第5話:初めて女性を見た日
ずっと部屋の中に居るから、今が夜かなんて分からないけど、強烈な眠気が襲ってきてベッドに潜り込む。
あれから呼ばれることもなく、部屋の出入りも自由で、基本的には放置されてるみたいだ。
いろいろ考えたいことがあるが、眠気が限界だ。
――おやすみ。
は!?
ベッドの中、下半身からの不快感で目を覚ます。
生暖かい湿り気が太腿から腰にかけて襲ってくる。
上体を起こして、恐る恐る布団の中に頭を入れる。
出来てたよ。オシッコで書いた世界地図。
とりあえず……。着ているものはどうすることも出来ないからそのままで、ベッドから降りて、濡れたシーツを部屋の隅に隠しておこう。
「うん……しょ。うん……しょ!」
濡れて張り付いたシーツに苦戦中。
「わ!」
体力の限界と握力の限界がきて、手からシーツがすっぽ抜けて尻餅をつく。
そのとき、見えてしまった……。
部屋の入り口で、心配そうに見守る4つの顔。
魔王、竜、骸骨、そして、完全な人型の青年になって、頭から犬耳を生やした狼男。
ずっと……覗かれてた!
「う……うわぁぁぁん!」
「な……泣かんでいいんじゃよ! ど、どうしたらいいんじゃ?!」
「「「お、俺に聞くな! 人間の子供の世話なんかしたことね~よ!」」」
そりゃそうだ。
わいわいと騒がしく、魔王たちに着替えをさせられて連れてこられたのは、円卓のある広い部屋。
魔王たちは椅子に座り、俺はその円卓の上にポテンと座っている。
椅子に座っても円卓の上まで頭が届かなかった結果である。
しゃくしゃくしゃく。ごっくん。
木の皿の上にある、切り分けられたマジックアップルを手掴みで食べていく。
魔力最大値上昇効果があるものをこれだけ食べるって、今の俺はどれだけの魔力値になってるんだろうか?
俺の……この子の体は小さい。それこそ、1個のリンゴじゃなくても、切り分けられた1欠片でも十分な量だ。
半分くらい食べたところでお腹がいっぱいになった。
「満足したかの?」
「あい」
うんうん。と、メッチャ優しい笑顔で頷く魔王。他の人達も緩みきってる表情でデレデレである。
「あれからの、お世話をする者が必要ってことで、力強い味方に来てもらうことにしたんじゃ」
「ちゅおい?」
と、首を傾げたら、少し離れた床に魔法陣が浮かんできて、その魔法陣から女性が1人出てきた。
深緑色の髪に緑色の瞳。純白のワンピースに身を包み、背中には木の葉で出来た翼がある。
胸は……控えめだ。
その女性は、俺を見て優しく微笑んできた。
「私は森の精霊女王、トレンティー。助けを求められて来たのよ。あなたのお名前は?」
「……?」
あれ? 名前? この今の俺の女の子の名前か?
そういえば……知らんな。
「おれの……にゃまえ?」
「――!?」
おおう。トレンティーさんの笑顔が凍りついて、こめかみに血管が浮き出たぞ?
「魔王グランゾ……それに皆さん?」
「「「は、はい」」」
「こんな可愛い顔から、おれ、なんて言葉が出るってどういうことかしら!? あなた達が普段からおれおれなんて言うから、それを覚えちゃったんじゃないの! それと、どこから誘拐してきたぁぁぁ!」
「「「ぎゃぁぁぁ!」」」
ちゅえぇぇぇ! めっちゃちゅえぇぇ!
「うわぁぁぁん!」
ごめんなぁ。俺の中のもう1人の感情。今度からちゃんと、あたしって言うから、泣き止んでくれー。
そして魔王さん達、ごめんなさい。