第8話:にゃまえ、にゃ~に? の……ひ!
パパが出来てから、この子の感情も明るくなった。
基本的には、行動は俺が主体だけど、パパが近くに居るときは感情に主導権が奪われる。
パパがそんなに好きか?
――むぅぅぅ!
いや、ごめんて。そんなに怒るなよ。
好きだよな、うん。
俺、全戦全敗である。
で……だ。俺は気付いた。
俺って、理性を担当してるんじゃないかって。
3歳児の感情、俺と言う理性。しっくりとくる。
で、理性が全戦全敗。言っておくぞ、理性を無くした感情は最凶だぞ!
さてさて、そんなやり取りを何回かした数日後、ついに名前が決まったということで、トレンティーさんに抱かれて円卓の部屋に向かった。
パパが視界に入った途端に感情が騒ぎ出し、行動権が奪われる。
ジタバタと暴れる俺にトレンティーさんは苦笑いを浮かべて、俺を降ろした。
「パパ!」
待ちきれなかったようで、すぐにパパに抱きつきに行く。
「おお! 会いたかったよ!」
パパ、魔王の威厳も無くしてデレデレである。
トレンティーさんも近づいてきて、パパの首にしがみついた俺の頭を優しく撫でてくれる。
「そうじゃ! 名前を決めたんじゃった!」
「にゃまえ?」
「そうじゃよ~。では、発表します! ビシャラグス。君は今から、ビシャラグスじゃよ」
……は? なんですかそれは? どこの魔神ですか?
「魔草の名前でな。花言葉は、純真、優しき心じゃ」
どうして名前は禍々しいのに、花言葉は清らかなんですかね!
あ! 感情がキラキラして喜びだした! ちょっと待って! 本当に待って!
「ねぇ……グランゾ。その名前の読み方って、古代魔族語よね? 人間の子なんだから、そっちの言葉で付けたほうがよくない?」
トレンティーさんナイス! 魔族と人間の言葉の違いは分かんないけど、きっとこんな禍々しい名前とは違うだろ。……違うよね?
「なるほど……そうじゃな。ソラリスとビシャラグスなら、どっちがいいかの?」
――どっち、いい?
あ、俺にも決めさせてくれるのね。
ソラリスがいいぞ。
――え~。
いや、あのな、こっちの名前のほうが、きっとパパももっと可愛がってくれるぞ。
「しょらりしゅ!」
「おお! ちゃんと言えてないが、ソラリスで決まりじゃ! 可愛いの~」
頭を撫でられて、感情も大喜び。
俺も、ソラリスに決まって大喜び!
「かかか! よかったね~、ソラリスちゃん」
と、骸骨の人も顔の部分のドクロが変形してるくらいデレデレ。
そんな骸骨の人の顔を見詰めて。
「にゃまえ……にゃに?」
そういえばそうだ。今更ながらに、この人達の名前を知らないぞ。
「かかか! 俺の名前は、ホーネ・ボーンといいますぞ。姫様」
「ほね!」
いやいやいや! 間違ってないけど! 見たままそのままだけど! 失礼だからそこはちゃんとホーネって伸ばそ!
今度は竜人の人をじっと見た。
「俺は竜人のリュードだ」
「リュ~!」
ドも発音してあげて?
ていうか、竜人……ドラゴリュート……リュード。
なんかこの人達、見た目と名前が関連付けられてるな。
最後に、犬耳の美青年がずいっと前に出てきた。
あれ? 最後? 最初に会ったとき、魔王パパの他に4人居たと思うんだけど、気のせいだったか? まあ、いいか。
名前をしっかりと聞いて、理性の俺が後で教え込まないとな。
「今度は俺だな。俺は」
「わんわん」
名乗らせてあげて!