第81話:しゃくしぇん、かんがえちゃった! の、ひ!
剣術は、ソラちゃんが好きな授業の1つ。
おもいっきり体を動かせるから。
この授業の教師は勇者で変わらずだけど、ソラちゃんの相手をするのが、護衛騎士として学園に来ているアヤネちゃん。
獣人特有の力と俊敏が高く、さらに10歳にして実戦経験が豊富という、人族なら一流の剣士に位置づけられる。
「いくよ、ソラちゃん!」
「こちゅかかてこじ!」
なんて言ってるかわかんな~い! 落ち着いて~! 興奮しちゃダメ!
ていうか、剣はわたしでしょ? 交代しないの?
――むふふ。いいかんがえ、あるの!
え~。むふふって、悪い考えのときの含み笑いだよね~?
――しょれは、あとのおたのちみ。
楽しめないんですけど!?
「いんちかいほー! ふぃじあっぷ! くいっく!」
いきなり全開ですか!?
「いいね~! ソラちゃんが本気なら、私も本気でいくよ~! 闘気武装!」
アヤネちゃんから溢れ出した光が、全身を覆っていく。
多分、身体能力アップと、闘気によって守備力がアップしてるのかな?
「た!」
ソラちゃんが地を蹴って真正面から突撃。
「うわ! 今までと違う動き!?」
あ、はい。今日はわたしじゃないので。
アヤネちゃんが間合いにに入った瞬間、横薙ぎでソラちゃんを迎撃。
世界樹の剣でそれをガードしたけど、体重の軽さで吹き飛ばされる。
着地と同時にまた突撃。
今度は同時に剣を振り下ろして、パン! と剣が弾け合う。
――アヤネちゃん、おもったこうげき、ちてくれない。
うん? 何か狙ってるの?
――ちたから、ぶんって、ちてほしいの。
下からって、カウンター狙い? 振り上げを狙うんだったら、上段からの振り下ろしを受けるんじゃなくて避けないと。そしたら繋げて下からの振り上げをしてくると思うけど。
――しょか。むふふ。
その笑い方……。何か企んでます? だから直線的な攻撃しかしないのかな?
「隙あり!」
うわ! ソラちゃんと会話してる間にアヤネちゃんから来た!
アヤネちゃんは身を屈めて、地を這うくらいに突っ込んできた。
で、その体勢から繰り出されるのは、下段からの振り上げ!
その剣に合わせるように、剣で受け止めて、同時にソラちゃんが地面を蹴って大きく後方にジャンプ!
結果、アヤネちゃんの振り上げの威力と、ソラちゃんのジャンプが合わさって、高く吹き飛ぶ。
「やった!」
喜びながら、学園の塀を越えていく。外へ向かって……。
――むふふ。ぬけだち、しぇいこう! まち、いこ!
とんでもないこと思いつくな、この幼児さんは!?
――わざとじゃないち~! あくしでとだち~!
アクシデントなんですか!?
わたしの叫びも虚しく、塀を越えて落下。あとは着地したら……。
ぼすん。
……たまたま、そこを歩いていたとても巨体な人……パパに受け止められましたよ。
あ、そういえば、街の外に花畑の土地を見に行くって言ってたね。
「パパ!」
「ソラリス! どうして空から降ってきたんじゃ?」
「パパに、あいたかったの!」
「そうかそうか」
あれぇ? 目的が書き換えられてるぞ~。
「ソラリス王女様? え? え?」
護衛の騎士さんが、こっちを見たり、空を見たりしている。
突然、空から幼女が降ってきたらビックリしますよね~。
「ソラちゃ~ん! 大丈夫? あ、グランゾ様!」
「おお、アヤネよ。授業中かの? ソラリスが降ってきてビックリしたわい」
「はい。剣術の授業で模擬戦してたら、ソラちゃんが吹き飛んじゃって私もビックリしたんですよ」
「あたちも、びっくり」
狙ってやってましたよね! もうソラちゃんにいろいろとビックリされすぎて疲れましたけど!
――ソラしゃん、しゃくしぇん、ちっぱいだね。
わたし何も知らなかったよ! 作戦は事前に相談して!