第48話:ひきわけにちといてあげる! の、ひ!
400年続いた、人間による、他種族殲滅戦争が、今日の和平同意の調印式で終わる。
戦争といっても、400年の間、人間が魔王国の地に足を踏み入れたことはなかったらしいけど。
もちろん、パパが他国を侵略したこともない。
そもそも、魔王国って、人間から人間以外の種族を保護する目的で、世界樹を中心にして作った国だからね。
で、他種族殲滅思想のもと、勇者が転移で直接パパを攻撃してきたんだけど、聖女の加護の効果で全ての攻撃は無効化されて、その思想までもが掻き消された。
その聖女の加護の効果は勇者だけじゃなくて、世界全体に及び、人間から他種族殲滅思想が一斉に消えちゃったから皆大騒ぎ。
しかも、勇者が聖女のソラちゃんから嫌われちゃったことで世界の国々は大混乱。
聖女って、人間に平和をもたらす絶対的な存在らしいよ?
そんな聖女が、魔王の娘になってるなんて、みんなビックリだ。慌てて和平を結ぶことが決定したらしい。
ここまでは分かったかな、ソラちゃん?
――むじゅかちくて、わかんない。
うん。知ってた。
さて、そんな大事な調印式当日。
わたしたちの部屋は大騒ぎだ。
「ジェノ! 一度も着てないドレスがブカブカじゃないの! サイズが全然あってないわよ!」
「だって、仕方ないじゃないですか! 成長がこんなに早く止まっちゃうなんて思わなかったですもの!」
うん。予定では今頃100センチに届いてるはずだったんだが、99センチでとまっちゃったんだよな~。
「トレンティー様だって、新調するって言っておいて、どうして昨日までデザインに悩んでたんですか!」
「だって、ソラちゃんをこの世で1番可愛く見せたいじゃない!」
「ソラ様は裸でも1番可愛いです!」
――はだかで、いってもいいの?
やめなさい。
「あたち、これでいいよ?」
と、寝起きのままの白いネグリジェのスカートを掴みながら言う。
今日はおねしょしなかったから汚れてないし、そのまま行けるね……って、違う!
「これだったら、パパのうえで、ねれるちね!」
パパはベッド扱いだった?!
いや、それどころじゃなくて、相手の国王の前で寝ちゃダメ!
「トレンティー様」
「ジェノ」
「「私たちが落ち着かないと、とんでもないことになる」」
やっと分かったか。あんたらが落ち着かないと、ソラちゃんが暴走しちゃうぞ?
結果として、今着れる中で1番いいドレスを着ていくことになった。
ピンク色で飾りが多く、胸元のリボンが可愛いドレスだ。
調印式の手順として、まずは軽い会談が儲けられた。
会談の中で細かい条件なのが話し合われて、トレンティーさんと王国側の書記がそれを記録して、双方共に内容が一致していることを確認して、その後の調印式でその書面にサインがされれば和平が成される。
会談の席では、わたしはパパの膝上に座っている。
相手に緊張せず話し合おうという意図がある。
「ソラリスが俺の上に座ってくれているから、落ち着くわい! 昨日は緊張して寝れんかったんじゃよ」
「あたち、やくにたった!」
もう、何も言わないよ……。
と、そんなことを言っていると、正面の扉が開かれて、立派な正装を着た国王と、その横に、わたしとソラちゃんよりも少し大きいくらいの少女が、これまた立派な純白のドレス姿で現れた。
白いドレスのスカートの部分には、金色の糸で刺繍がされていて、胸元にも国の紋章みたいなものが刺繍させている。
その姿は、正に姫。
――ソラしゃん! あたち、ねまきでこなくて、よかったね!
ふぁ! あれって、本気だったのか!?