第79話:かていほうもん、しゃれちゃった! の、ひ!
3年計画。
まあ、大層な名前が付いたけど、実際にバタバタやっているのは、当事者のソラちゃんよりも、周りの大人達っていうね。
ソラちゃんは無事な卒業を目指し、今日も自由奔放に授業を抜け出しております。
ジェノさんは授業中は、待機室でトレンティーさんと3年計画の打ち合わせをしている。
てことは、抜けだす隙が出来るということで。
本当はね、わたしもソラちゃんの抜け出しを止めたいんですよ?
でも、無理なんだよね~。
わたしですら、リンバーグさんが教科書を読み、黒板に書かれたものをノートに写していくという単純作業は、退屈としか言えない。
それに加え、ソラちゃんは幼児ですよ? 集中力が続くわけがないよね?
ということで、アリアちゃんがノートに目線を落とした隙をついて、脱走。
ソラちゃんって、実は隠密スキルでも持っているんじゃない?
で、どこに行くの?
――まち、いってみよ。
学園の外? 貴族街に行くの?
――もぉぉぉ! しょこは、まいにちいってるでちょ!
まあ、家から学園まで毎日通学はしてるね。抱かれてだけど。
――おみしぇ、みにいこ。
ああ、はいはい。市民街で、お店を開くために下見をしたいと。
1人で行っていいものか迷ったけど、止めても聞かないからね、この困った感情ちゃんは。
学舎を出て、前庭をぽてぽてと歩き、守衛さんが立っている校門を抜け……。
がし!
肩を掴まれて、抱き上げられ、にっこりと微笑を向けられ、こちらもにっこりと微笑をお返し。
「まだ昼食前で、学園は終わってないですよね?」
「しょだったかな……」
「そうなんですよ。まだ私たちも昼食を食べてないですからね」
「しょか~」
なんて、会話を交わしている間に、もう1人の守衛さんが学舎のほうに駆け出していった。
これは……報告に行ったね。トレンティーさんが来ちゃうパターンかな。
――おろちてもらって、にげよ!
え~? 降ろしてくれるかな~?
「おろちて」
小さい手で、守衛さんの頬をペチペチ叩く。
暴力はいけないことだけど、守衛さんは嬉しそうだから問題なし。
「降ろしたら、逃げちゃうでしょ?」
「あい!」
素直に返事しちゃったぁぁぁ!
――ちかたないね!
あれから予想したとおり、トレンティーさんが来て、無事に保護された? ソラちゃんは受け渡された。
で、今は学園が終わって、家の中の広い応接間に居ます。
まずね、国王のスデリッチさんが座ってるでしょ~、その隣りにリンバーグさんが座って~、対面にパパとトレンティーさんが座って~、その後方にホーネさん、リュードさん、ウルガさん、ジェノさん、アヤネちゃんが、ずらっと並んで立っている。
魔王国陣営の威圧感で、スデリッチさんとリンバーグさんの顔が真っ青だ。
で、我等がソラちゃんは、パパの膝の上で、むふ~っと勝ち誇ったようにスラじいさんを抱いている。
この状況、どうして抜けだすの? という問いの、ソラちゃんの答え、ちゅまんないんだもん。から起こってしまった。
「ジェノ、授業内容はどうなの?」
「一方通行ですね。教科書を読み、黒板に書いて、それを写して、たまに内容の補足をしゃべるだけ。ソラ様じゃなくても、30分も耐えれませんね。しかも、歴史などは改竄が酷いですね」
――しょのとーり!
いや、そうなんだろうけど、抜け出しはよくないよ?
「歴史……ねえ? ソラちゃんが学園に入学が決まってから、1年も猶予があったのに、どうして真実の歴史に修正されてないのかしら?」
トレンティーさん。わたしもソラちゃんも、この世界の歴史なんて知らないし、抜け出しの理由は別のとこだと思うんですよ?
――なんかね、ちがうこと、ちたくなるの。
だろうね~。それが集中力のなさ、っていうんだろうね。
「真実と言われましても、長い時の中で、記録などは失われておりまして……」
スデリッチさんの言い訳に、トレンティーさんが水晶を取り出して。
「いいでしょう。500年前、何があったのか、400年前にグランゾが人族から私たちを救ってくれるまでの100年間を、1分1秒までもらすことなく見せてあげましょう」
お怒りですね? 100年間を1分1秒もらさずってことは、見終るのは、100年後ってことですね?
それ、見終わるころには、スデリッチさんとリンバーグさんは白骨になっちゃってますよね。
……ソラちゃんの抜け出しの話から、どうして歴史問題になったんだろう?
もちろん、パパと四天王さん達がトレンティーさんを命懸けで止めました。