第82話:しぇいれいしゃん、でてきて~。 の、ひ!
さて、魔王国内では、一定の気候に保てられていたため、年中春みたいで過ごしやすかったんだけど、人族の国ではちゃんと季節がめぐるらしい。
春に入学して、今はすでに初夏に差しかかろうとしている。
――ソラしゃん……あちゅいね。
だね~。
制服は、上着を脱いでブラウスになっているんだけど、それでも照り付けてくる太陽がかなりきつい。
そんな中、ジェノさんに抱かれて、魔法練習場に向かう。
「ジェノしゃんは、あちゅくないの?」
「エルフは精霊の眷属、特に私は精霊女王トレンティー様の眷属ですから、耐性が強いんですよ。なので、暑くもなく、寒くもなくですね」
「いいな~」
自然を司るのが精霊だしね。その精霊を怒らせた結果が、人族世界の大地の荒廃……トレンティーさんは怒らせちゃダメだぞ!
「おねえちゃんは……」
アリアちゃんはラチカさんの背中でグダってる!
暑さに弱すぎ! 普段は、これぞ王女様! って感じなのに。
これ、真夏が来たらどうなるんだ?
「ソラちゃん……練習場に着いたら……木陰で練りの練習だけをしましょう……」
「あ、あい……」
練習場に着くと、教師と、初めて見る人が立っていた。
白いローブを着た、なにやら偉そうな男性だけど。
「え~、今日は、このクラスの魔力が一定値に達したということで、これから精霊降ろしを行う。精霊に祈り、認められたものは、加護を授かることが出来る」
へ~。人間でも加護を受けることができるのか。
「ほほほ。私は教会で司祭をしている、ハラグーロと申します。精霊降ろしの儀式を行いますので、祠に行きましょう」
ここまで来て、場所移動のようだ。
その場所は、学園の裏庭っていうのか、学園の裏の少し開けた場所で、小さな林の入り口に、小さい祠があった。
木々がちょっと枯れかけて、元気がなさげなのだが、大丈夫なのかな?
「さあ、順番に祈りを捧げてください。祈りが通じれば精霊が舞い降り、加護を授けられるでしょう」
――しぇいれいって、どんなのかな?
え? 毎日みてるでしょ?
――え~?
トレンティーさん……もうちょっと、ソラちゃんにアピールしたほうがいいですよ?
1番手は、自称、賢者の弟子ブーラス君だ。
「我が求めに応じ、そのお姿をお見せください」
ごくり……と、みんなが固唾を飲み込んで見守る中……。
「認められなかったようですな。しかし、気にすることはありません。精霊に認められるのは、100人に1人程度なのです」
「はい……」
賢者の弟子、泣きそうである。
その後、数人の子が挑んだけど、何も起こらず。
残りは、ソラちゃんとアリアちゃんと、もう1人。
「僕の名はハーベルク。我が求めに応じ、姿をお見せください」
両手を胸の前で組み、祈りを捧げると、祠から小さな光の玉が飛び出してきた。
「おお! 精霊がお見えになりましたぞ! ハーベルク殿、あなたは精霊に認められ、加護を受けましたぞ!」
「「「おお~!」」」
――ソラしゃん、あれって、しぇいれい?
いや、妖精だよね?
え? 妖精を精霊と勘違いして、みんな今まで喜んでたの?
「では……王女の御二方、100人に1人が出てしまった後で望みは薄いですが……どちらからしますかな?」
すげ~煽ってくるな、この人。望みが薄いってなんだよ? 確率じゃなくて、認められるかどうかだろ?
「ソラちゃん、わたくしは、少し心を落ち着ける時間がほしいので、お先にどうぞ」
「あい!」
ソラちゃんが祠に向かってとことこ歩いて……て、あれ? わたしたちって、既に精霊の加護を持ってるけど……。
「でてきて~」
短い! て、それって祈りなの?
で、祠がピカァァァって輝いて、出てきましたよ。光の玉じゃない、5人の人影が。
「あら、ソラちゃん? 精霊召喚したのね?」
「しょなのかな?」
いや、うん。多分こうなるだろうなって、思ってた。
誤字、脱字報告してもらえると嬉しいです。
――ソラしゃん、いっぱいまちがえるもんね!
そうだね……。
――いちゅも、よんでもらえて、うれち、ありがとごじゃましゅ!