第59話:いいひとだった? の、ひ!
痛さが落ち着いたのか、勇者が立ち上がった。
「で、どうしてソラリスちゃんが、平民枠なんだ? 受付票には、国賓で王女だと記載されてたはずだが?」
立ち直りが早いな。パパのお城では、いつまでもいじけてたのにな。
――みとめないから!
何を?
「いえ……その……」
「はっきり応えろ!」
「家名がなかったので、平民だと決め付けて、記載事項まで見ませんでした!」
最悪だ、この男!
ん? 勇者がこっちを見てきたぞ。
「採点結果をみんなに知られてもよろしいか?」
――よろちいの?
うん。自信あるし、証拠にもなるしね。
「じちん、あるからいいの!」
ちょっと、ケンカ腰になるの止めようか。勇者は合格にしてくれようとしてるんだから。
「どれ……可愛い字だな」
点数は!?
「がんばって、かいたの」
「そっか、えらいぞ」
「えへへ」
て・ん・す・う、教えて~。
「書き取り、84点。計算、82点。平民枠だとしても間違いなく合格だな。どうして、これで不合格なんだ?」
「その年齢で、この点数はカンニングの可能性が……」
この男、どこまで腐ってるんだ。
あ、でも、わたしが見直して少し教えちゃったから、カンニングになるのか? でも、わたしとソラちゃんは、2人で1人だしな……。
「ソラしゃん、みなおちて、ちがったとこ、かきなおちた!」
ズバっと言っちゃった! ソラちゃん、正直者だ!
「そっか~。一生懸命に、真面目に見直しまでしたんだな。えらいぞ~」
「えへへ~」
褒められるたびに、ソラちゃんがデレていく……。
おそるべし、勇者。
「じゃ~、追加試験だ。ソラちゃん、プレートに書かれている番号は?」
「しゃんじゅ~に」
「よし。問題をだすから、この合格者表に答えを書いて」
「あい」
「さんじゅう、たす、に、は?」
すぐに分かったソラちゃんは、掲示板に向かって背伸びして……。
「とどかないよ?」
「「「かわいい……」」」
感動のシーンなんだからみんな真面目にやって!
「ははは! どれ、おじさんが抱っこ――」
「ソラ様に触れるな! この、ピーーーー!」
きこえな~い。ピーーーーの部分がきこえな~い。
「ソラ様を抱いていいのは私だけなんですぅ!」
いや、ジェノさん? 結構、いろんな人に抱きかかえられてますけど?
で、ソラちゃんが32と、正解の答えを書いて、無事に合格となった。
あとは剣術と魔法の試験だ。
こっちは、まあ、問題はないかな。
結局、その後、合格点を越えてても不合格になっていた他の平民枠の子も、無事に合格者になった。
さすが、王弟で勇者なだけはある。
――みとめてあげる!
そ、そうだね。