第52話:まけたくなかったの! の、ひ!
朝食後、アリアちゃんに育てた花を見せたいってことで、みんなで花畑に来た。
「凄く綺麗ですわ!」
アリアちゃんが花畑を見て瞳を輝かしている。
「おねえちゃんのとこ、はなばたけ、ないの?」
「小さい花壇はありますけど、栄養が少なくて、ここまで綺麗に花が咲かないの」
「しょなんだ?」
――どちて、えいよう、ないんだろね?
土の妖精がいないとか、そういうんじゃないの?
「ようしぇいしゃんが、いないの?」
「他種族殲滅なんて、馬鹿なことをやってしまった先人達の罪ですな。精霊や妖精は人間達の前から姿を消してしまいました」
スデリッチ国王が、悲しそうに言う。
農作物なんかも、年々その収穫量が少なくなってきているらしい。
精霊や妖精を怒らせた罰だな。
まあ、腕の一振りで森を作っちゃう精霊女王が、すぐ隣りに居るんだけども。
「トレンティしゃんに、あやまったら? ごめんなしゃいって!」
「え? あ、ごめんなさい」
と、アリアちゃんと国王が頭を下げると、着いてきていたメイドさんや騎士さん達が、いっせいに頭を下げた。
「ふふ。ソラちゃんの顔に免じて、許してあげましょう」
トレンティーさんが右手を上げると、花畑や草原から、一斉に妖精たちが舞い上がった。
「あなたたち、人間の土地に祝福を届けなさい。やりすぎてはダメよ。少しずつね」
妖精達は、四方に散っていった。
「こんな近くに精霊様が居るとは……」
名前しか名乗ってなかったからね。ビックリだよね。
ま、これでアリアちゃんの花壇も綺麗に花を咲かせるだろうね。
次に来たのは、魔法訓練場。
もちろん、ソラちゃん専用だ。
「障壁起動じゃ」
パパが、四隅の魔道具に魔力を流すと、訓練場を囲むように魔法障壁が張られた。
「グランゾ殿、ここまでする必要があるのですかな?」
「ふむ。先ほど見てきた湖と花畑じゃがな、あそこは何もない原っぱだったんじゃよ。それがの~ソラリスの魔法で地形がかわってもうての……」
「……」
あ~、この沈黙。やっぱりとんでもないことだったんだね。いや、信じてないだけかも?
「グランゾ様。わたくし、火の魔法が得意ですの。撃ってみてよろしいでしょうか?」
「おお。人間の魔法か。見せてもらおうかの」
では……と、アリアちゃんが的に向かって手を向けて、詠唱を始めた。
「ファイヤボール!」
直径50センチほどの火の玉が飛んでいって、的に命中。
的と周囲を炎で包んだ。
「さすが我が娘! 6歳にしてファイヤボールを撃てるなんて、同年代では居ないぞ!」
胸を張って、どや顔。
王国側の人達も勝ち誇ったような顔で拍手してるし。
まあ、ここで登場するのは、負けず嫌いなソラちゃんな訳で。
「こんど、あたち! じぇんりょくで、やる!」
「「「――っ!!!」」」
それを聞いたパパとトレンティーさん、それに四天王のみんなが左右に散開した。
「障壁全力展開!」
「魔力は出し惜しみしないで!」
これは、全力でやってもいいってことか?
――いくよ!
はいはい。
で、魔力がとんでもなく膨らんで流れてきた。それを全て練り上げ、塊にする。
「ぽい!」
『クエェェェ!』
なんていうの? 火の鳥? フェニックス? それが雄叫びを上げて的に突進。
ちゅどぉぉぉぉん!
大爆発。大炎上。大延焼。
燃え続ける炎が地面を溶かして、マグマの海を作ったよ。
的が近すぎた。障壁がなかったら、みんな焼け死んでるね……。
「アリア……帰ったら、基礎から特訓し直すか」
「はい……お父様……」
王国の人達はその威力に真っ青になって、パパ達は魔力を使い果たして倒れこんでた。
――やりしゅぎちゃった。
うん。そうだね……。
まさかフェニックスが出てくるなんて、予想してなかったよ。




