第65話:くるくる、ちたら……。の、ひ!
全ての試験は終わった。
筆記、剣術、魔法。その3つの試験の全てで、ソラちゃんは大騒動を起こすという快挙を達成。
これからの学園生活、不安しかない。
場所を講堂に移して、入学説明会と、制服授与が行われた。
制服なのは、貴族と平民、貴族の中での裕福層と貧困層の差を無くそうというものらしい。
男子は紺色のズボンに青色のローブ。女子は紺色のスカートにピンク色のローブ。
さらに、特級クラスには黒色のマントが配られたんだけど、ここで問題が発生。
「パパ、みてみて! ぶかぶか!」
「一番小さいサイズでそれなのかの?」
膝下のスカートが、着てみれば足首まですっぽりのロングスカート状態だ。
ウエストなんて、手を離せばスポンと落ちちゃう。
あ、もちろん、普段着のワンピースの上からだよ。男子も居るのに、裸になるわけがないよね。
「ソラリス様の制服は、採寸して新たに仕立てたものを、後日お届けということでよろしいですか?」
と、事務員の女性が聞いてきた。
「いましゅぐ、きたいのに!」
「ソラ様、グランゾ様にちゃんとした立派なお姿をお見せしたくないですか?」
「ちたい!」
「でしたら、ぴったりな制服を作ってもらいましょう?」
「あい!」
ジェノさん、ソラちゃんの扱いが上手いな。
「では、計らせて……」
「いえ! ソラ様のサイズは、手の平の大きさ、足の大きさ、全ての指の長さまで私が把握してますので、記入した紙を後ほど渡しますね」
「は……はい」
ちょ! さすがにそこまで網羅されてると怖いんですけど!
仕立て屋の針子さんを総動員して3日で出来上がることを確認して、家に帰った。
昼食を食べた後、パパの膝の上でパパと一緒に入学の説明書を読む。
「入学式が1週間後にあるみたいじゃな。その前日に、新入生だけで予行練習をするみたいじゃから、ソラリスもそれに出ないとの」
「え~。めんどくしゃい」
そんなこと言わないで。練習は大事なことだよ? アリアちゃんも来るだろうし。
――おわったら、あしょべるかな?
時間があれば大丈夫じゃないかな。
「お、そうじゃ。ソラリスのやる気をだすために、合格祝いをやろうかの」
「やった! なにくれるの?」
パパが財布から出したのは、金貨だった。
それをソラちゃんが受け取る。
「しゅご~い! ぴかぴか!」
パパから降りて、ダイニングの中をクルクル回転しながらはしゃぐ。
「ぴかぴか~!」
「あらあら、ソラちゃんよほど嬉しいのね」
トレンティーさんの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「ぴかぴ……」
ん? 突然回転が止まったぞ? いや、動きは止まったはずなのに、視界がぐるぐる回ってる……。
――ぎもぢわりゅくなって……はきちょう。
ちょぉぉぉ! 目を回したぁぁぁ! 待って! ほんとに待って!
「きゃぁぁぁ! ソラ様!?」
「桶を出すから! あぁぁ……。アヤネちゃん、拭くもの持ってきて」
「はい……」
試験当日、家に帰ってからが大騒動の本番だった。
――くるくる、だめ……。
うん、そうだね……。