第57話:くろいろぷれーと? の、ひ!
入試当日の朝が来た。
前日まで、読み書きの練習はしたから、筆記のテストは大丈夫だと思う。
ていうか、王族としての入試だから、合格は確約されている。
と、このときまでは思ってたんだけどね……。
「いってきましゅ!」
「ソラちゃん、頑張ってきてね!」
「ソラ様、落ち着いて」
と、アヤネちゃんとジェノさんから激励の言葉を受けて、手を振って校門から中に入っていく。
入試は、最初に筆記をやってから、それに合格したら、剣術と魔法の実技試験をするらしい。
そのため、動きやすい普段着のワンピースを着てきたんだけど、周りの子供たちの服装は、どれも煌びやかな服だった。
男はズボンに丈の短い立派なローブ。女は装飾の多いドレス。
一目で、貴族だって分かった。
――みんな、きらきら、ちてるね。
だね~。
格の違いを競ってるんだろうか?
それだけじゃなくて、みんな結構な年上だらけだ。
「ソラちゃん、おはよう」
「アリアおねえちゃん、おはよう!」
アリアちゃんの登場で、周りの子達が散っていった。
アリアちゃんはこの国の王女だもんね。子供だからっておいそれと近づけないよね。
「一緒に受付しましょう」
「あい!」
――ソラしゃん、よかったね。まいごにならないよ。
そうだけど……。それってわたしのセリフじゃない?
受付まで行って、願書を出したときに引き換えでもらった入試資格者証明書を提出する。
「うんっちょ!」
背伸びして~。
――つくえ、たかくてとどかないよ!
99センチの弊害がこんなところまで……。
「ソラちゃん、貸して」
アリアちゃんが用紙を受け取って、自分のものと一緒に出してくれた。
「アリア様の受験票はこちらです」
と、受付の男性が金色のプレートを手渡す。
「中に入って指示された部屋でお待ちください」
「はい。部屋で待ってるわね」
「あい」
手を振って先に中に入っていく。
「で、ソラリス……家名なしか。王女と親しげだからどこの貴族かと思ったら、平民か」
うわ。アリアちゃんと態度が違いすぎる。
そもそも、魔王のパパの家名なんて聞いたことないけど。願書はパパの手書きだし、それに家名が書かれてないってことは、元からないってことだよね?
そりゃあ、質素なワンピースを選んで着てきたから、平民に見えるけどさ。
「6歳? ちっ! 年齢詐称までしてるのか」
なんだこの人? 身分差別者か? 見た目は確かに4歳児だけどね。
――ちけん、受けれないの?
いや、願書は受け付けてくれたから、大丈夫とは思うけど。
で、手渡されたのは、黒いプレート。
これ、明らかに平民枠だな。
指定された部屋に入ると、案の定と言うか、アリアちゃんは居なかった。
金色のプレートは、多分、王族と高位貴族だけなんだろうね。
で黒色は、平民と、商家の子供の枠か。
多少、身なりのいい子供が6人ほど席に座っている。まあ、どの子も年齢は10歳を超えているみたいだけど。
――がんばる!
そうだね。筆記と計算テストは合格点を取ればいいだけだし、得意なのは剣術と魔法だしね。
――あたち、まほう。ソラしゃん、けんじゅちゅ!
だね。
特別枠で合格確定じゃなくても、突破してやる!
試験は何事もなく終わった。
ジェノさんとの勉強の成果で比較的簡単に解くことが出来たしね。
ソラちゃんが書いた答案をわたしも見返してみたけど、80点以上は取れてるはず。
「ソラちゃん! 部屋に来ないから心配したのよ!」
「これ」
平民枠の黒いプレートを見せてやった。
「な?! どうして……」
アリアちゃんも驚くってことは、予想はあってそうだね。
「だうじょぶ、じちんあるから、けっかまつだけ」
「そうね……」
結果は、30分後に張り出された。
そこに、わたしとソラちゃんの黒いプレートに書かれた番号は無かった。