第47話:あたち、おうじょ? の、ひ!
謁見の間。
初めてパパと会った、赤い絨毯が敷かれている大部屋だ。
その部屋の奥、階段状になっている上に玉座に座るパパ。
さらにそのパパの膝の上に座るわたし。
幼女を抱いた魔王。……魔王の威厳が保られているのか、疑問である。
まあ、「パパのところにいるの!」と、駄々をこねた結果であるけど。
で、玉座の横には、骸骨騎士ホーネさん、竜人リュードさん、狼人ウルガさん。
そして、体を縦に伸ばしたスラじいさんが立っている。
対して、階段状の下、床に膝を着いて頭を垂れている使者さんと、護衛の騎士。
その使者さんから書状を受け取り、内容を読んでいるパパが、一息吐く。
「この内容じゃが……」
「じ、きたないね!」
ちょぉぉぉっと、黙ってようかソラちゃん!
「せ、聖女様の可愛く美しいお顔に比べたら、全てのものが汚くなりましょう」
「えへへ」
おっと、ソラちゃんいきなり機嫌がよくなったぞ。
「分かっておるではないか! この書面通り、5カ国連合の敗戦を認め、和平に合意しよう!」
親バカ~! 娘を褒められたからって、簡単に合意しちゃっていいのかよ~!
「かかか! 使者殿は嘘をつけぬようだな!」
「「「使者殿はいいやつだ!」」」
「ははは……」
うん。このテンションについていけてないよね。頑張って慣れてね。
「では、一月後、この場にて調印式を行うため、5カ国連合を代表して、我が国王がはせ参じますゆえ」
「うむ。俺が人族の国に行くと、そのほうらの国民が混乱するでな」
うん。パパの巨体に、ホーネさん達四天王が行ったら、みんなパニックになるだろうね。
一ヵ月後の調印式には、わたしも魔王国の王女として出席することになった。
あ、わたしっていうよりも、ソラちゃんか。
ソラちゃんで大丈夫なの?
そんなわたしの思いは、パパたちも感じていたようで。
「ジェノ! ソラちゃんの礼儀作法は?」
「そんなのやったこっとないですよ! そもそも、人間の様式なんて知らないですもの!」
「うわぁぁぁん!」
ソラちゃんが泣いちゃったじゃないか! あんたら、ちょっと落ち着け!
「ドレスも新調しないといけないわね!」
「なあ、トレンティーよ」
「男は黙っときなさい! 女性の礼儀作法に口を出すな!」
「パパ~!」
「おお! よしよし。女どもは怖いの~」
ソラちゃんを抱き締め、部屋の隅で震える魔王……。
なんだこれ? どうしてこんな修羅場になってるの?
ソラちゃん。ちょっと代わって。
――あい……。
「にんげんに、あわしぇなくても、いいでちょ!」
「「「……」」」
今更ね、間に合うわけないんだよ。
「そうよ! 私達は相手からしたら戦勝国だものね!」
国同士では戦ってないけどね。いつの間にか勝ってた。
「合わせるべきは向こう側ってことですね!」
「まあ、最悪、ソラリスはずっと俺が抱いててもいいしな。最低限、自己紹介だけでいいか」
「そうね! ソラちゃん、自己紹介してみようか?」
――じこしょうかい?
ああ、それはね、相手に自分のことを知ってもらうことだよ。
――やってみる!
「そらりす、5しゃいでしゅ! しゅきなのは、パパで、きらいなのは、ゆうちゃ!」
右手を開いて、5本指で年齢をアピールして……王女じゃなくて、おもいっきり幼児の自己紹介だな。
「「「完璧!」」」
「えへへ」
ええんか?! それで本当にええんか?!