第67話:かいちゃった! の、ひ!
鏡の前で、出来立ての制服を着てポーズをとる。
今までワンピースしか着てなかったけど、上下別の制服を着た姿は……。
「ソラ様、かわいい!」
まさにそれだ。この一言しかない。
身長に合わせて作られているから、全てがミニサイズ。
「上はピンク、下は黒か。ソラリスの白銀の髪と交じり合って、可愛さを引き立ててるの」
「ソラちゃん、ポニーテールにして、青色のリボンつけてみようか?」
「トレンティー! おぬし、天才か!?」
「ぁうぅぅ」
いつもは元気いっぱいのソラちゃんが困っちゃうくらい、べた褒め攻勢が凄い。
気持ちは分かるよ。このまま成長したら、絶世の美女になるだろう。
だがしかし、残念なことに、魔王の因子の影響で、永遠の美幼女なんだけどね。
「グランゾ様、トレンティー様、そのくらいにしないと、予行練習に遅れちゃうよ?」
「おお! そうじゃった! アヤネ、護衛騎士として学園まで無事に送ってやってくれ」
「ジェノも、しっかりするのよ」
「「はい!」」
ジェノさんに抱かれ、学園に到着した。
今回の学園までの道程で、自分で歩いて通学は無理って痛感した。
4歳児程度の体力しかなく、歩く速度も遅い。
しかも、途中で興味を引くものを見つけると、道を逸れてそっちのほうへフラフラと行ってしまう。
途中でジェノさんに抱っこされたよ。
校門で2人と別れて、講堂に向かう。
――ひろくて、とおいね。
だね~。校門から学舎入り口まで行くまでに疲れちゃうね。
校門で別れたのは失敗だったかも。
校門から学舎までにある校庭がとにかく広い。
両脇には街路樹が植えられていて、迷うことはないけど。
ていうか、これって幼児だからだろうな。身長も、身体能力的にも、4歳児だもんな~。
「ソラリス様、おはようございます」
「きゃふ!」
後ろから挨拶されてビックリしちゃったね!
同じ制服を着てるから、新入生の1人かな? えっと確か……。
肩まで伸ばした髪で、色は茶色。背の高さは150くらいで、えっと……。
「だれ?」
聞いたほうが早かったですね!
「クロース・ビュルフラントです。侯爵家の次女で13歳です。同じ特待クラスなので、よろしくお願いします」
「よろちくおねがちましゅ」
「えっと……ソラリス様」
「えう?」
なんか、中腰になって、にじり寄ってきてますけど?
――なんだろね?
「抱いてもいいですか?」
「あい! しょのまま、ちゅれてって!」
そして、抱き上げられて、お子様抱っこで目的地へ。
ら~くち~ん!
――ね~!
……わたしたち、簡単に誘拐されそう。
そして、普通~に到着。
わたしたちが遅くて疲れちゃったのは、体力と歩幅が原因。
長い移動のときは因子開放しようかな……。
講堂入り口で何か記入しないといけないらしい。
わたしを降ろしたクロースちゃんは、さらさらと記入して、先に講堂の中へ入っていった。
残ったわたしたちは、椅子の上に立って……いや、座っちゃうと机の上が見えないからね? かろうじて見えても、記入用紙に字が書けないんだよ。
とにかく、用紙を読んでみる。
なりたい職業。今後の夢または目標。
この2つ。
う~ん? 職業って、聖女じゃないの? 普通の人だったら、兵士とか、騎士とか? でも、わたしたちは初めから決められちゃってるようなものだしな~。
「えっと……パパの……およめさ」
まちなさぁぁぁい! ちょっと主導権をわたしに!
――もぉぉぉ! やだ! かくの!
お嫁さんは職業じゃないから!
――むぅぅ! かいちゃったもん!
は?
「はい。よく書けましたね。中でお待ちください」
おわた……受付のお姉さん、いい笑顔だ。子供に向けた笑顔は慈愛に満ちてますよ。
……これ、公式文書としてずっと残っちゃいますよね?