第68話:えらばれちゃた! の、ひ!
講堂に入ると、並べられた椅子の最前列に座っていたアリアちゃんが、わたしを見つけて駆け寄ってきた。
「ソラちゃん、遅かったじゃないの!」
言うやいなや、抱き締められる。
鏡の前で、ファッションショーをやられてました。さらに、何度もソラちゃんが脇道に逸れちゃいましてね?
――あたちの、せいにちちゃ、だめでしゅ!
いやいや、何度もジェノさんから手を引かれて戻されてたでしょ!
「一緒に行こうと、門の前で待ってたのよ? なかなか来ないから、先に来ちゃいましたけど」
「あちた、いっちょにいこ」
「そうね。一緒に通いましょう」
はい。約束しちゃいましたから、寝坊は出来ないね。
――はやく、おきなきゃだめよ?
ソラちゃんがそれを言っちゃうの?
まあ、ジェノさんに起こしてもらおうね。
で、……だ。
新入生が全員揃って、用意されていた椅子に座って待っていたら、勇者が壇上に現れた。
「あ~。みんな知っていると思うが、王弟、リンバーグだ。ここの学園長をやっている」
いや、わたしは知らなかったよ!? ていうか、名前すら初めて知ったよ!
――ゆうちゃ、おいちちょう?
うん? 美味しそう? ……って、ハンバーグじゃないから!? あれは食べれません!
「で、ここの壇上に並んで、順に自己紹介してもらって、反対側から降りて、次に王族の2人が入れ替わりに壇上に上がって、自己紹介をしてもらうんだが」
おっと、聞きのがすとこだったよ。
前半聞き取れてなかったけど。
えっと? わたしたちは最後に壇上に上がればいいんだね。
――おぼえておいてね。
うん。ソラちゃんだと覚えられないだろうからね。
――ちつれいちちゃうわね!
怒るんだったら覚えてよ! それくらいできるでしょ!
「ソラリス王女に、国賓として新入生代表のスピーチを」
「あい! できるもん!」
「「「……」」」
タイミングよすぎだろぉぉぉ!
「ぇうぅぅ」
「大丈夫よ。ソラちゃんだったら、スピーチも失敗しないわ」
打ち合わせと予行練習を終わらせて、アリアちゃんに手を繋いでもらって校門に向かっている。
で、いつの間にか大勢の前でスピーチをすることになって、ソラちゃんは唸っている。
そもそも、6歳児にスピーチって難しくない?
「おねえちゃん、かわろ?」
「無理よ~。だって、ソラちゃんは筆記試験でも高得点でしたし、剣術と魔法なんて、他の追随を許さなかったんですもの。国賓だということを除いても、結局、選ばれてたわ」
ふむ。加えて最年少合格しちゃったからね~。
「がんばりゅ」
「その意気よ。それに、グランゾ様と一緒に考えたら、素敵なスピーチができあがりそうですわ!」
「しょだね!」
本当にそうか? ソラちゃんが代表に選ばれて、うかれて親バカな文章が出来上がると思うんっだけど!