから仕方ない。
……逆恨みだけど。
「ソラリスや。準備は出来たかの?」
「できた~」
部屋に入ってきたパパに駆け寄って、抱っこちてポーズをとる。
「おお。服も可愛いし、帽子も可愛いの」
「えへへ」
抱き上げられて、微笑みあう。
今日はパパと2人で街に行く。
パパとデートでソラちゃんもご機嫌だ。……さっきまで勇者にキレてたけど。
「では、行ってくるぞ」
「いってくる~」
待ちに待った街にいくぞ~!
――しょだね。
……。
帽子を被って、白銀の髪を隠せば目立たないって?
市民街に入った途端に、凄く注目されてるんですけど。
「わはは! 俺の巨大さに皆ビックリしているんじゃな! これは盲点だったわい!」
「パパ、でかいもんね!」
う~ん。街に行きたいっていうのは、わたしとソラちゃんの望みだったけど、これは何か違う。
目立たずに、普通にお店とかを見て、お買い物して……そんなことを望んでたんですけど。
それだったら、アヤネちゃんは……狐人族ってことで、耳と尻尾が目立っちゃうからダメ。
ジェノさんは、尖った耳でエルフって分かっちゃうけど、全体的な見た目は人間と変わらないから、ジェノさんと来るべきだった?
――もぉぉぉ! パパといっちょがよかったの!
だよね~。
パパと一緒だったら、聖女の加護で全ての悪意や攻撃は無効化されるから、護衛もいらないし、問題はそこに居るだけで目立っちゃうことくらい。
ま、いっか。
抱きかかえられて、高い視線から街を見る。
今居るのは、冒険者ギルドがあるところで、周囲には宿屋、雑貨屋、武器屋が多く、大通りには飲食関係の露店が並んでいる。
行き交う人も、いかにも冒険者。その区画に適した店が集まっているって感じだね。
「さて、ソラリスが来たことがあるところまでは来たが、他に行きたいところはあるかの?」
「ばぁちゃに、あいにいこ!」
「ばぁちゃ? ああ、特別授業をしてくれている、教会のか」
「しょう! きょかい!」
「じゃ~、いこ~かの」
いつの間にか回りに集まっていた人達が人垣になっていて、パパが歩きだすと進路から慌てて避けた。
今度来るときは、パパが目立たない方法を考えたほうがいいと思う。
「なにあの子、かわいい!」
「ネコミミ帽子なんて売ってたか? すげ~可愛いな」
「いや、あの子自体がすんげ~可愛いオーラを纏ってるんだ」
ソラちゃんと、ネコミミ帽子も目立ってた。