第50話:ぎゅって、できないけど、ともだち! の、ひ!
只今、何も見えません。
なぜかって、自己紹介を失敗したソラちゃんが、恥ずかしさのあまり、パパに抱きついてその胸に顔を押し付けてるからだよ。
おそらく、耳まで真っ赤になってる。
「いや、歳相応に可愛らしい娘さんではないですか。このアリアは王女として厳しく育てすぎてしまいましてな……子供らしい期間は短くて……」
「「「……」」」
フォローになってるのかな?
ソラちゃんが恥ずかしがっていても、会談は進んでいく。
「ふむ。国交を持ち、貴国にある学園に留学生をとな?」
「はい。6歳から入学資格がありますから、来年、ソラリス殿を入学させてはと」
――ソラしゃん。がくえんって、なに?
うん? ソラちゃんみたいな子供が同じ場所で勉強とかするところだよ。
――べんきょう、いや! あしょんでたい!
「では、決まりだな。ソラリスは来期から学園生じゃな」
ああ~。感情が闇に沈んでいく~。
「ほら、ソラリス。いつまでも恥ずかしがってないで、お世話してくれる国王さんに挨拶して」
「……よろちく」
拗ねて投げやりな挨拶になったな~。
うん? ソラちゃんが正面を向いたから初めて気付いたけど、アリアちゃんも俯いて何か暗い雰囲気だな。
――べんきょう、ちたくないんだよ! あたちと、いっちょ!
いや~。そうじゃないと思うけど。
「最後に、戦後賠償として……」
「――っ!」
あれ? 国王さんの言葉に、アリアちゃんの肩がびくっと跳ねたぞ?
戦後賠償って、あれだろ? 敗戦国が戦勝国に支払うお金とか?
――おかねって、なに?
お金っていうのは、それでものを買ったり出来るものだよ。
て、魔王国にはお金っていうものが無かったような?
アヤネちゃんの街でも、お店なんてなかったよね?
――なかったね! わかんないけど!
あ~うん。なかった。でも、それだと賠償ってどうするんだろ?
「わたしの娘、第一王女、アリアを」
「あたちの、ともだちになってくれるの?」
さすが、空気を読まない子だ。でも、今のタイミングは褒めてもいいな。
「え? あ……」
暗い表情をして俯いていたアリアちゃんが、驚きに目をぱちくりさせて顔を上げた。
多分、パパの嫁になるとか、婚約とか、そういうことを覚悟して来たんだろうな。
でも、ソラちゃんの応えは。
ともだち。
「ははは! スデリッチ王よ。我が方としては、賠償などいらんわい。だが、アリアよ」
「は、はい!」
「ソラリスは今まで、同族で同年代の友人は居なかった。ソラリスの友人になってやってはくれぬか?」
「喜んでお受けいたします!」
アリアちゃんは立ち上がって、優雅に淑女のお辞儀をした。
本当に6歳か? ソラちゃんがあれをやったら、オムツ丸見えになるのにな。
――もぉぉぉ! ちょっと、ちっぱいちただけでちょ!
はいはい。ほら、ソラちゃん、アリアちゃんによろしくねってしないと。
「アリアしゃん。ちっぽないけど、ともだち、なったね! よろちく!」
「はい。よろしくね、ソラちゃん。……ちっぽって、なに?」
「「「ちっぽ……」」」
何を想像してるのか知らないけど、尻尾だからね、尻尾!
最後にみんなの、ちっぽ……という言葉で、会談は終了した。
歴史的会談で、ちっぽ……。