第83話:しゅくふく~! の、ひ!
祠から出てきた5人の精霊。
まあ、その中の1人はトレンティーさんなんだけど、他の4人は……。
「トレンテーしゃん、しょのひとたち、だれ?」
「あら? ソラちゃんは、自分の中にある4大精霊の加護の人達を知らない?」
「はじめて、みるよ?」
口元に右手の人差し指をそえて、コテンと首を傾げる。
「「「かわええ」」」
威厳高く澄ましていた顔が、途端にくしゃっと崩れ、頬が緩々な顔になる。
ソラちゃんの仕草には、誰も勝てまい。
「我は」「私は」「あたいは」「わしは」
「「「ぬ!?」」」
みんな同時に名乗ろうとして、睨み合いなっちゃった。
「はいはい! 右から、赤い髪した男が火のイフリート、水の髪がウンディーネ、緑がシルフィー、残りがガイアス」
「「「トレンティー様、順番に適当になってませんか?」」」
「しかも、わし、ガイファスだし……」
名前まで間違ってますよ!
――べちゅに、いいよ。おぼえられなかったし!
覚えてあげて!
「あの……あなた方が精霊様ということは、今までの光の玉は……」
「「「ちっ! 聖王国の関係者が話しかけてくるなよ」」」
酷い嫌われようだ! 聖王国が他種族殲滅の発祥だから仕方ないけど!
「あい! あたちも、ちりたい!」
「「「喜んでお教えしましょう!」」」
「ようしぇいしゃん、でちょ?」
「「「……はい」」」
答えを言わせてあげて! ちょっと大人しくしてようか、ソラちゃん!
「あの……妖精だとしたら、今までどうして魔法の威力が上がっていたのでしょう?」
「思い込みよ」
「は?」
「魔法は精神状態に左右されるものよ。妖精の悪戯を、精霊だと思い込んで、精神状態に影響を与えて威力がアップしたんでしょ」
――しぇいちんじょうたい、だって。おもちろいね。
うん。だから普段からもうちょっと落ち着こうか、ソラちゃん。
あ、でも待って。てことは、精霊だと思い込んでたのが、妖精だったわけで、最後に残ったアリアちゃんの精霊降ろしは……。
「おねえちゃんのかご、ないの?」
「ソラちゃん……」
みんながアリアちゃんに注目した。
なんか、微妙な雰囲気になっちゃったけど……。
「ふふふ。アリアちゃんには、加護とはいかないけど、私の祝福が既に付いてるわよ」
「え?」
「ソラちゃんと遊んでくれているし、お城の花壇で花を育ててくれてるでしょ? 使用人に任せないで、自らの手を土で汚してね。自然を愛する心に、祝福を」
「「「聖女ソラリス様に慕われる人族の子に、我らも祝福を」」」
4人の精霊から、赤、青、緑、黄の光の玉が出てきて、アリアちゃんの体にす~っと入っていった。
「自然を愛する心を失わないかぎり、祝福はいつか加護へ昇華するでしょう」
「はい!」
トレンティーさん達は、微笑みを残して消えていった。
「おお……。自然を司る精霊様方のなんとも美しい姿でした……。いつかまた会えるように、皆さん、自然を愛しましょう」
「「「はい」」」
皆は涙を流し、天を仰ぎ見ている。
姿を見れたことに、凄く感動したんだろうね。
――トレンテーしゃんは、いえにきたら、いちゅでもみれるのにね。
ソラちゃん、それ、言っちゃダメだよ。感動が台無しになっちゃう。
「トレンティー様は学園にいつも来るから、皆さんはいつでも会えますよ? ていうか、何回も会ってますよね?」
「「「あ!」」」
ジェノさぁぁぁん!
――いっちゃた!