第58話:きれちゃうよ! の、ひ!
なぜか不合格となってしまって、ショックを受けてる。
でもね、ソラちゃんの場合は違うんだな~。
「ダメだったの? じゃ、これからいっぱい、パパとあしょべるね!」
いやん! 前向きすぎる!
……じゃない! この事態に理解してないだけだ!
――どちて、しょんなにおこってるの?
合格できてるはずなのに、不合格だったからだよ。
で、わたしの他にも怒っている人物が1人……。
おそらく、国王の次に権力を持っている女の子。
「どうしてソラちゃんが不合格なんですの?! 納得いく説明を求めます!」
アリアちゃんは、わたし以上に怒ってますよ。
「いえ……ですから……」
受付をした男性は、試験担当者の1人でもあったらしい。
つまり、試験結果は、身分差別者の裁量次第だったわけだ。
「ソラちゃんは合格点を超えてなかったのですか? 採点結果の開示を求めます!」
「それは……できません……」
説明もダメ、開示もダメ。なんだこの男。
アリアちゃんの剣幕を呆然と眺めていると、アヤネちゃんとジェノさんが駆け寄ってきた。
「ソラちゃん、どうしたの?」
「ソラ様、なにか揉め事ですか?」
どうやら、揉めているのを校門の外からでも見えたらしい。
「えっとね、おちちゃった」
「「は?」」
瞬間、2人の殺気が膨れ上がった。
「……国王自ら学園に招待しておきながら、不合格なの?」
「グランゾ様に報告して、すぐさま宣戦布告いたしましょう」
キレちゃってます。
――きれ?
すんごく怒ってるってこと。戦争になっちゃうかもね。このままだと、アリアちゃんとも敵同士になっちゃうよ。
ああ、でも大丈夫かな。パパは優しいから、戦争なんて……いや、ちょっとまて。親バカだぞ? 娘が傷つけられたとしたら、世界が滅ぶかも?
「お待ちください! これはちょっとした手違いで」
「しぇんしょう、だめでちょ!」
「だよね!」
「ああ! 怒ったソラ様の顔も可愛い!」
おいこら! 宣戦布告なんて言った張本人!
「おい、次の剣術試験に誰も来ないと思って来てみれば、なんの騒ぎだ?」
ん? なんか聞き覚えのある声が……。
「ゆうちゃぁぁぁ!」
それだ! て、落ち着けソラちゃん!
「叔父様!」
はい? アリアちゃん、今なんと?
アリアちゃんは自称勇者に駆け寄って、これまでの経緯を説明した。
えっと……アリアちゃんの叔父様ってことは、アリアちゃんのお父さんは国王で、勇者は国王の弟……王弟?
「おうてい?」
あらやだ、ソラちゃんが声に出しちゃった。
「おお! さすが聖女ソラリスちゃん。難しい言葉を知ってるね」
「うるちゃい!」
ガス! と、ソラちゃんの因子解放爪先蹴りが勇者の脛に突き刺さって、勇者は脛を押さえて転げ回った。
て、褒めてくれた人を蹴っちゃダメェェェ!