第75話:だいしゅきな、ばぁちゃ! の、ひ!
ソラちゃんが抜け出さない授業のもう1つが、魔法の授業である。
魔法訓練所には、四隅に設置された魔法障壁発生の魔道具がある。
これは、パパとスラじいさんが作ったものだ。ソラちゃんが魔法を暴走させると周囲が吹き飛んじゃうからね。
「まりょく、ながしゅよ~」
ソラちゃんが起動装置に触れて魔力をながすと、4つの発生器から光が昇り、障壁の壁が出来上がった。
「ソラリス様の魔力は凄まじいですな」
と、魔法特待クラスの教師、宮廷魔導師長のカスターノさんが言う。
「カスターノ様が全力で魔力を込めて、ソラちゃんの出力の10%にも届かない……でしたわね」
「他種族殲滅などと……愚かでしたな……」
ソラちゃんが特別なだけだぞ~。アリアちゃんとカスターノさん、そんな死んだような瞳で見詰めないで~。
――えへへ。てれちゃうね~。
怖がられてるんだぞぉう!
「ファイアボール!」
「ストーンブリッド!」
「ウォーターショット!」
アリアちゃんたちが放った魔法が次々に的に当っていく。たまに外れても障壁によって外への被害はない。
「いいぞ! 次々に魔法を撃て! 魔力を使えば使うほど、回復したときに最大値が増えるからな! 同じ魔法を連続で使い続ければ、魔力を練れる量も増えて、その魔法の威力も底上げされるぞ!」
「はい!」
意外と熱血指導なんだよね。
そして、アリアちゃんたちが魔力を使い果たし、地べたに座り込んで、ついに……。
「あたちのばん!」
ソラちゃん登場。
「ばしゅん!」
いきなり前振りもなくぶっ放った!
当然、魔力の練る量を調整できてな~い!
直径10センチくらいの3つの水玉が、3つ並んだ的にそれぞれ飛んでいって。
ちゅどぉぉぉん!
的が爆発した。
――きもちいいね。
そ~だね~。
……いや、どうして水で爆発するのか、説明してほしい。
「……私が教えられるレベルを超えてますな。無詠唱に加え、魔法効果と魔法名が一致しないなんて……」
ばしゅん! だもんね~。理解できないよね~。
わたしも何が飛びだすか、分かんないんだよ。
「ソラリス様には、4回の授業のうち、1回は特別授業をしていただきましょう」
――とくべちゅだって。なんだろね?
なんだろね? 剣術と一緒で模擬戦かな?
……いやいやいや! 相手が死んでまうで!
後日。
特別授業は、学園の応接室で行われるらしい。室内ってことは、魔力コントロールの練習かな?
ジェノさんにドアを開けてもらい、中に入っていく。
その中に立っていたのは、修道服を着た、笑顔が素敵な白髪のおばあさん。
パパ襲撃事件のとき、ソラちゃんが唯1人、すぐに懐いた人物だ。
「ばぁちゃ!」
ソラちゃんが嬉しさを爆発させて、おばあさんの脚に抱きつく。
「あらあら、ソラちゃん、元気だった?」
「あい! ばぁちゃも、げんきだったの?」
「はい。おかげさまでね。みんなから他種族殲滅思想が消えて、今は穏やかに過ごせてますよ」
慈愛に満ちた手つきで頭を撫でられる。
もうね、それだけでソラちゃんの心がポワ~ンって温かくなるの。凄いね。
2人でソファーに座って、テーブルに用意させていたお茶とケーキを食べる。
「しょれでね、パパはしゅごいの。いっぱいね、どうぐをつくっちゃうんだよ」
「凄いわね。この国にはそこまで魔道具を作れる人は居ないわね」
「でちょ!」
穏やか~な時間がすぎていく~。
「あたちの、まほうもしゅごいの」
「あら? そうなの? でも、ソラちゃんにはそんな危ない魔法を使ってほしくないわ」
「しょなの?」
「ええ。ソラちゃんは優しい子なの。傷を与える魔法より、みんなを癒やす魔法がいいわ」
「りざれくしょんと、ひーる? あ、おはなをしょだてるまほうも!」
「まあ! お花を育てる魔法なんて素敵ね! その魔法でお花屋さんをしてみるのもいいわ」
「おはなやしゃん……ちてみたい……」
ソラちゃんに必要なのは、情操教育だったのかな?
小さい体で花に囲まれたソラちゃん……いいね! 将来の目標が決まったね。王女でお店が出来るのかは謎だけど……。
――ソラしゃん、きょうりょくちて?
喜んで! 任せて、ソラちゃん!