第60話:あしょびだよ? の、ひ!
第2試験は剣術だ。
この剣術と第3試験の魔法は、これで合格、不合格が決まるわけじゃなくて、クラス分けが主な目的らしい。
最初にやった筆記試験は、家庭教師などを付けて、しっかりと勉強すれば、年齢は様々でも、ある程度同じ成績になることが出来るけど、剣術と魔法は才能が重要になってくる。
同じ実力の者同士でクラス分けして、そこから教育によって伸ばしていく方針だって。
「よし、全員準備は出来たな」
勇者の声に、試験会場のグラウンドにみんな整列する。
周りを見ると、貴族の女の子達は、いつの間にか動きやすいズボン姿に着替えていた。
まあ、動きにくい丈の長いスカートは邪魔だからね。スカートが捲れて、中が見えちゃうかもだし。
わたしたちは、普段着の動きやすいワンピースだからいいけどね。
――みえても、オムツだちね。
ちょっとは恥ずかしがろうね?
「さて、剣術試験だが、今期は王女が2人居るってことで、先にそちらの試験から始めようか」
どうやら相手は木剣を持った勇者らしい。
「わたくしは、魔法が得意なので、1番手はソラちゃんに譲りますわ」
「あたち!」
はい! と、手を上げれば、周りから「かわいい!」なんて声が聞こえてくる。
まあ、見た目4歳だし、その仕草は可愛いの一言しかないだろ。
感情ソラちゃんの性格はあれだけど……。
「ソラちゃんか。その小さい体にあう剣なんかあったかな?」
「だいじょぶ、もってきた」
世界樹の枝を見せてから、剣の形に変えると、勇者がそれを見て驚く。
「えっと……それは、何ていうのかな?」
「ちぇかじゅのだ」
うん。名前が長かったね。覚えられなかったね。
さ、主導権を代わろうか?
「世界樹の枝!?」
通じたのかい! 襲撃してきたお城でもそうだったけど、どうしてソラちゃんのハチャメチャな言葉が通じるんだよ!
――はちゃちゃじゃないもん!
そうだね。ごめんね。
「ま、まあいい。武器は創世級でも、力は幼女だ。問題ない……。えっと、俺は防御だけするから、一撃でも当てれたら終了な。当てれなくても、実力をみる試験だから気にしなくていいぞ」
「わかっちゃ!」
勇者がすっと剣を構え……。
――ゆうちゃぁぁぁ!
うお! ビックリした! 仲良くなり始めてたのに、どうして急に怒って……。あ、あれか? 剣を構えた姿で、パパに斬りかかってところを思い出しちゃった?
――いんちかいほう!
え? あ、ちょっと、主導権を奪わないで!
「ふぇじあっぷ! くいっく!」
そこまでする!? 勇者逃げて! 超逃げて!
「気合は十分だな! さあ、来い!」
「てい!」
踏み込んだ地面が爆ぜて、一瞬で勇者の懐に飛び込んだ。
「うお!」
さすが勇者。振り抜きを咄嗟に反応して剣で受け止めたけど、勇者の剣が粉々に砕け散って、着地したソラちゃんが次に繰り出した横薙ぎの剣が、がら空きの脇腹に。
あかん、このままだと勇者が真っ二つに……。
「ソラリスゥゥゥ! 暇だったから見に来たぞ!」
「パパ!」
寸前で攻撃キャンセルがかかった!
パパが来た嬉しさで、ソラちゃんは急転回してパパに抱きつく。
パパ! 暇してくれててありがとう!
「おお、よしよし。今は何してたんじゃ?」
「ゆうちゃと、あしょんでた」
なんだってぇぇぇ! 遊びだったんかい!?