第63話:あたちに、おまかしぇ! の、ひ!
「パパ!」
魔力測定が終わって、すぐにパパの足にしがみつく。
どんなに剣術が強くて、魔力が桁違いでも、本人はまだ6歳の幼女だ。
甘えたっていいじゃない。
それに、昂ぶったソラちゃんの感情を、パパに甘えることで1度リセットしないと、わたしが疲れる。
「パパ、なにちてたの?」
「障壁を張るのを手伝ってたんじゃよ」
「ほんき、だちていいの?」
「それはダメじゃ。俺1人の障壁だと、押さえ切れんしの」
――じゃんねん。
仕方ないよ。トレンティーさんや四天王さん達が居ないんだから。
王都のど真ん中で大爆発なんてしたら、それこそ大騒ぎどころじゃなくなっちゃう。
「よし、それじゃ、ここでは魔力が低かった順から実技を行ってもらう。威力を見るわけじゃなく、錬度と命中精度を見るだけだから、無理に力を見せようとして、暴走させるなよ」
一番手は、平民で商人の息子。読み書きはもちろん、商品の仕入れなどで街から街への移動で、盗賊やモンスターの襲撃に対抗するため、剣と魔法を習得する必要があるのだろう。
彼は魔力は低くても、ただ魔力の塊を矢にして飛ばすマジックアローくらいは使えるようだ。
「うん。錬度はともかく、命中精度はなかなか良いな。よし、次」
その後もどんどんと進み、あの賢者の弟子の番になった。
その頃になってくると、ソラちゃんの身に問題が発生した。
さっきから、凄く視界が揺れてる。
――ねみゅたい……。
試験中だよ。まだ我慢して。
「ジェノしゃん……だっこ」
「はい。ソラ様」
抱き上げられて、ジェノさんの首にしっかりと腕を回して、目を閉じて……。
ああ……わたしの意識も閉じられていく……。
そんな中、賢者の弟子の声が微かに聞こえる。
「みて……王女……に……まけな……」
直後、ぼぉぉぉん! と、至近距離での小さな爆発音にビックリして目を覚ました。
「びっくりちた! なに、いまの?」
「少年が体内で魔力暴発を起こして、右腕が弾け飛んだんですよ。間近でソラ様の寝顔を鑑賞する時間を邪魔しやがって……」
――ジェノしゃん、おこってる?
うん。今日は一緒に寝てあげよう。
「治療術士を! くそ! 無理か? 術士でも四肢欠損なんて、治せないぞ!」
「ぐうぁぁぁ!」
痛そう……。
ま、わたしとアリアちゃんに対抗心を燃やした自業自得なんだけど。
それよりもだ……。
「痛い……痛いよ……」
「うあぁぁん! 父様、母様!」
周りに居て、爆発に巻き込まれた子達が可哀想だな。
「ジェノしゃん! おろちて!」
「はい。降ろしますよ~」
助ける?
――いたいのは、やだもんね。
そうだね。じゃ、まずは右腕を失った子だね。出血で死んじゃうかも。
――あい。
心を1つに。
「『りざれくしょん!』」
少年の体を光で包み、その光が失われた箇所に集まって、右腕を形作り、光が弾けた後には綺麗な右腕が再生されている。
これでもう大丈夫だ。後は……周囲で巻き込まれた子達。
りざれくしょんだと、ちょっと強すぎるね。
――だいじょぶ。なんか、なかで、ことば、うかんできた。
うん。じゃあ、心を1つにして、わたしにもその言葉を教えて。
――あい。こころ、ひとちゅに。
「『えりあひーる!』」
ソラちゃんの足元から光が広がって、傷ついた子達の怪我を治し、火傷も痕を残さず、それに留まらず、広がった光は、グラウンドの枯れかけた草を新緑に甦らせ、葉を付けてない老いた大木は、葉をたわわに茂らせた。
――やりちゅぎた!
だね……。